大家重夫の世情考察

イカタコウイルス事件(刑事)

コンピュータウイルスを受信、実行させるなどの行為がパソコンのハードデスクの効用を害したとされ、器物損壊罪に当たるとされた事例である。

東京地裁平成23年7月20日判決(平成22年刑(わ)第2150号
平成22刑(わ)第2651号、判タ1393号366頁)

 本件は、いわゆるイカタコウイルス(又はタコイカウイルス)と呼ばれるコンピュータウイルスをインターネット上に公開して被害者に受信、実行させた行為が器物損壊罪に問われたものである。

器物損壊罪の「損壊」が物の物理的破壊に限らず、効用喪失を含むとしている(飲食用のすき焼き鍋や徳利に放尿する行為を器物損壊罪にした大審院明治42年4月16日刑録15巻452頁)。本判決は、

  1. 効用侵害の有無につき、ハードデスクは、読み出し機能と書き込み機能の2つが本来的効用で、ウイルスの感染により2つの機能が失われたこと、
  2. いずれの効用も一般人には容易に現状回復できない

として、器物損壊罪の成立を認め、岡部豪裁判長は、被告人を懲役2年6月に処した。「刑法第261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

コンピュータ・ウイルスを、「感染」させる行為が、器物損壊罪に当たる、という判例である。

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中国政官データ[2016年5月版]

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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