著名な営業表示と類似の部分を含むドメイン名の使用を不正競争防止法2条1項2号に基づいて差し止めた事例である。
原告は、株式会社ジャックスといい、割賦購入斡旋等を主たる事業とする会社で、英文では「JACCS CO.LTD.」と表記している。肉太のアルファベットであるJACCSを、指定役務「36 債務の保証、金銭債権の取得及び譲渡…」、で、スリムな書体のアルファベットで、指定役務「35 広告用具の貸与…」、「38、電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与…」「42、電子計算機のプログラム設計・作成または保守。電子計算機の貸与」についてそれぞれ、商標登録を受けている。1部上場の会社である。
被告は、有限会社日本海パクトで、簡易組み立てトレイの販売及びリース等を事業とする有限会社である。
平成10年5月26日、被告は、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)から、「http://www.jaccs.co.jp」というドメイン名の割り当てを受け登録した。同年、9月から、ホームページを開設し、「ようこそJACCSのホームページ」というタイトルで、「取扱商品」等を表示し、そのリンク先に被告の扱う簡易組立トイレや携帯電話などの商品の販売広告をし、のち、ホームページのJACCSの下に、「ジェイエイシーシーエス」と振り仮名を附けた。
原告は、不正競争防止法2条1項1号及び2号を根拠に、被告に対し、
を求めて、訴訟を提起した。
[富山地裁]
民事部徳永幸蔵裁判長は、不正競争防止法2条1項2号に当たるとして、原告の請求を全て認容した。
[名古屋高裁金沢支部]
控訴を棄却した。「本件ドメイン名」を「jaccs.co.jp」を略称するものとした。控訴審で、原告は付帯控訴により「http://www.」を除いた「jaccs.co.jp」の差止めを求めるよう請求の趣旨を変更、高裁は認めた。
[参考文献]
満田重昭・判例時報1764号184頁(判例評論515号30頁)
土肥一史・法律のひろば2001年5月号。土肥一史・発明2001年10月号。
岡村久道・NBL706号14頁、同707号54頁。桐原和典・CIPICジャーナル109号(2001年2月号)。小野昌延・芹田幸子「ジャックス事件」(岡村久道編「サイバー法判例解説」(商事法務・2003年・14頁)