大家重夫の世情考察

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クラブ・キャッツアイ事件

(最高裁1988年3月15日判決民集42巻3号199頁判時1270号34頁)

 音楽家を雇い、音楽の生演奏をさせていたクラブ・キャッツアイというバーが、それをやめ、カラオケ装置を置いて、客がカラオケで、歌うようになった。
 作詞家作曲家からその著作権を信託的譲渡されている日本音楽著作権協会は、演奏権に基いて、著作権使用料を請求、経営者であるバーを訴えた。
 バーにおいて、カラオケで歌唱しているのは、客か客と従業員であって、経営者は、音痴で歌わないし、店にいないといい、責任主体は、バーの経営者でないと主張した。

 最高裁は、

  1. 客が歌っていたとしても、バーの管理下にあること、
  2. バーは、カラオケスナックとしての雰囲気を醸成し、客の来集を謀り、営業上の利益の増大を意図していること、

を理由に客による歌唱も、著作権法上の規律の観点から、バーの経営者による歌唱と同視しうるとした。

 著作権侵害について、侵害者と思われる者が直接、侵害していないとしても、その行為のなされる状況において、

  1. その仕組みが侵害者の管理下にあること、
  2. 侵害者が利得している場合、

侵害とされる。この判例法理は「カラオケ法理」と呼ばれる。
最高裁平成23年1月27日判決(ロクラクII事件)、知財高裁平成22年4月28日判決(TVブレイク事件)、東京地裁平成19年5月25日判決(MYUTA事件)、東京地裁17年10月7日決定(録画ネット事件)など、このカラオケ法理に拠ると思われる判決は多い。

[参考文献]
井上由里子「著作権判例百選(第二版)」16頁(1994)。
大淵哲也「著作権判例百選(第4版)」190頁(2009)。
市村直也「田中豊編『判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講』(日本評論社)166頁」(2010)
上野達弘「著作権法における『間接侵害』」ジュリスト1326号75頁(2007)。
上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」「知的財産法と競争法の現代的展開ー紋谷暢男先生古稀記念」(発明協会)781頁(2006)
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応」(紋谷暢男編「JASRAC概論」(日本評論社)151頁)(2009)

ナップスター型音楽ファイル交換事件

インターネットを使って音楽を送受信してもかまわないか。

東京高裁平成17年3月31日判決(判例集未登載)
東京地裁平成15年1月29日中間判決(平成14年(ワ)第4237号。判時1810号29頁、判タ1113号113頁) - 東京地裁平成15年12月17日判決(終局判決、判タ1145号102頁判時1845号36頁)
仮処分、東京地裁平成14年4月11日決定(判タ1092号110頁)

 インターネット上のピア・ツー・ピア(P2P)方式の電子ファイル交換サービスにおいて、ユーザーの間で、音楽著作物を複製して電子ファイルの送受信が行われる。
 これによる著作権侵害が起きる場合において、このサービスの提供者は、どういう責任を負うか。

 被告Y1は、ピアー・ツー・ピア技術を用い、中央サーバー(セントラルポイント、P2Pネトワークの方式の1つでP2Pネットワークを見つけやすくするための入り口として働くホストのこと)を設置し、インターネットを経由して、利用者のパソコンに蔵置されている電子ファイルから他の利用者が好みの音楽のものを選択して、無料でダウンロードできる「ファイルローグ」事業を行っている業者である。
 被告Y2は、Y1の代表者。
 原告Xは、日本音楽著作権協会(JASRAC)である。
原告Xは、被告らに、原告の管理著作物を複製したMP3ファイルを本件サービスにおける送受信の対象とすることの差止めを求めるとともに、Yら2名に対して2億1000万余円の損害賠償金の連帯支払を求めて訴えた。

