大家重夫の世情考察

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迷惑メール仮処分事件

携帯電話利用者あてに「迷惑メール」を無差別に送信する業者に対し、その送信行為の差止めが認められた事例である。

横浜地裁平成13年10月29日決定(平成13年(ヨ)第560号)

仮処分命令の申立事件であるため、原告、被告でなく、債権者、債務者である。
債権者Xは、第1種電気通信事業者である株式会社エヌ・テイ・テイ・ドコモ。
債務者Yは、情報処理及び情報提供の各サービス業、移動体通信機器の販売等を目的として平成10年9月11日設立の有限会社グローバルネットワークであるが、平成13年9月4日、社員総会の決議で解散、清算人菊池越を代表者とする清算法人である。

Xは、iモードの名前のパケット通信サービスを提供する義務を負っている。
Yは、Xのパケット通信サービス契約者を不特定多数の男女の交際の仲介をする「出会い系サイト」というインターネットサイトの紹介を内容とする電子メール(本件メール)に勧誘するとともに、同契約者をして、有料インターネットにアクセスさせることにより収益を図ることを計画した。
Yは、本件電子メールを発信する際に、宛先となる電子メールアドレス(090に8桁の数字を付したものに続けて@dokomo.ne.jp)の8桁の数字部分にランダムな数字を当てはめる等の方法で、遅くとも平成13年5月、不特定多数の同サービス契約者宛ての電子メールアドレス及び同サービス契約者の存在しない多数の架空の電子メールアドレス宛てに、本件電子メールを大量かつ継続的に送信した。
このYの大量かつ継続的な本件電子メールの送信行為等に起因し、Xの電気通信設備等に機能障害が生じた。
そこで、Xは、Yに対して、送信行為の中止とその旨の誓約書の提出を求めたが、Yは、依然として本件電子メールを大量かつ継続的に送信し続けた。
Xは、Xの電気通信設備に対する所有権侵害を理由に、Yの送信行為の差止を求める仮処分の申立を行った。

[横浜地裁]
民事9部は、X請求を認容し、次の決定をした。

[主文]

  1. 債務者は、この決定送達の日から1年間、宛先となる電子メールアドレス(「090」に8桁の数字を付したものに続けて「@dokomo.ne.jp」を付したもの)の8桁の数字部分にランダムな数字を当てはめる等の方法により、債権者の所有する電気通信設備を利用して行われるパケット通信サービスを通じて、同サービスの契約者の存在しない多数の電子メールアドレス(「090」に8桁の数字を付したものに続けて「@dokomo.ne.jp」を付したもの)宛てに、営利目的の電子メールを送信する等して、債権者の所有する電気通信設備の機能の低下もしくは停止っをもたらすような行為をしてはならない。
  2. (省略)
この決定は、当然である。

「しずちゃん」経由プロバイダ事件

経由プロバイダが、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下、法)2条3項にいう「特定電気通信役務提供者」に該当するとした判例である。

最高裁平成22年4月8日判決(平成21年(受)第1049号民集64巻3号676頁)
東京地裁平成20年9月19日判決、東京高裁平成21年3月12日判決

被告Yは、株式会社NTTドコモである。
原告X1は、土木工事事業等を目的とする株式会社である。原告X2は、X1の代表取締役である。原告X3は、X2の妻である。原告X4は、X1の従業員である。

