大家重夫の世情考察

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クラブ・キャッツアイ事件

(最高裁1988年3月15日判決民集42巻3号199頁判時1270号34頁)

 音楽家を雇い、音楽の生演奏をさせていたクラブ・キャッツアイというバーが、それをやめ、カラオケ装置を置いて、客がカラオケで、歌うようになった。
 作詞家作曲家からその著作権を信託的譲渡されている日本音楽著作権協会は、演奏権に基いて、著作権使用料を請求、経営者であるバーを訴えた。
 バーにおいて、カラオケで歌唱しているのは、客か客と従業員であって、経営者は、音痴で歌わないし、店にいないといい、責任主体は、バーの経営者でないと主張した。

 最高裁は、

  1. 客が歌っていたとしても、バーの管理下にあること、
  2. バーは、カラオケスナックとしての雰囲気を醸成し、客の来集を謀り、営業上の利益の増大を意図していること、

を理由に客による歌唱も、著作権法上の規律の観点から、バーの経営者による歌唱と同視しうるとした。

 著作権侵害について、侵害者と思われる者が直接、侵害していないとしても、その行為のなされる状況において、

  1. その仕組みが侵害者の管理下にあること、
  2. 侵害者が利得している場合、

侵害とされる。この判例法理は「カラオケ法理」と呼ばれる。
最高裁平成23年1月27日判決(ロクラクII事件)、知財高裁平成22年4月28日判決(TVブレイク事件)、東京地裁平成19年5月25日判決(MYUTA事件)、東京地裁17年10月7日決定(録画ネット事件)など、このカラオケ法理に拠ると思われる判決は多い。

[参考文献]
井上由里子「著作権判例百選(第二版)」16頁(1994)。
大淵哲也「著作権判例百選(第4版)」190頁(2009)。
市村直也「田中豊編『判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講』(日本評論社)166頁」(2010)
上野達弘「著作権法における『間接侵害』」ジュリスト1326号75頁(2007)。
上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」「知的財産法と競争法の現代的展開ー紋谷暢男先生古稀記念」(発明協会)781頁(2006)
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応」(紋谷暢男編「JASRAC概論」(日本評論社)151頁)(2009)

速読本舗事件

書籍の要約文を掲載するウエブサイトは、許されるか。

東京地裁平成13年12月3日判決(平成13年(ワ)第22067号、判時1768号116頁)

 平成8年頃、Y(有限会社コメットハンター、本社福井市)は、インターネット・プロバイダAとサーバースペース提供に関する契約を締結し、Yのホームページを開設、そこに、ビジネス書の要約文を紹介するサイト「速読本舗」を置いた。
 Yは、毎月4冊のビジネス書を選び、その要約文を作成し、会費を支払った個人、法人の会員にメールサービスによって、書籍要約文を送信した。また、毎月、一冊の書籍要約文をホームページ上に無料で公開し、新規にこのサービスに加入する会員を募集した。
 Yは、要約した書籍の著者には、全く無断で、報酬も支払わず、連絡もしなかった。

 江口克彦、竹村健一、田原総一朗ら9名の著名な評論家、文化人、経営者である書籍の著者X1~X9らが、原告となって、Yに対し、複製権、翻案権、公衆送信権、送信可能化権及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものとして、その差止めと損害賠償を請求して訴えた。 X1らは、インターネット・プロバイダAへも著作権侵害で訴えた。

[東京地裁判決]
被告Yは、答弁書、準備書面を提出せず、口頭弁論期日にも出頭しなかった。民事29部飯村敏明裁判長は、Yが請求原因事実を認め、自白(民事訴訟法159条、179条)したものとみなし、原告の請求をすべて認容したものとした。

[判決主文]

  1. 被告は別紙書籍要約文を自動公衆送信又は自動公衆送信可能化してはならない。
  2. 被告は、被告の開設するウエブサイトから別紙各書籍要約文を削除せよ。
  3. 被告は、各原告に対し、それぞれ金110万円(うち10万円は弁護士費用)及びこれに対する平成13年10月28日から各支払済みまで年5分の金員を支払え。