「東京地裁」 次の点が争われた。

  1. ハイブリッド型P2Pファイル交換サービスのセンターサーバーの提供者が、ユーザーのパソコン間で、直接行われる電子ファイルの送受信の「主体」であるか。
  2. 差止めの対象となる行為の特定方法。
  3. 著作権侵害の主体とプロバイダ責任制限法3条1項「情報の発信者」の関係。
  4. 損害賠償額の認定。

東京地裁平成15年1月29日中間判決および平成15年12月17日判決の結果は、次の通りである。

  1. 1審被告Y1が運営する本件サービスにおいて、Xに無断でXの管理著作物を複製した電子ファイルをユーザーのパソコンの共有フォルダに蔵置した状態で、本件サーバーに接続させる行為は、Xの著作権侵害であり、Y1がその著作権侵害の主体である。
  2. 「送信型パソコンから被告サーバーに送信されたファイル情報のうち、ファイル名または、フォルダ名のいずれかに本件管理著作物の『原題名』を表示する文字及び『アーテイスト』を表示する文字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字、小文字等の表記方法を問わない。姓又は名についてはいずれか一方のみの表記を含む)の双方が表記されたファイル情報に関連つけて、当該ファイル情報に係るMP3ファイルの送受信行為として特定するのが、最も実効性のある方法である。」
  3. Yらは、自らがプロバイダ責任制限法上のプロバイダに該当するので、損害賠償責任を免れると主張したが、Y1は、同法2条4号所定の「発信者」に該当し、同法3条1項による損害賠償責任の免責は適用されない。
  4. 本件サービスにおいて、本件各MP3ファイルが送信可能化ないし自動公衆送信されることによって、原告の受けた使用料相当額の損害額については、特段の事情のないかぎり、本件使用料規程の定める額を参酌して算定するのが合理的である。

しかし、諸事情を考慮し、著作権法114条の4により、2億7932万8000円の概ね10分の1に相当する3000万円(平成3年11月1日から平成14年2月28日までについては概ね10分の1に相当する2200万円)を使用料相当損害額とした。
 裁判所は、JASRAC等のもつ「自動公衆送信権」「送信可能化権」の侵害であるとして損害賠償を命じている。
 このように被告のようなファイル交換サービス事業者は、単に電子ファイルの送受信に必要なファイル情報を提供しているに過ぎないが、管理性があり、営業上の利益を得ていることから、著作権、著作隣接権の侵害行為の主体であるとした。

関係者にとって重要な判例である。

[参考文献]
平嶋竜太・ファイルローグ事件(中間判決)「サイバー判例解説」(商事法務・2003年)60頁。富岡英次・判タ1154号188頁。
田中豊編「判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講(日本評論社・2010年)209頁、356頁、176頁(市村直也執筆)。紋谷暢男編「JASRAC概論」151頁以下、特に185頁(執筆田中豊)。

ロックバンド「HEAT WAVE」事件

1997年著作権法改正で規定された「実演家の送信可能化権」は、ロックミュージシャンがもっているか、レコード会社へ譲渡されていたか、が争われ、原告Xミュージシャンが原始的に取得し、同時に、訴外Aレコード会社へ譲渡され、のちその地位を承継した被告Yレコード会社に承継された、と判断した事例である。

東京地裁平成19年4月27日判決(平成18年(ワ)第8752号、平成18年(ワ)第16229号)

原告X1、X2,X3は、ロックミュージシャンで、1979年から2001年まで、X1がリーダーだった「HEAT WAVE」という名称のロックバンドのメンバーであった。
被告Y((株)エピックレコードジャパン)は、著作権及び著作隣接権の取得、管理等を目的とするレコード会社である。

1989年9月1日、Xら3人は、Xらが所属するマネジメント会社Aの代表者とレコード会社Bの3者の間で、(Xらが、Bの専属実演家になる)という「専属実演家契約」を結んだ。この契約の中に「4条 本契約に基づく原盤に係る一切の権利(原告等の著作隣接権を含む)は、何らの制限なく原始的且つ独占的にBに帰属する。」とあった。
この契約の後、1998年、インターネットに対応した著作権法が改正され(平成10年法律第101号)、実演家には、新たに送信可能化権が認められた(92条の2)。
2001年10月1日、Bの上記契約上の地位が、新設のYへ移転した。
Xらは、上記契約により、Bに帰属する権利の中に「送信可能化権」は、含まれていない、Yに承継されていない、と主張し、Yへ「各音源について、実演家の送信可能化権を有することを確認する」との訴えを起こした。

