大家重夫の世情考察

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「がん闘病記」医師ネット転載事件

医師が患者が月刊誌に掲載したがん闘病記事 を、患者に無断で、医師がクリニックのホームページに掲載し、医師が著作権(複製権、公衆送信権)侵害及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害に問われた事例である。

東京地裁平成22年5月28日判決(平成21年(ワ)第12854号)

 原告Xは、平成14年、末期の子宮頸がんを宣告されたが、化学療法、外科療法等により治癒した者である。
 被告Yは、平成16年4月21日から平成20年3月18日まで、Xを診療、治療を実施したYクリニックを経営する医師である。

 Xは、平成18年1月頃から、体験を基に、「がん闘病マニュアル」を執筆をはじめて、月刊誌「がん治療最前線」に平成18年10月号(8月発売)から、20回にわたって連載し、のち単行本にした。
 Yは、平成17年に、Yクリニックのホームページを開設していたが、Xの記事の4回目(平成19年1月号)から10回目連載の分及び18回連載分の本文部分を、ホームページの「漢方コラム」欄に転載した。
 Xは、Yへ平成20年9月16日、Yの転載中止を求め、Yは、同年9月末日までに、転載記事を削除した。
平成21年、Xは、Yに対し、著作権侵害、著作者人格権侵害、プライバシー権侵害及び名誉権侵害で、1250万円の損害賠償を求めて提訴した。

[東京地裁]
民事40部の岡本岳裁判長は、次のように判断した。

  1. Yは、Xの文章をインターネット、ホームページに転載するについて、Xの許諾を得たと主張しているが、転載についてXが許諾した事実は認めることができないとした。
  2. Yは、本件転載は、著作権法32条1項の「引用」に当たる、と主張したが、これを認めなかった。著作権(複製権、公衆送信権)侵害を認めた
  3. Yは、Xに無断で、Xを「子パンダ」と表示したことは、Xの氏名表示権の侵害で、Xの文章を転載の際、リード文を切除し、本文のみを転載したが、これは、同一性保持権の侵害であるとした。
  4. Xは、プライバシー権侵害を主張したが、Yの転載記事は、Xが公開した事実の範囲内であり、認めなかった。Xは、Yの転載によりXの名誉権が侵害されたと主張したが、名誉権侵害は、認められないとした。
  5. Xの著作権(複製権、公衆送信権)侵害による財産的損害額について、損害額は利用許諾料の額とし、21万6000円(1頁12000円×18頁)とした。
     著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害を慰藉する額として、15万円、弁護士費用5万円とした。

「判決主文」
1,被告は、原告に対し、41万6000円及びこれに対する平成21年4月25日から支払い済みまで年5分の割合の金員を支払え。(あと省略)」

患者に無断で医師が患者の著作物を転載したということは、相互の信頼関係が失われていたということである。

データSOS事件

ウエブサイトの文章が類似するが、著作権侵害に当たらない、とされた事件である。

知財高裁平成23年5月26日判決(平成23年(ネ)第10006号判時2136号116頁判タ1386号322頁)
東京地裁平成22年12月10日判決(平成20年(ワ)第27432号)

[東京地裁判決]
 原告は、コンピュータの保守、管理、コンピュータにおいて、バックアップされていないデータがコンピュータ上で出力できなくなった場合、そのデータをコンピュータ等から取り出して復元するサービスの請負などを行う会社である。
原告は、2006年10月から12月にかけて、データ復旧サービスを一般に周知させ、顧客を誘引するためウエブページを創作し、これを自社のウエブサイトに「データSOS」の題名で掲載し、その後も文章を推敲、改良し、2007年4月28日、データ復旧サービスに関するウエブページを完成させた。
 被告は、コンピュータ機器開発販売会社である。被告も被告のウエブサイトにデータ復旧サービスに関する文章を掲載した。
 原告は、被告の文章は、原告の文章の著作権侵害であるとして、訴えた。

