音楽家を雇い、音楽の生演奏をさせていたクラブ・キャッツアイというバーが、それをやめ、カラオケ装置を置いて、客がカラオケで、歌うようになった。
作詞家作曲家からその著作権を信託的譲渡されている日本音楽著作権協会は、演奏権に基いて、著作権使用料を請求、経営者であるバーを訴えた。
バーにおいて、カラオケで歌唱しているのは、客か客と従業員であって、経営者は、音痴で歌わないし、店にいないといい、責任主体は、バーの経営者でないと主張した。
最高裁は、
を理由に客による歌唱も、著作権法上の規律の観点から、バーの経営者による歌唱と同視しうるとした。
[参考文献]
井上由里子「著作権判例百選(第二版)」16頁(1994)。
大淵哲也「著作権判例百選(第4版)」190頁(2009)。
市村直也「田中豊編『判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講』(日本評論社)166頁」(2010)
上野達弘「著作権法における『間接侵害』」ジュリスト1326号75頁(2007)。
上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」「知的財産法と競争法の現代的展開ー紋谷暢男先生古稀記念」(発明協会)781頁(2006)
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応」(紋谷暢男編「JASRAC概論」(日本評論社)151頁)(2009)
著作権侵害について、侵害者と思われる者が直接、侵害していないとしても、その行為のなされる状況において、
侵害とされる。この判例法理は「カラオケ法理」と呼ばれる。
最高裁平成23年1月27日判決(ロクラクII事件)、知財高裁平成22年4月28日判決(TVブレイク事件)、東京地裁平成19年5月25日判決(MYUTA事件)、東京地裁17年10月7日決定(録画ネット事件)など、このカラオケ法理に拠ると思われる判決は多い。