東京地裁民事第40部市川正巳裁判長は、「本件音源についての実演家の送信可能化権も、本件契約4条柱書きの『一切の権利(Xらの著作隣接権を含む)』に含まれ、平成10年1月1日に著作権法92条の2が施行された時点で、Xらが原始的に取得すると同時に、Bに対して譲渡され、その後、Yに承継されたものというべきである。」とした。

法律や契約書に関心を持たない実演家が多い中で、自分の音楽がパソコン向けに配信されたことを知り、ネット音源配信については、許諾していない、と気つき、Xらが権利主張をしたことは、勝敗は別として、非常に素晴らしい。

[参考文献]
升本喜郎「譲渡契約の解釈(1)」著作権判例百選[第4版]140頁。
田中豊「」コピライト561号23頁。
藤野忠「知的財産法政策学研究」19号313頁。

MYUTA事件

CD等の楽曲を自己の携帯電話で聞くことのできる「MYUTA」という名称のサービスの提供は、許されるか。

東京地裁平成19年5月25日判決(平成18年(ワ)第10166号、判タ1251号319頁、判時1979号100頁)

 原告は、携帯電話向けストレージサービス等を業とする会社で、au WIN端末のユーザーを対象として、CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことのできる「MYUTA」という名前のサービスを始めようと考えた。
 そこで、原告の行おうとする事業が円滑に行えるように、音楽著作権を多数管理している日本音楽著作権協会を被告として、被告(日本音楽著作権協会)が、「作詞者、作曲者、音楽出版者その他著作権を有する者から委託されて管理する音楽著作物の著作権に基づき、これを差し止める請求権を有しないことを確認する」との訴えを提起した。

 主要な争点は、次の通り。

  1. 複製権侵害の主体(本件サーバーにおける3G2ファイル(携帯向け動画音声ファイルの形式)の複製行為の主体)は、原告か、ユーザーか。
  2. 公衆送信、自動公衆送信がなされているか。なされているとして、その主体は誰か。

である。原告は、管理著作物が複製されていることは認めるが、行為主体は、ユーザーで、公衆送信に当たらないと主張した。

すなわち、本件サーバーからユーザーの携帯電話に向けた3G2ファイルを送信(ダウンロード)しているのは原告か、ユーザーか。自動公衆送信行為がなされたか、である。

東京地裁民事47部高部眞規子裁判長は、次のように判決した。

  1. 本件サーバーにおける3G2ファイルの複製行為の主体は、原告である。
  2. 本件サーバーからユーザーの携帯電話に向けた3G2ファイルを送信(ダウンロード)している主体は、複製と同様、原告である。
  3. 本件サービスを担う本件サーバは、ユーザーの携帯電話からの求めに応じ、自動的に音源データの3G2ファイルを送信する機能を有している。ユーザーによって、直接受信されることを目的として自動的に行われるから、自動公衆送信に当たり、その主体は原告である。
  4. 本件サーバーにおける音楽著作物の複製及びユーザーの携帯電話への自動公衆送信も原告が行っている。

これらの原告の行為は、被告の承諾がなければ、被告の著作権を侵害するものである。
本件サーバーにおける音楽著作物の蔵置及びユーザーの携帯電話に向けた送信につき、被告は差止請求権を揺する。よって、原告の請求は棄却する。

この事件は、CD等の楽曲を携帯電話で聴くことができるように音楽データのストレージサービス提供事業というビジネスモデルが、適法であるかどうか、を事業開始前に、裁判所の判断を仰いだ訴訟という点で、田中豊弁護士は、原告を高く評価している。同感である。