すなわち、原告は、

  1. 主位的に、被告の行為は、原告のウエブページにコンテンツ又は広告用の文章の複製又は翻案であるとして、原告の著作権侵害(複製権、翻案権、公衆送信権、二次的著作物に係る利用)及び著作者人格権(氏名表示権、著作権法113条6項のみなし侵害)を侵害する行為であるとして、損害賠償1650万3562円及び遅延損害金、著作権法115条に基づく謝罪広告を求め、
  2. 予備的に、被告行為は、一般不法行為に当たる

として、1,と同額の損害賠償金及び遅延損害金、民法723条に基づく謝罪広告を求めた。

東京地裁民事40部岡本岳裁判長は、次のように述べて、原告の請求を棄却した。

  1. 原告は、被告が(原告の)どの部分の著作権を侵害したか主張していない。
  2. 原告の広告用の文章作成者の個性が現れていなく、原告の文章の創作性がない部分において、被告の文書と同一であるにすぎない。
  3. 被告文章が著作権侵害でなく、翻案権侵害でない以上、著作者人格権の侵害もない。
  4. 一般不法行為について、被告文章が原告文章に依拠して作成されたとしても、被告の行為は、公正な競争として社会的に許容される限度を逸脱した不正な競争行為として不法行為を構成すると認められない、とした。

[知財高裁判決]
知財高裁第4部は、次のように判断し、控訴を棄却した。

  1. 被控訴人がウエブサイトに掲載したデータ復旧サービスに関する文章が、控訴人がウエブサイトに掲載したコンテンツ又は広告用文章に係る控訴人の著作権(複製権、翻案権、二次的著作物に係る公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)の侵害にも、著作権法113条6項のみなし侵害)にも当たらない。
  2. 被控訴人が控訴人の広告と同一ないし類似の広告をしたからといって、被控訴人の広告について著作権侵害が成立せず、他に控訴人の具体的な権利ないし利益の侵害が認められない以上、不法行為が成立する余地はない。
平成25年のナビキャスト事件(東京地裁平成25年9月12日判決)は、入力フォームのアシスト機能に係るサービスの説明資料が類似しているという事件で、原告資料が著作物であるとされ、原告が勝訴している。この事件で、原告は、「個性が現れている文章」、「創作性がある文章」にすべきであった。ウエブサイト上の図表について、著作物の主張をしたが、図形の著作物、編集著作物、データベースの著作物でもないとされた東京地裁平成22年12月21日判決(2010-11)がある。

「釣りゲーム」事件

携帯電話用ゲームの画面表示の類似はどこまで、許されるか、という事件で、1審は、侵害とし、2審は、問題なしとした。

知財高裁平成24年8月8日判決(平成24年(ネ)第10027号、判時2165号42頁)
東京地裁平成24年2月23日判決(平成21年(ワ)34012号)

 原告X(グリー株式会社)は、インターネットを利用した情報サービス等を提供する株式会社である。インターネット上で、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(コミュニテイ型サービス)を提供するインターネット・ウエブサイト「GREE」を携帯電話向け及びパソコン向けに運営している。
 被告Y1(株式会社デイー・エヌ・エー)は、インターネットを利用した各種情報処理サービス及び情報提供サービス、ソフトウエアの企画、開発等及びその代理業等を業とする会社である。携帯電話向け及びパソコン向けにインターネット・ウエブサイト「モバゲータウン」を運営している。
 被告Y2(株式会社ORSO)は、インターネット、コンピュータ、携帯電話、テレビゲーム機器等のシステム開発、コンサルタント業務、ゲームソフトの企画制作、製造販売等の業務を業とする株式会社である。