ウエブサイト「しずちゃん」内の電子掲示板に、原告X1ではいじめがはげしい、X2は、不貞行為をしている、X3は、従業員と不貞行為をしている、X4は暴力団と関係があるなど、という事実無根の記事を、複数の氏名等不詳の者(本件発信者)から書かれた。
Xらは、名誉毀損、プライバシー権等の人格権侵害をされているとして、原告等は、静岡地方裁判所浜松支部に対し、「しずちゃん」管理者から委託を受けたホステイング業者を相手に仮処分命令を申立てて、投稿した者のIPアドレス及びタイムスタンプ等の情報を得、これにより、本件発信者らは、被告Yの管理するサービスのユーザーで、Y経営の携帯電話からの発信と判明、X等は、東京地裁へ、Yを相手に発信者情報の消去の禁止を求める仮処分命令申立をしたが、自動消去されていたので、同地裁から却下決定がなされた。
原告等は、コンテンツプロバイダ「しずちゃん」管理者に発信者の携帯端末機の機種、シリアルナンバー及びFOMAカード個体識別子がアクセスログとして記録されているので、被告Yに、発信者等の情報を特定することが可能であるとして、経由プロバイダである、被告Yへ、発信者情報の開示を求めて訴えた。
被告Yは、被告は経由プロバイダであるから、法4条1項、法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当しないと主張した。

1審の東京地裁民事第37部は、

  1. 被告は、「特定電気通信役務提供者」(法4条1項、2条3号)に該当しない
  2. 原告主張のFOMAカード個体識別子による情報は、法4条1項所定の「権利の侵害に係る発信者情報」ではなく、被告は発信者情報を保有していない、原告らの本件請求はいずれも理由がない

とし、原告らの各請求をいずれも棄却した。

2審の東京高裁第24民事部は、解釈を変えた。

[判決主文]

  1. 原判決を次の通り変更する
  2. 被控訴人は、控訴人X1に対し、原判決別紙アクセスログ目録(1)の表の2,3及び5の「投稿日」及び「時間」欄記載の日時における、これに対応する同表の「icc」欄記載のFOMAカード個体識別子によって特定されるFOMAカードに係るFOMAサービス契約の相手方の住所及び氏名又は名称をそれぞれ開示せよ。」とし、被控訴人は、控訴人X2、X3,X4に対しても、同様の開示をせよ

と命じ、控訴人らのその余の請求は棄却した。

最高裁(金築誠志裁判長、宮川光治、櫻井龍子、横田尤孝、白木勇)は、上告を棄却した。

[判決要旨]
「最終的に不特定多数の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイタは、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律2条3項にいう「特定電気通信役務提供者」に該当する。

東京地裁平成15年9月17日判決(平成15年(ワ)第3992号判タ1152号276頁)は、経由プロバイダについて同旨の判断をしていた。

iモードID事件

インターネット上の電子掲示板で名誉を毀損された者が接続サービス会社に対し発信者情報の開示請求と損害賠償請求をおこなったが、損害賠償請求は棄却された事例である。

金沢地裁平成24年3月27日判決(平成22年(ワ)第559号、判時2152号62頁)

原告Xは、インターネット上の電子掲示板における氏名不詳の発信者によるスレッドの立ち上げ及び投稿により名誉を毀損され又はプライバシー権を侵害されたとして、プロバイダーであるY会社(エヌ・テイ・テイ・ドコモ)に対して、プロバイダ責任制限法4条1項所定の発信者情報開示請求権に基づき、本件発信者が使用した電気通信回線に係る識別番号(iモードIDほか)によって特定される電話番号の契約者の氏名又は名称及び住所の開示を求めるとともに、Y会社が本件IDに係る契約者の情報を保存しなかったために精神的苦痛を被ったとして慰謝料50万円と遅延損害金の支払いを求めて訴えた。
Xは、投稿の中で浮気・不倫をしたなど誹謗中傷されていた。

金沢地裁は、「被告は、原告に対し、別紙アクセスログ記録7記載の投稿に使用された電気通信回線に係る識別番号(iモードID:05E0…)によって特定される契約者の氏名又は名称及び住所を開示せよ。)」として、発信者情報の開示は認めた。
しかし、損害賠償請求については、Y会社が、iモードIDによって特定される契約者の氏名住所等が「発信者情報」に該当する旨の司法判断がなく、その認識がなく、認識が容易であったとまでいえない、として、Y会社に故意又は重大な過失はないとした。

Xは、浮気、不倫をしていると書かれ、傷ついたと思うが、金沢地裁は、NTTドコモに故意過失なく、慰謝料なしでいいと考えた。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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