大家重夫の世情考察

レコード送信可能化ソフトバンクBB事件

各レコードについて送信可能化権をもつレコード会社が、氏名不詳者により、被告が提供するインターネット接続サービスを経由して、自動的に送信しうる状態におかれたため、氏名不詳者に対し、送信可能化権侵害で訴えるべく、被告に対しプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求め、認容された事例である。

東京地裁平成26年7月31日判決(平成26年(ワ)第3577号)

原告は、(株)ジェイ・ストーム、(株)ランテイス、ユニバーサルミュージック合同会社、(株)エピックレコードジャパン、(株)ポニーキャニオンの5社である。
被告(ソフトバンクBB(株))は、一般利用者に対するインターネット接続プロバイダ事業等を行う株式会社で、プロバイダ責任制限法2条3号の「特定電気通信役務提供者」に当たる。

訴外(株)クロスワープは、インターネット上の著作権侵害を継続的に監視する会社であるが、原告5社へ、Gnutellaネットワークに接続されたパソコンに保存されて、ダウンロード可能な状態に置かれた音楽ファイルを検出し、各音楽ファイルをダウンロードしたとして、その旨を各音楽ファイルごとに対応する原告らに報告した。

原告等は、「P2P FINDER」というシステムがGnutella ネットワーク上を監視して検出したIPアドレスは実験者が送信したファイル送信元のIPアドレスと完全に一致しており、このシステムによる各音楽ファイル及び各IPアドレスの検出は正確であり、氏名不詳の本件契約者は、原告等の送信可能化権を侵害している、と主張した。
被告は、ユーザーのIPアドレス、タイムスタンプ等の正確性を判断できない。本件発信者情報が本件各音楽ファイルの送信可能化権侵害者の情報であるか否か確認できない、と主張した。

東京地裁民事46部長谷川浩二裁判長は、

  1. 本件システムは、当該ファイルを記録している端末のIPアドレスを正確に検出、当該ファイルをダウンロードするものと認められる。本件各契約者は、明らかに各原告の各レコードの送信可能化権を侵害している。
  2. 被告に対し、本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。
2014-10参照。

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中国政官データ[2016年5月版]

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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