「mp3.co.jp]事件

2015年12月24日

MP3(音声圧縮技術の国際規格)形式で配信サービスを行うアメリカ合衆国法人に対して、「mp3.co.jp」ドメインをもつ原告が不正競争防止法3条1項に基づく使用差止請求権を有しない、「不正競争行為」に当たらないとの判決を得た事例である。

東京地裁平成14年7月15日判決(平成13年(ワ)第12318号、判時1796号145頁)

MP3は、MPEG(動画や音声を圧縮・伸張する規格)によって策定された音声圧縮規格の1つである。

原告X(有限会社システム・ケイジェイ)は、パソコン周辺機器の開発、輸入、販売等を目的とする会社で、平成11年7月、(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)へ、ドメイン名「mp3.co.jp」を登録した。
被告Y(エムピー3・ドット・コム・インコーポレイテッド)は、アメリカ合衆国において設立され、「mp3.com」の営業表示及び標章を用い、MP3形式によって圧縮処理した音声データをインターネットを通じて、配信するサービスを行う会社で、世界的に著名である。Yは、平成13年3月5日、日本知的財産仲裁センターに対し、Xを相手方に、原告ドメイン名を被告へ移転登録するよう紛争処理の申立をした。仲裁センター紛争処理パネルは、平成13年5月29日、原告ドメイン名を被告へ移転すべき旨の裁定をした。
原告Xは,Yを相手方として、「ドメイン名『MP3。CO.JP』について、不正競争防止法3条1項に基づく使用差止請求権を有しないことを確認する。」旨の訴訟を提起した。裁判では、Xの行為は、不正競争防止法2条1項12号(「不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品表示」「と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為」)に当たるか、であった。Yは、Xがドメイン名を全く利用していないこと、Yの顧客吸引力等を利用する意図があること、Xのサイトが不正確な情報を掲示し、Yの名誉を毀損していると主張した。

東京地裁民事29部飯村敏明裁判長は、Xに「不正の利益を得る目的」も「他人に損害を加える目的」もなかったとし、不正競争防止法2条1項12号所定の不正競争行為にあたらないとして、原告の請求どうり、被告は、原告に対し、ドメイン名『MP3。CO.JP』について、不正競争防止法3条1項に基づく使用差止請求権を有しないことを確認する。」とした。

ドメイン名が原則として、先着順であること、登録に際し、実質的な内容にはいった審査はないため、そのドメイン名を取得した者よりも、そのドメイン名がもっと相応しい企業等は多いと思われる。平成13年の改正不正競争防止法が対応し、これを適用した判例である。2001-1,2001-5参照。

[参考文献]松尾和子・佐藤恵太「ドメインネーム紛争」弘文堂・2001年。