 なお、Xらは、Aの行為も著作権侵害であると主張、Aに対し差止及び損害賠償を求めたが、XA間で、裁判上の和解が成立した(和解条項は判時1768号118頁に掲載。)

被告は、著者、出版社の承諾をとり行うか、被告が読み、褒めるなり、批判するなりして、文章を前後に書き、「引用」の形式で、試みる方法があった。

[参考文献]
山本順一・「速読本舗事件」「サイバー法判例解説」(商事法務・2003年)26頁。

ホテル・ジャンキーズ事件

被告が、インターネットの掲示板への書き込みをした者の著作権を侵害したことは、認められたが2審で賠償額が減額された事例である。

東京高裁平成14年10月29日判決(平成14年(ネ)第2887号、第4580号)
東京地裁平成14年4月15日判決(平成13年(ワ)第22066号判時1792号129頁)

Y1(株式会社森拓之事務所)は、情報産業に関連する事業を営む会社で、「ホテル・ジャンキーズ」というホームページを設置、管理し、掲示板を設置し、書込みをさせていた。
Y2は、ホテルに関する執筆活動をしているジャーナリストで、Y1の取締役である。
Y3(株式会社光文社)は、図書、雑誌の出版を業とする株式会社で、Y1,Y2が執筆した書籍を出版、販売、頒布し、その宣伝広告をしている。
原告X1から原告X11までの11人は、Y1のホームページに文章を書き込んだ。被告らは、原告の文章を複製したとし、この行為は、著作権侵害であるとして、書籍の出版の中止を求め、また被告らに、X1らは、13万円から40万円までの損害賠償請求をした。

[東京地裁]
民事29部飯村敏明裁判長は、原告の書込みに著作物性を認め、被告らが複製権侵害をしたとした。被告Y3の過失を認定し、次の判決を下した。

  1. 書籍の出版、発行、販売、頒布、頒布のための広告及び宣伝の禁止。
  2. Y3(光文社)は、書籍並びにこれに関する印刷用紙型、亜鉛版、印刷用原板(フイルムを含む)の破棄。
  3. 被告らは、連帯して、X1、X2に対して、10万3300円、X10に対して10万7700円、X4に対して10万8800円、X7に対して、13万7400円、X8に対して10万2200円、X3に対して11万7600円、X6に対して10万2200円、X5に10万1100円、X9に対し10万3300円、X11に対して5万2200円の支払を命じた。

[東京高裁]
Yらは、控訴し、インターネットの特質を主張し、インターネットの書込みの著作物性の基準は、厳密な基準にすべし、と主張した。
民事第6部山下和明裁判長は、「創作性の高いものについては、少々表現に改変を加えても複製行為と評価すべき場合がある」「創作性の低いものについては、複製行為と評価できるのはいわゆるデッドコピーについてのみ」で、「少し表現が変えられれば、もはや複製行為とは評価できない場合がある」というように、「著作物性の判断に当たっては、これを広く認めた上で、表現者以外の者の行為に対する評価において、表現内容に応じて著作権法上の保護を受け得るか否かを判断する手法をとることが、できうる限り恣意を廃し、判断の客観性を保つという観点から妥当」とする。
原判決では、各記述について、一部分が省略された形で転載されているため、転載された部分毎に分けてそれぞれについて著作物性の判断をし、一部分についてその著作物性を否定したが、「著作物性の有無の判断は、まず、これらそれぞれの記述全体について行われるべきである」とし、全体として一個の転載行為がなされた、「原告各記述部分は、それ自体としてみても、原判決が著作物性を否定した部分を含め、いずれも、程度の差はあれ記述者の個性が発揮されていると評価することができるから、著作物性を認めるのが相当である。この点において、当裁判所は、原判決と判断を異にする。」とし、判決した

[判決主文]