[参考文献]
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応ー司法救済による権利の実効性確保」(紋谷暢男編「JASRAC概論ー音楽著作権の法と管理」(日本評論社・2009年)151頁、特に188頁)
相澤英孝「知的財産法判例の動き」『ジュリスト』1354号「平成19年度重要判例解説」286頁。

TVブレイク事件

無許諾の音楽付動画ファイル視聴サービスが音楽著作権者の公衆送信権等を侵害するとされた事例である。

知財高裁平成22年9月8日判決(平成21年(ネ)第10078号判時2115号103頁)
東京地裁平成21年11月13日判決(判時2076号93頁判タ1329号226頁)

(1)東京地裁平成21年11月13日判決
 被告Y1(ジャストオンライン社)は、インターネット上で、動画投稿・共有サービスを運営する会社で、旧商号を株式会社パンドラTVといい、平成17年11月10日、インターネット等の通信ネットワークを利用した映像コンテンツ配信事業等を目的として設立された株式会社である。  被告Y2は、Y1の代表者である。

原告X(日本音楽著作権協会JASRAC)は、音楽著作物の著作権等の管理事業者である。 原告Xは、被告Y1が主体となって、そのサーバーに原告Xの管理著作物の複製物を含む動画ファイルを蔵置し、これを各ユーザーのパソコンに送信しているとして、

  1. 被告Y1に対して著作権(複製権及び公衆送信権)に基づいて、それらの行為の差止を求めると共に、
  2. 被告Y1及び被告Y1代表者Y2に対して、不法行為(著作権侵害)に基づいて過去の侵害に対する損害賠償金及びこれに対する遅延損害金並びに将来の侵害に対する損害賠償金の連帯支払

を求めた。

すなわち、音楽著作権者であるXが、

  1. 別紙記載の音楽著作物を、被告Y1のサーバーの記録媒体に複製し、又は公衆送信することの禁止、
  2. 被告Y1Y2各自が、原告Xへ1億28174888円支払え、
    1. 被告Yらは、原告Xに対し、各自平成20年4月25日から同年11月4日まで1月当たり、944万円支払え、
    2. 被告らは、各自、平成20年11月5日から、被告Y1が別紙サービスにおいて、別紙記載音楽著作物の複製及び公衆送信(送信可能化を含む)を停止するに至るまで1か月当たり504万円支払え、

との請求の訴訟を提起した。

被告Yらは、本件サービスにおいて、著作権侵害の主体は、ユーザーであると主張した。
被告Yらは、原告Xは、本件管理著作物を示すことはしても権利侵害コンテンツとする具体的な権利侵害情報の特定をしないまま漠然と権利侵害通知をしたのみであるから被告Y会社は、具体的な権利侵害の認識はない。放置したことをもって被告Y1が著作権侵害の主体という結論は導くことはできない等の反論を行った。

[東京地裁判決]
民事40部の岡本岳裁判長は、次のように述べて、音楽著作権者の公衆送信権等を侵害するとして、差止請求を認容するとともにし、約9000万円の損害賠償を命じた。
「著作権法上の侵害主体を決するについては、当該侵害行為を物理的、外形的な観点のみから見るべきではなく、これらの観点を踏まえた上で、実態に即して、著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。」「この検討に当たっては、問題とされる行為の内容・性質・侵害の過程における支配管理の程度、当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し、侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として、侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。」とし、「被告Y1は、著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引、招来、拡大させてこれにより利得を得る者であって、侵害行為を直接に行う者と同視できるから、本件サイトにおける複製及び公衆送信(送信可能化を含む。)に係る著作権侵害の主体というべきである」とした。

