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医療, 特集記事

ネットワークで医療が変わる?

一昔前までは、町の診療所には紙ファイルなどで束ねられた患者ひとりひとりのカルテが受付や診察室の壁にぎっしり詰め込まれていませんでしたか?評判のいい病院、大きな病院ほど大量のファイルを抱えていました。診察券には番号などがふられていて、診察を申し込むとスタッフの方が番号と照合したカルテを医師に渡し、医師はそのファイルで参考に検査結果や経過、過去の病歴を一括管理していました。

それが、ここ数年で中小規模の診療所も含めて、多くの病院で続々と電子カルテなどのシステムが導入されてきました。以前は、ファイルにペンで書き込みながら医師が診察していましたが、最近はパソコンのモニターに目を凝らし、キーボードを叩きながら診察をしている。そんな風景が増えてきました。これには、賛否両論あり、患者と対話しながら目はモニターに向き、手はキーボードやマウスなんて、患者と対峙していななどとの批判も、一時は多く聞かれました。

しかし、この流れを一気に加速させる出来事がありました。

東日本大震災です。

被災した病院のカルテは消失。病歴や処方薬などのデータを管理していた病院の資料はなくなってしまいました。

そして、更なる課題も生まれました。電子カルテを導入していても、管理・保存しているのが院内だけの場合は、その病院が被災し、ディスクの復旧がかなわない場合は、紙ファイルと同じように、カルテを消失した状況と同じになってしまいます。

そこで、最近新聞などで取り上げられている「医療クラウド」が注目を浴びるようになってきました。

地域医療連携とあわせて、地域単位でクラウド上で患者情報を管理し、必要に応じて情報を共有できるという仕組みです。診療所で小さな検査を受けた後、紹介状を持って地域の大きな総合病院などに行く場合、当該の患者の検査結果や病歴、アレルギーに関する情報などが、ネットワークで両病院が共有できるのです。紹介状も、デジタル化されるようにもなってきました。 今後、更に期待されるのは、患者情報が病院だけが持つものではなく、患者もための情報になること。今、病院にあるカルテは、自分のデータであって自分のものではありません。今後は、パソコンや携帯、スマートフォンなどを使って、自分のカルテにアクセスして閲覧したり、自宅で日々測定する血圧や体温、運動量や食事内容を患者側が記録し、医師と共有して診察の参考にしてゆくことが目指されています。

個人情報の取扱いが最大の課題と言われていますが、ネットワークが結ぶ「患者のための医療」が、常日頃はもちろん災害時にも安定して受けることができることが期待されます。

 

(F.M.)

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