  1. 原判決中、金員請求に関する部分(主文2,4項)を次の通りに変更する。
    1. 控訴人らは、連帯して、被控訴人X3に対し、5500円、被控訴人X11に対し、1100円、被控訴人X5に対し1100円、被控訴人X9に対し、1万2100円、被控訴人X9に対し2200円、被控訴人X4に対し、8800円、被控訴人X11に対し2200円及びこれらに対する平成13年10月26日から各支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
    2. 被控訴人X2、同X7、同X6、同X10の各請求及び被控訴人X3、同X11、同X5、同X9、同X9、同X4、同X11のその余の請求をいずれも棄却する。
  2. その余の本件控訴及びその余の本件附帯控訴をいずれも棄却する。
  3. (省略)
  4. (省略)
ネットの文章を紙媒体にしたところ、著作権侵害に問われた事件である。

[参考文献]
光野文子・時の法令1678号48頁。
上野達弘・別冊ジュリスト179号「メイデイア判例百選」238頁(2005年)。

「就職情報」著作物事件

ウエブサイトに掲載の就職情報は、著作物であるとされた事例。

東京地裁平成15年10月22日判決(平成15年(ワ)第3188号、判時1850号123頁)

原告(エン・ジャパン株式会社)は、株式会社シャンテリーから同社の転職情報に関する広告の作成及びウエブサイトへの送信可能化について注文を受けて、転職情報を作成し、平成15年1月7日から原告が開設するウエブサイトに掲載した。
被告(イーキャリア株式会社)も、株式会社シャンテリーから、同社の転職情報に関する広告の作成及びウエブサイトへの掲載について注文を受けて、転職情報を作成、平成15年1月8日、被告が開設するウエブサイトに掲載した。掲載時期について争いがある。

被告Yがインターネット上に開設したウエブサイトに掲載した転職情報について、これは、原告Xが創作し、そのウエブサイトに掲載した転職情報を無断で複製ないし翻案したものであるとして、Xが著作権(複製権、翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)の侵害であると主張し、掲載行為の差止及び損害賠償5720万円を求めた。

民事29部飯村敏明裁判長は、原告作成の転職情報について、著作物性を認め、被告が、原告の著作権(複製権、翻案権、送信可能化権)を侵害したとして、

  1. 被告は、原告に対し、金65万円及び平成15年2月27日から支払済みまで年5分の金員の支払を命じ、
  2. 原告のその余の請求をいずれも棄却する、との判決を下した。
2011年(平成23年)の「データSOS事件」(原告敗訴)のように、同業者の間で、広告の文章が同じか酷似とし、著作権侵害事件になるケースが多い。本件は原告勝訴である。(ありふれた文章)でなく、著作物であるという注目すべき判例。

外務省デンバー元総領事肖像写真無断放送事件

被告日本テレビが、原告X作成のウエブサイト掲載のA元デンバー総領事の写真を、X及びAに無断で、放送し、100万円の損害賠償が認められ、複製及び公衆送信が禁止された事件である。

東京地裁平成16年6月11日判決(平成15年(ワ)11889号、判時1898号106頁)

原告Xは、アメリカ合衆国コロラド州デンバー市において、在米邦人向けの日本語新聞を発行する新聞社を経営し、ホームページを開設し、また写真家としても活動している。
被告Y(日本テレビ)は、放送法に基づき、一般放送事業、放送番組の企画、制作、販売等を行う株式会社で、キー局と言われる大放送局である。

Yは、平成13年7月当時、外務省の不祥事に関連する報道の一環として、その制作した報道番組において、原告X作成のウエブサイト上に掲載のXの友人である元デンバー総領事であったAの肖像写真を、XおよびAに無断で、ウエブサイトから採り、放送した。
Xは、Aの肖像写真は、著作物であるとし、Xの著作権侵害であるとし、損害賠償等を求めて訴えた。すなわち、Xは、Yに対し、写真の著作権(著作権法21条の複製権、同23条の公衆送信権)及び著作者人格権(同法19条の氏名表示権、同法20条の同一性性保持権)を侵害されたとして、

  1. 4521万円の損害賠償
  2. 上記写真の複製・公衆送信の差止め(同法112条1項)
  3. 上記写真及び上記写真が撮影された録画テープの廃棄(同法112条1項)
  4. 被害回復措置としての謝罪放送及び謝罪広告(同法115条)