Xは、2007年、携帯電話向けGREEに、その会員に対し、釣りのゲームの作品「釣り★スタ」(X作品)を公衆送信によって配信した。このX作品は、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、魚を釣り上げた釣果画面が存在する。
 2009年、Y1およびY2は、「釣りゲータウン」という携帯電話機用の釣りのインターネット・ゲーム(Y作品)を共同で製作し、携帯電話機向けのモバゲータウンにおいて、その会員一般に、公衆送信による配信を開始した。このY作品にも、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、釣果画面が存在する。
Y1のモバーゲタウンや、Y2のホームページには、Y作品が掲載されている。
 Xは、1,YらによるY作品の製作及び公衆送信は、X作品の著作権(翻案権、公衆送信権)および著作者人格権の侵害である、Y作品の公衆送信の差止およびモバゲータウンなどウエブサイトからY作品を抹消すること、2,Yらが、Y作品をウエブページに「魚の引き寄せ画面」のY影像を掲載することは、不正競争防止法2条1項1号所定の周知な商品等表示の混同惹起行為に当たるとして、Y影像の抹消を求め、3,YらがY作品を製作し、公衆に送信する行為は、Xの法的保護に値する利益を侵害する民法の不法行為に当たる、と主張し、著作権侵害、不正競争防止法2条1項1号違反、共同不法行為に基づく損害賠償として9億4020万円、4,著作権法等に基づく謝罪広告を求めて訴えた。

東京地裁平成24年2月23日判決は、Y作品の「魚の引き寄せ画面」が、X作品の「魚の引き寄せ画面」を翻案したものである、X作品にかかるXの著作権及び著作者人格権を侵害するとして、Y作品の公衆送信の差止、ウエブサイトの抹消、損害賠償の一部約2億3500万円の支払いを認めた。

 この判決に不服のYらは控訴した。

知財高裁平成24年8月8日判決は、「魚の引き寄せ画面」は、たしかに共通しているが、「ありふれた表現である」か(魚を引き寄せる決定キーを押すタイミングを魚影が同心円の一定の位置にきたときにする)ことにした点は、「アイデア」にすぎない、として、翻案権侵害を否定した。また、「魚の引き寄せ画面」は、不正競争防止法2条1項1号に該当せず、著作権侵害、不正競争行為に該当せず、民法の不法行為も構成しないとした。

 東京地裁判決は、携帯電話向け釣りゲームのX作品は、従来にない、新しいものとし、著作権法で保護しようとしたが、知財高裁は、X作品は、ありふれている、又は著作権法で保護するに値しない単なるアイデアであると判断した。

最高裁第三小法廷は、平成25年4月16日、X側の上告を棄却する決定をした。

非常に難しい問題である。しかし、この2審判決を研究し、多少、類似したゲームを、創作する者が出るかも知れない。

[参考文献]横山久芳「翻案の判断方法」(「平成24年度重要判例解説」267頁)。

漫画家佐藤秀峰事件

漫画家佐藤秀峰の描いた天皇の似顔絵を無断で、画像投稿サイトに投稿したことが著作権侵害及び著作者人格権侵害とされ、50万円の損害賠償が命ぜられた事例である。

知財高裁平成25年12月11日判決(平成25年(ネ)第24571号)
東京地裁平成25年7月16日判決(平成24年(ワ)第24571号)

原告X(佐藤秀峰)は、著名な漫画家であるが、2012年9月、「ブラックジャクによろしく」の二次使用を商用、非商用をとわずフリーにしたことで話題になった。
訴外A(有限会社佐藤漫画製作所)は、Xが制作した作品の著作権の管理等を行う特例有限会社である。

Aは、「漫画on Web」というウエブサイトを運営しているが、販売促進活動の一環として、同サイトで、Xの作品を購入した顧客に対し、その希望する人物の似顔絵をXが色紙に描き、これを贈与するというサービスを提供した。
被告Yは、平成24年3月20日頃、このサイトを通じて、Xの「特攻の島」3巻及び4巻を購入すると共に、Aに対し、Xが描いた昭和天皇及び今上天皇の似顔絵を各1枚贈るよう申し入れ、Xは、これに応じAがYに送付した。
平成24年3月24日、Yは、ツイッターのサイト(以下、本件サイト)に、
「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。陛下の似顔絵を描いてくれるプロのクリエータさん。お願いします。クールJAPANなう、です。」
と投稿し、その後、似顔絵のうちの1枚を撮影した写真をTwitpicという画像投稿サイトにアップロードした上、本件サイトに
「陛下プロジェクトエントリーナンバー1,X.海猿、ブラックジャックによろしく、特攻の島」
と投稿し、上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示した。また、Yは、残る1枚の似顔絵についても、上記画像投稿サイトにアップロードし、本件サイトに
「はい応募も早速三通目!…なんとまたXさんの作品だ!なんか萌えますな。萌え陛下。」
と投稿し、上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示した(以下、本件行為1)。

