わいせつ画像蔵置事件(刑事)

2016年1月12日

インターネット接続専門会社の会員が、サーバーコンピュータ内にわいせつ画像のデータを記憶、蔵置させて、インターネットの不特定多数の利用者に右わいせつ画像が再生閲覧可能な状態を設定したことが、わいせつ図画の公然陳列に当たるとされた事例。

東京地裁平成8年4月22日判決(平成8年(刑わ)302号、判時1597号51頁)

 被告人は、インターネット接続専門会社である(株)甲野・インターネットの会員である。インターネットの不特定多数の利用者にわいせつ画像を送信し、再生閲覧させてわいせつ画像を公然陳列しようと企て、平成8年1月28日頃から同月31日頃までの間、東京都墨田区の(株)甲野・インターネット所有・管理するサーバーコンピュータのサン・マイクロ・システム製デイスクアレイ内に男女の性器・性交場面等を露骨に撮影したわいせつ画像のデータ合計67画像分を記憶・蔵置させて、一般の電話回線を使用し、インターネット対応パソコンを有する不特定多数の利用者に右わいせつ画像が再生閲覧可能な状況を設定し、もって、わいせつ図画を公然と陳列したものである。
 東京地裁刑事2部の小川正持裁判官は、刑法175条前段を適用し、「被告人を懲役1年6月に処」し、「裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予」との判決を下した。

執行猶予がついて、刑の執行が猶予された。

  1. これは、無制約な情報発信を事実上放置している商用プロバイダの存在によって可能になった面があること、
  2. インターネットにおいて、他にもわいせつ画像データ発信が野放し状態で、被告人は誘発された面があること、
  3. 営利目的で犯行に及んでいないこと、
  4. 被告人は深く反省し、自宅所有のパソコンを処分、パソコン通信ネットの会員を退会した

等を判決文は述べている。