大家重夫の世情考察

クラブ・キャッツアイ事件

(最高裁1988年3月15日判決民集42巻3号199頁判時1270号34頁)

 音楽家を雇い、音楽の生演奏をさせていたクラブ・キャッツアイというバーが、それをやめ、カラオケ装置を置いて、客がカラオケで、歌うようになった。
 作詞家作曲家からその著作権を信託的譲渡されている日本音楽著作権協会は、演奏権に基いて、著作権使用料を請求、経営者であるバーを訴えた。
 バーにおいて、カラオケで歌唱しているのは、客か客と従業員であって、経営者は、音痴で歌わないし、店にいないといい、責任主体は、バーの経営者でないと主張した。

 最高裁は、

  1. 客が歌っていたとしても、バーの管理下にあること、
  2. バーは、カラオケスナックとしての雰囲気を醸成し、客の来集を謀り、営業上の利益の増大を意図していること、

を理由に客による歌唱も、著作権法上の規律の観点から、バーの経営者による歌唱と同視しうるとした。

 著作権侵害について、侵害者と思われる者が直接、侵害していないとしても、その行為のなされる状況において、

  1. その仕組みが侵害者の管理下にあること、
  2. 侵害者が利得している場合、

侵害とされる。この判例法理は「カラオケ法理」と呼ばれる。
最高裁平成23年1月27日判決(ロクラクII事件)、知財高裁平成22年4月28日判決(TVブレイク事件)、東京地裁平成19年5月25日判決(MYUTA事件)、東京地裁17年10月7日決定(録画ネット事件)など、このカラオケ法理に拠ると思われる判決は多い。

[参考文献]
井上由里子「著作権判例百選(第二版)」16頁(1994)。
大淵哲也「著作権判例百選(第4版)」190頁(2009)。
市村直也「田中豊編『判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講』(日本評論社)166頁」(2010)
上野達弘「著作権法における『間接侵害』」ジュリスト1326号75頁(2007)。
上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」「知的財産法と競争法の現代的展開ー紋谷暢男先生古稀記念」(発明協会)781頁(2006)
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応」(紋谷暢男編「JASRAC概論」(日本評論社)151頁)(2009)


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中国政官データ[2016年5月版]

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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