これに対しXは、
「お客様のリクエストには極力お応えするのですが、政治的、思想的に利用するのはご遠慮ください。あくまで個人的利用の範囲でお応えしたイラストです。」
と投稿したところ、Yは、
「あ、はいゴメンなさい。賛同していただけるかと思ったのですが、届きませんでしたか…ごめんなさい。消します。」
と投稿し、その後、本件似顔絵の写真を上記画像投稿サイトから削除した。

しかし、Yは、本件サイトに、平成24年3月25日、
「毒をもって毒を制すということで、大手マスコミと同じ手法を取ってみた。」
翌26日
「どんな手を使っても注目を集めて伝えたいことがあるんです。」
「Xさんにも○害予告されましたし、あちこちから狙われてますのでW俺の交友範囲は右から左、官から暴、聖から貧まで幅広いですが、危険情報ばかり流しているので…アブナイJAPANというのに少しまとめてあります…(以下省略)」
と投稿した(以下、本件行為2)。
本件サイト及び画像投稿サイトにおけるYの投稿内容は、Yがブロックした者以外の者に自由に閲覧できた。

Xは、

  1. 本件行為1について、Xの著作権(公衆送信権)侵害である。また、本件行為1は、原告Xの名誉声望を害する方法で著作物を利用する行為であり、著作者人格権侵害である(著作権法113条6項)、
  2. 本件行為2の中で、「○害予告」は「殺人予告」を意味する、XがYに対し殺害予告をしたとの事実を摘示することは、Xの社会的評価を低下させるもので、Xへの名誉毀損であると主張し、平成24年9月、Yを相手に400万円の損害賠償を求め提訴した。

[東京地裁]
民事46部の長谷川浩二裁判長は、本件行為1の著作権侵害による損害額20万円、本件行為1による著作者人格権侵害、及び本件行為2のXへの名誉毀損について、それぞれ15万円(合計30万円)と認定し、Yは、Xへ50万円を支払うよう命じた。
Yは、控訴し、Xは、自らの作品について、著作権フリーの姿勢をみせており、Yには著作権侵害の故意はない、と主張、これに対し、Xは、「自ら制作した特定の作品のみ他人意よる自由な二次利用を許諾したにすぎない」と反論した。

[知財高裁]
第3部の設楽隆一裁判長は、原判決が認容した限度で、理由がある、と1審判決を支持し、本件控訴を棄却した。

佐藤秀峰氏は、マンガの二次利用は、フリーにしたいという気持ちを持っていたと思われるが、自分と違う思想の人の手にかかると、このように「悪用」されるので、考えを改めたかも知れない。「著作権法113条6項」という条文の有用性が証明された。

[参考文献]
判例評釈として、小泉直樹「著作者の名誉声望の侵害」『ジュリスト』2013年10月号6頁、大家重夫「入手した天皇似顔絵を政治・思想目的でウエブサイトに掲載利用した事件」日本マンガ学会ニューズレター36号(2014年1月)8頁。

プラスチック自動車部品事件

被告らが著作、販売、インターネット上に掲載等をした「自動車プラスチック部品メーカー分析と需要予測」が、原告が著作した「プラステック自動車部品」の著作権侵害ではないとされた事例である。

知財高裁平成26年2月19日判決(平成25年(ネ)第10070号)
東京地裁平成25年7月18日判決(平成24年(ワ)第25843号)

原告Xは、自動車用プラスチックの研究開発、企画、市場開発、営業及びコンサルテイングを業としてきた者で、「プラステック自動車部品」(以下、本件書籍)の著者である。
被告Yは、「自動車プラスチック部品メーカー分析と需要予測」(以下、被告書籍)の著者の1人である。
被告Y2(有限会社シーエムシー・リサーチ)は、被告書籍の発行元である。
被告Y3(株式会社シーエムシー出版)は、被告書籍の発売元である。