主文

  1. 被告Y1は、1,別紙記載の音楽著作物を、原告のサーバーの記録媒体に複製し、又は公衆送信することをしてはならない。
  2. 被告各自が、原告へ各自8993万円及びうち5748万円に対する平成20年4月24日から支払い済みまで年5分の割合の金員を支払え。
  3. 請求の趣旨第3項(2)に係る訴え中、被告らに平成21年9月12日以後に生ずべき損害賠償金の支払いを求める部分を却下する。
  4. 原告のその余の請求(訴え却下部分を除く)をいずれも棄却する。
  5. (省略)
  6. (省略)

[知財高裁判決]
知財高裁第4部滝澤孝臣裁判長は、原判決の文章を基にして加除あるいは、改変し、その上で、「原判決は相当であって、本件控訴は棄却」とした。
著作権侵害主体について、次のように述べている。
「控訴人会社が、本件サービスを提供し、それにより経済的利益を得るために、その支配管理する本件サイトにおいて、ユーザーの複製行為を誘引し、実際に本件サーバーに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら、侵害防止装置を講じることなくこれを容認し、蔵置する行為は、ユーザーによる複製行為を利用して、自ら複製行為を行ったと評価することができるものである。よって、控訴人会社は、本件サーバに著作権侵害の動画ファイルを蔵置することによって、当該著作物の複製権を侵害する主体であると認められる。また、本件サーバに蔵置した上記動画ファイルを送信可能化して閲覧の機会を提供している以上、公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体と認めるべきことはいうまでもない。以上からすると、本件サイトに投稿された本件管理著作物に係る動画ファイルについて、控訴人会社がその複製権及び公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体であるとして、控訴人会社に対してその複製又は公衆送信(送信可能化を含む。)の差止めを求める請求は理由がある。」

この知財高裁判決は、一定の条件下、動画投稿サイト自身が複製の主体に当たると認めている、とされる。小泉直樹教授は、「クラウド時代の著作権法」において、「このようなサービスにおいて、動画投稿サイトが投稿された違法著作物のファイル形式の統一を行う場合、当該統一行為自体については47条の9の適用を受けるが、形式を統一したファイルを著作権者に無断でサーバーに蔵置する行為自体は、『準備に必要』とはいえないので違法であることに変わりはない。」とされる。
平成24年著作権法改正により、情報通信の技術を利用した情報提供の場合(各種動画投稿サイト、SNSなど)、「記録媒体への記録または翻案」など準備に必要な情報処理のための利用を、著作権侵害にしない、という「47条の9」が設けられた。このことと、当該情報自体が著作権侵害物であること、は別で47条の9によって影響を受けない、ことが小泉直樹教授、池村聰弁護士の問答(ジュリスト1449号17頁)で明らかにされている。また、サーバーへの蔵置が、「準備」にあたる(当該提供を円滑かつ効率的に行うための「準備」に必要な電子計算機による情報処理を行うのため必要な限度であること)とされれば、47条の9により合法である。
この判決は、クラウド・コンピューテイングに関連して、重要な判決となった。

[参考文献]
岡村久道「プロバイダ責任制限法上の発信概念と著作権の侵害主体」(堀部政男監修「プロバイダ責任制限法実務と理論」(商事法務・2012年)116頁)
田中豊編「判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講」184頁(市村直也執筆)
小泉直樹、池村聰、高杉健二「平成24年著作権法改正と今後の展望」ジュリスト1449号12頁。小泉直樹「日本におけるクラウド・コンピューテイングと著作権」(小泉直樹、奥邨弘司、駒田泰土ほか「クラウド時代の著作権法」勁草書房・2013)25頁。

レコード送信可能化KDDI事件

原告レコード会社2社が、氏名不詳者によって、送信可能化権を有するレコードを無断複製され、被告のインターネット回線を経由して自動的に送信し得る状態に置かれたことにより、原告等の送信可能化権が侵害されたと主張し、被告に対しプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、氏名不詳者に係る発信者情報の開示を求めた事例である。

東京地裁平成26年6月25日判決(平成26年(ワ)第3570号)

