大家重夫の世情考察

マンション建設業者対電子掲示板事件

マンション建設業者が、電子掲示板の書込みにより名誉等の権利を侵害されたとして、ネット運営会社に不法行為に基づく損害賠償請求、書込の削除請求、発信者の情報開示請求をし、いずれも棄却された事例である。

名古屋地裁平成17年1月21日判決(平成16年(ワ)第3336号、判時1893号75頁)

 原告Xは、木材防腐処理業等を目的とする甲野木材防腐株式会社である。
被告Yは、インターネットの運営等を目的とする株式会社である。

Xは、東京都豊島区にマンションを建設することを計画しているが、附近住民により、反対運動がなされていた。このような状況下で、Yの運営する電子掲示板に、「(1)投稿日、2004/6/15/7:32、(2)投稿者kounomokuzai-shaco-otsuyama、(3)題名 なめとんか? (4)今更、ワンルームマンション、誤った新規事業、最低。」と書き込まれていた。

Xは、

  1. 不法行為に基づく損害賠償請求
  2. 条理上の削除請求権に基づく書き込みの削除
  3. プロバイダ責任制限法4条に基づく発信者情報の開示

を求めた。

[名古屋地裁]
民事8部の黒岩巳敏裁判長は、

  1. 原告の請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。

と判決した。

 この電子掲示板の投稿者は、kounoで、原告の名を冒用しているが、内容から通常の一般人は、この書き込みの主体がXの代表者であると誤認することはない。本件書き込みがXの名誉、信用、プライバシー権及び人格権を侵害したと評価できない。したがって、本件書き込みがXの権利を侵害するのとは認められず、その余の点を判断するまでもなく、理由がないとした。

この事件は、珍しく、発信者情報を求めた原告が敗訴しているが、裁判所は、インターネットによる原告への攻撃は、軽微であると判断したのであろうか。

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中国政官データ[2016年5月版]

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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