Xは、Y1Y2Y3らが共謀して、被告書籍を作成・販売し、被告書籍をインターネット上に掲載している行為は、原告の本件書籍に掲載されている14個の表についての著作権(複製権、譲渡権、公衆送信権)侵害及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害であると主張し、

  1. 著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき、Yらに84万円、
  2. 著作者人格権の不法行為による損害賠償請求権に基づき、Y1に対し100万円、Y2に対し、100万円、Y3に対し、50万円、
  3. 著作権法112条1項に基づき、Yらに対し、被告書籍の複製、譲渡、公衆送信の差止め禁止、
  4. 同条2項に基づき、Yらに対し、被告書籍の廃棄及びその電子データを記憶した媒体の廃棄を、
  5. 同法115条に基づき、Yらに対し、別紙告知文の掲載を求めた。

[東京地裁]
民事46部の長谷川浩二裁判長は、原告Xの本件書籍の各表は、自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な形式に整理したものにすぎず、その表現自体は平凡かつありふれたもので、著作物性を認めることはできない、としてXの請求を棄却した。

[知財高裁]
第2部清水節裁判長は、原判決の認定判断を支持し、控訴人Xの請求は、理由がないとし、控訴を棄却した。2審において、Xは、本件書籍の各表が編集著作物であるとも主張したが、アイデアの独創性や記載事項の情報としての価値を述べたに過ぎず、著作権法上の保護対象でないとした。

1審、2審とも、書籍及びその中の表は、著作物性がないとされている。

風俗記事無断マンガ化事件

フリー・ライター執筆のブログ記事を無断でマンガ化にし、これを雑誌に掲載した雑誌発行者と編集プロダクションを訴えたが、ライターがブログで、雑誌社と編集プロダクシヨンを名誉毀損したことで、反訴され、55万円の損害賠償金を得たが、40万円の損害賠償金の支払を命ぜられた事例である。

知財高裁平成27年5月21日判決(平成26年(ネ)第10003号)
東京地裁平成25年11月28日判決(平成24年(ワ)第3677号、第7461号)

原告Xは、風俗記事を書くフリーのライターで、自分のブログ(以下、本件ブログ)を運営している。
被告Y1(株式会社ジーオーテイー)は、「実話大報」という雑誌を出版、販売している出版社である。
被告Y2(有限会社ジップス・ファクトリー)は、Y1から依頼され実話大報の編集等を請け負っている編集プロダクションである。

Xは、自分の本件ブログに「混浴乱交サークル」と題する記事を平成22年7月30日に、「生脱ぎパンテイオークション乱交」と題する記事を平成22年1月10日を掲載した。
Y2は、訴外Aに、これらXの記事に依拠して作画させ、漫画にし、「実話大報」平成23年1月号、同6月号に掲載した。
Xは、平成22年1月6日頃からほぼ1年の間に、本件ブログに、別紙目録記載の記事1ないし6を書き込み、Y1Y2らが著作権侵害をしたとし、Y1が著作権侵害をしたことについて「盗作行為をどう思う」などの投票を行い、投票プログラムを利用して別紙投票プログラム記載のとおりの投票を実施した。
平成24年、Xは、Yらにより、著作権侵害、著作者人格権侵害を受けたとして、Yらに連帯して131万円(著作権侵害16万円、著作者人格権侵害100万円、弁護士費用15万円)の支払いと、雑誌「実話大報」への謝罪広告1回掲載を求めて訴えを起こした。
これに対して、Y1Y2は、(1)Xは、Y1Y2らに、それぞれ、100万円支払え、(2)Xは、別紙目録記載の記事1ないし6の記事及び別紙ブログ記載のブログにおける別紙投票プログラム記載の投票プログラム及びその投票結果を抹消せよ、との反訴を提起した。投票の募集や投票プログラムの記載、投票の実施等が、Y1及びY2の名誉、信用の社会的評価の低下を招いたというのである。