原告1は、キングレコード株式会社。
原告2は、ユニバーサルミュージック合同会社。いずれもレコードを製作し、複製し、CD等にして発売している。
被告は、一般利用者に対し、インターネット接続プロバイダ事業等を行っているKDDI株式会社である。

原告1は、実演家AKB48が歌唱する楽曲「大声ダイヤモンド」を製作し、平成20年10月22日、商業用CDの1曲目に収録、発売した。
原告2は、実演家GreeeeNが歌唱する楽曲「道」を録音したレコードを製作し12センチ音楽CDの1曲目に収録し、平成19年1月24日発売した。
 この原告1及び原告2のレコードの音は、mp3方式により圧縮され、コンピュータ内の記録媒体に記録・蔵置された上、そのコンピュータから被告のインターネットサービスを利用し、氏名不詳者等により、それぞれ、インターネットに接続され、それぞれ、平成25年7月11日及び平成25年7月23日、ファイル交換共有ソフトウエアであるGnutella交換ソフトウエアにより、インターネットに接続している不特定の他の同じソフトウエア利用者からの求めに応じて、インターネット回線を通じて、自動的に送信しうる状態にされた。

 原告1及び原告2は、被告に対し、氏名不詳者の氏名、住所、電子メールアドレスを開示せよ、と求めて訴えた。
 すなわち、原告1は、平成25年7月11日午前9時51分33秒頃、「219.108.203.208」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続した者、原告2は、平成25年7月23日午前9時54分42秒頃に、「219.108.203.208」というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続した者の発信者情報(氏名、住所、電子メールアドレス)の開示を求めた。

東京地裁民事40部東海林保裁判長、今井弘晃、実本滋裁判官は、原告1及び原告2の請求を認容し、被告に開示せよ、訴訟費用は被告の負担とする、との判決を下した。

音源が無断で送信可能に置かれた事例である。

レコード送信可能化ソフトバンクBB事件

各レコードについて送信可能化権をもつレコード会社が、氏名不詳者により、被告が提供するインターネット接続サービスを経由して、自動的に送信しうる状態におかれたため、氏名不詳者に対し、送信可能化権侵害で訴えるべく、被告に対しプロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求め、認容された事例である。

東京地裁平成26年7月31日判決(平成26年(ワ)第3577号)

原告は、(株)ジェイ・ストーム、(株)ランテイス、ユニバーサルミュージック合同会社、(株)エピックレコードジャパン、(株)ポニーキャニオンの5社である。
被告(ソフトバンクBB(株))は、一般利用者に対するインターネット接続プロバイダ事業等を行う株式会社で、プロバイダ責任制限法2条3号の「特定電気通信役務提供者」に当たる。

訴外(株)クロスワープは、インターネット上の著作権侵害を継続的に監視する会社であるが、原告5社へ、Gnutellaネットワークに接続されたパソコンに保存されて、ダウンロード可能な状態に置かれた音楽ファイルを検出し、各音楽ファイルをダウンロードしたとして、その旨を各音楽ファイルごとに対応する原告らに報告した。

原告等は、「P2P FINDER」というシステムがGnutella ネットワーク上を監視して検出したIPアドレスは実験者が送信したファイル送信元のIPアドレスと完全に一致しており、このシステムによる各音楽ファイル及び各IPアドレスの検出は正確であり、氏名不詳の本件契約者は、原告等の送信可能化権を侵害している、と主張した。
被告は、ユーザーのIPアドレス、タイムスタンプ等の正確性を判断できない。本件発信者情報が本件各音楽ファイルの送信可能化権侵害者の情報であるか否か確認できない、と主張した。

東京地裁民事46部長谷川浩二裁判長は、

  1. 本件システムは、当該ファイルを記録している端末のIPアドレスを正確に検出、当該ファイルをダウンロードするものと認められる。本件各契約者は、明らかに各原告の各レコードの送信可能化権を侵害している。
  2. 被告に対し、本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。
2014-10参照。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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