ニコニコ動画事件

2015年10月28日

ニコニコプレミアム会員Xが、自分が大阪市内のマクドナルド店に入店する様子や警察官と対応する様子を撮影し、動画にし、動画共有サイト「ニコニコ動画」にアップロードし、サイトへアクセスする者が視聴できるにしたところ、「ロケットニュース24」というウエブサイトが掲載し、記事を書込み、会員を誹謗中傷する書込みをし、この動画を視聴できるようにし、この記事の末尾に「参照元 ニコニコ動画」とした。Xは、ウエブサイト運営者を訴えたが、Xが敗訴した事件である。

大阪地裁平成25年6月20日判決(平成23年(ワ)第15245号、判時2218号112頁)

原告Xは、平成23年6月当時、株式会社ニワンゴが提供するインターネット上の動画共有などのサービスのニコニコプレミアム会員として、「ニコニコ生放送」による動画のライブストリーミング配信等を行っていた。
 被告Yは、情報提供サービスなどを目的とし、「ロケットニュース24」というウエブサイトを運営している株式会社ソシオコーポレ-ションである。

原告Xは、Xが著作者である動画を、被告Yが被告運営の「ロケットニュース24」に無断で掲載し、これに原告を誹謗中傷する記事を掲載し、コメント欄に読者をして原告を誹謗中傷するコメント欄の書込をさせ、これを削除しなかったことがXの名誉を毀損するとともに、Xの著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権、氏名表示権)を侵害するものであるとして、被告に対し、名誉権に基づき、本件ウエブサイトに掲載された本件記事及び本件コメント欄記載の削除を求めると共に、著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく名誉回復措置として別紙1記載の謝罪文を、名誉毀損の不法行為に基づく名誉回復措置として別紙2記載の謝罪文を本件ウエブサイトに掲載するよう求めた。
 併せて、主位的に著作権及び著作者人格権の不法行為に基づく損害賠償の一部として30万円と遅延損害金並びに名誉毀損の不法行為に基づく損害賠償の一部として30万円及び遅延損害金を請求し、予備的に被告の上記行為は、原告の肖像権を侵害するとし、被告に対し、肖像権侵害の不法行為に基づく損害賠償の一部として10万円及び遅延損害金荒美に名誉毀損の不法行為に基づく損害賠償の1部として50万円及び遅延損害金を請求した。

大阪地裁第21民事部谷有恒裁判長は、次のように判断し、原告の請求を棄却した。

  1. 本件動画は映画の著作物で、著作者は原告である。
  2. 被告は、本件動画へのリンクを貼ったにとどまり、被告Yが本件動画を自動公衆送信による不法行為をしたり、送信可能化による不法行為も認められない。公衆送信権侵害の幇助による不法行為は成立しない。
  3. 著作者人格権(公表権、氏名表示権)侵害について。
    原告Xは、被告Yによる本件動画のリンクに先立ち、生放送をライブストリーミング配信しており、公表権侵害は成立しない。本件記事自体に原告Xの実名、変名の表示はなく、氏名表示権侵害の前提を欠き、ウエブサイト上の表示が原告の氏名表示権侵害になると認められない。
  4. 本件動画及び本件記事の名誉毀損該当性、違法性阻却事由の有無について。
    本件記事及び本件動画の本件ウエブサイトへの掲載が原告の名誉を毀損するとの主張は、違法性阻却事由があり、また、記事中の「非常識な行動」は、人身攻撃に及んでなく意見や論評の域を逸脱してない。被告が、本件ウエブサイトに本件記事を掲載し、併せて本件動画へのリンクを貼ったことに違法性はない。
  5. 本件コメント欄記載の削除義務の有無について。
    被告は、平成23年6月27日に原告から抗議を受け直ちに本件動画へのリンクを削除し、原告の社会的評価が低下することの防止するための対応を適時とっている。被告は、本件コメント欄記載を削除すべき義務を負う状況になく、削除義務を負うものでない。
  6. 肖像権侵害の有無について。
    被告が本件ウエブサイト上で、本件動画へリンクを貼ったことが原告Xの肖像権を違法に侵害したとはいえない、第三者による肖像権侵害につき、故意又は過失があったともいえず、不法行為が成立するとは認められない。
大阪地裁判決を支持する。