原告X((株)ショーケース・テイービー)は、その業務に関連して、ウエブサイトの入力フォームのアシスト機能に係るサービスである「ナビキャスト」の内容を説明する資料を作成し、ネット上、あるいは紙媒体で、Xの著作の名義で公表した。
ところが、同様の事業を行っている被告Y((株)コミクス)が、COMIX Inc.の著作名義で「EFO CUBEによる入力フォーム改善・最適化~入力フォームでの離脱を改善します」という資料をネット上で、あるいは紙媒体の印刷物で公表した。
Xは、Yに対し、
- 上記「EFO CUBEによる入力フォーム改善・最適化~入力フォームでの離脱を改善」の営業資料を記録した電磁的記録媒体の記録抹消、又は同資料印刷パンフレット、レジメ等の印刷物の廃棄を求め、
- 被告Yは、原告Xへ、1680万円及び訴状到達日翌日から支払済みまでの年5分の金員の支払を求める、
として訴訟になった。
原告は、原告各資料は、全体として、著作者の個性が発揮され、思想を創作的に表現し、文芸及び学術の範囲に属する言語及び美術の著作物に当たると主張した。
被告は、原告資料は、特徴的言い回しがなく、表現が平凡で、ありふれている、創作的表現はない、と反論した。
[東京地裁判決]
民事47部の高野輝久裁判長は、次のように述べて、原告の請求を一部認容した。
- 差止め及び廃棄等の請求について。
被告Yは、平成21年8月頃から、「EFO CUBE」のサービスを開始し、上記営業資料を作成し、顧客に頒布、上映していたが、平成24年1月15日、本件訴状の送達を受けて、被告資料の使用を中止し、記録した電磁的記録媒体や被告資料印刷の印刷物を保有している証拠はないので、「原告の差止め及び廃棄等の請求」は理由がないとした。
- 損害賠償の請求について。
- 原告各資料が著作物に当たるか否か
「『ナビキャスト』の内容を効率的に顧客に伝えて購買意欲を喚起することを目的として『ナビキャスト』の具体的な画面やその機能を説明するために相関図等の図や文章の内容を要領よく選択し、これを顧客に分かりやすいように配置したもので」「全体として筆者の個性が発揮され」「創作的な表現を含むから、著作物に当たる」とした。
また、原告Xが、平成20年、訴外A(インターネット広告代理店事業(株)フルスピード)に、ナビキャストフォームアシストの供給の委託等をしたこと、被告Yは、Aから、「〈入力フォーム最適化ツール〉フルスピードEFO」資料の送付を受け、被告Y従業員がこれを修正し、被告資料が完成したことを認め、原告資料に「依拠」したと認定、被告Yは、原告Xの著作権(複製権及び翻案権)侵害したとし、顧客に対し被告資料の頒布上映は、原告の著作権(上映権又は著作権法28条に基づく上映権及び譲渡権又は著作権法28条に基づく譲渡権)侵害するとした。
- 被告の代表者は、原告ナビキャスト担当者の訪問を受けて原告資料を入手している。原告資料と被告資料の記載が同一のものがあると知ることができたのに、しなかった被告には過失がある。
- 被告資料が「EFO CUBE」の営業で補助的役割であること、著作権侵害部分は、被告資料の38.8%相当にすぎないこと等の理由で、原告損害額は10万円とした。