[東京地裁]民事47部の高野輝久裁判長は、次のように判断した。

  1. Y1Y2は、「実話大報」の2回の掲載によりXの記事の著作権(翻案権)侵害をしたとした。
  2. また、Y1Y2が、Xの氏名表示権、同一性保持権を侵害したとした。
  3. 被告らは、原告Xの著作権侵害及び著作者人格権侵害につき、過失があるとした。
    Aから漫画の提供を受けるに当たり、「三行広告」で検索し、調査すべきであったとする。
  4. Xが著作権行使で受けるべき金額は1万円とし、慰藉料として、5万円、弁護士費用6000円、合計6万6000円が相当であるとした。
  5. Xの社会的声望名誉は、毀損されていないとして、謝罪広告は認めなかった。

Y1Y2の起こした反訴について、次の判断をした。

  1. Y1は、Xの本件ブログの記事1,3,4により、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。 
    Y1は、Xの本件ブログの記事5,6により、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。 
    Y1は、Xの本件ブログの投票プログラムにより、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。
    Y2については、記事、投票プログラムによる名誉、信用等の社会的評価の低下を認めなかった。
  2. Xが、Y1の名誉、信用等を毀損したことについて、故意があるとした。
  3. Y1は、40万円の損害を被ったとした。
  4. Y1は、その名誉権に基づき、現に行われている侵害行為を排除するために、本件記事1,3ないし6及び投票プログラム等の記載の削除を求めることができる、とした。

[判決主文]

  1. 被告・反訴原告Y1、Y2は、原告・反訴被告Xに対し、連帯して6万6000円(財産権侵害1万円、慰謝料5万円、弁護士費用6000円)を支払え。
  2. 原告・反訴被告Xは、被告・反訴原告Y1に対し、40万円及びこれに対する平成24年3月28日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  3. 原告・反訴被告Xは、別紙ブログ目録記載のブログにおける別紙記事目録記載1,3ないし6の記事及び別紙ブログ目録記載のブログにおける別紙投票プログラム記載の投票プログラム及びその投票結果を抹消せよ。
  4. 被告・反訴原告Y2の請求並びに原告・反訴被告X及び被告・反訴原告Y1のその余の請求をいずれも棄却する。
  5. (訴訟費用の負担)省略。
  6. この判決は、第1、第2項に限り、仮に執行することができる。

 この判決に対し、Xは、控訴した。
「知財高裁」第4部富田善範裁判長は、Y1Y2は、Xに対し、連帯して55万円(財産権侵害10万円)、慰謝料40万円、弁護士費用5万円)を支払えと、Xの著作権侵害の損害額を1審にくらべ、多額に評価した。

[判決主文]

  1. 原判決を次のとおり変更する。
  2. 1審被告らは、1審原告に対し、連帯して55万円を支払え。
  3. 1審原告は、1審被告ジーオーテイに対し、40万円及びこれに対する平成24年3 月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  4. 1審原告は、1審被告ジーオーテイーに対し、原判決別紙ブログ目録記載のブログに おける原判決別紙記事目録記載1,3ないし6の各記事を抹消せよ。
  5. 1審原告は、1審被告ジーオーテイーに対し、原判決別紙ブログ目録記載のブログに おける原判決別紙投票プログラム記載1のタイトル、同記載2の選択肢及び同記載3の投票結果を抹消せよ。
  6. 1審原告のその余の本訴請求、1審被告ジーオーテイーのその余の反訴請求及び1審 被告ジップス・ファクトリイーの反訴をいずれも棄却する。
  7. (訴訟費用の負担)省略
  8. この判決は、第2項及び第3項に限り、仮に執行することができる。
原告が自分のブログに掲載した風俗記事が、無断で漫画化され、著作権侵害等が認められ、55万円(1審は6万6000円)を得たが、ブログで、著作権侵害者である出版社を誹謗、名誉権や信用を低下させたとして、40万円の支払いを命ぜられた。原稿料の相場が低いこと、慰藉料については、裁判官の裁量によるところが大きい。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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