を求めた。

東京地裁(三村量一裁判長、松岡千帆、大須賀寛之裁判官)は、次のように判断した。

  1. 被告が本件著作物(Aの同意を得て撮影されたAの肖像写真)が使用された各番組を原告Xの同意を得ずに公衆送信する行為は、公衆送信権の侵害である。
  2. 侵害による損害額は、キー局となる被告Yが1回公衆送信(放送)し、ネット局である各地方ネットワーク局が同時に公衆送信(放送)するに当たり、5万円を著作権法114条3項の損害額とする。5万円×12回=60万円
  3. 被告Yの公衆送信及び地方ネットワーク局の公衆送信におけるXの著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害による損害額(慰謝料)は、10万円である。
  4. 弁護士費用は、30万円である。合計100万円の損害賠償を命じた。

Aの写真を複製し、又は公衆送信してはならない。原告のその余の請求を棄却する。

米国在住の原告であるからか4521万円の請求を行った。だが判決は、100万円であった。被告は著作権法41条時事の事件の報道である、との主張をしたか。

2ちゃんねる削除義務放置事件

インターネットの運営者はどんな責任があるかが論ぜられた事件である。

東京高裁平成17年3月3日判決(平成16(ネ)第2067号、判時1893号126頁。)
東京地裁平成16年3月11日判決(平成15年(ワ)第15526号)

 インターネットの運営者は、どういう責任を負うか、という事件である。
書籍に掲載された対談記事(原告ら2名が著作権共有)が、ある利用者によりそのまま「2ちゃんねる」に転載され、送信可能化され、アクセスした者に自動公衆送信された。
対談者の1人が、「2ちゃんねる」の運営者に対し、「運営者は著作権侵害を行っている」との警告をし、対談記事の削除を求めて、訴えた。
 原告は、対談記事の発言者、被告は、「2ちゃんねる」の運営者である。

[東京地裁]

  1. 裁判所は、自動公衆送信又は送信可能化差止請求について、相手方が、現に侵害行為を行う主体となっているか、あるいは侵害行為を主体として行うおそれのある者に限られる。被告は、書き込みの内容をチェックしたり、改変したりすることはできず、運営者である被告は、侵害行為を行う主体でない、とした。
  2. 発言者から削除要請があるにも拘わらず、ことさら電子掲示板設置者が要請を拒絶したりすれば、著作権侵害の主体と観念され、差止請求も許容されようが、本件ではその事情はない。プロバイダー責任制限法に照らし、本件では、被告が送信防止装置を講じた場合、同法による発信者に対する損害賠償責任が免責される場合に当たらない、発信者から責任追及されるおそれあり、また被告に送信可能化又は自動公衆送信を止める義務なし。

 原告敗訴。原告控訴。

[東京高裁]
2審では、逆転し、原告が勝訴した。
(1),電子掲示板の設置者は、書込まれた発言が著作権侵害(公衆送信権侵害)に当たるとき、侵害行為を放置しているときは、放置自体が著作権侵害行為と評価すべき場合がある。電子掲示板の運営者は、著作権侵害となる書込みがあったと認識した場合、適切な是正措置を速やかにとる義務がある。著作権侵害が極めて明白な場合、ただちに削除するなど、速やかに対処すべきである。本件の場合、被告は、本件発言がデッドコピーで、著作権侵害と容易に理解し得た。発言者に照会もせず、是正措置をとらなかった。被告は、故意過失により著作権侵害に加担したと評価できる。原告著作権者が、著作権侵害者の実名、メールアドレス等発信者情報を得ることはできず、削除要請が容易であるとは到底言えない。被告は、著作権の侵害者である、とした。

山本隆司「コピライト」2004年8月号20頁は、1審東京地裁判決に対して、17頁にわたり批判的に判例紹介をしている。田中豊も「コピライト」同号7頁(講演録)において東京地裁平成16年3月11日判決に批判的である。草地邦晴・知財管理55巻13号2007頁は、2審東京高裁判決を「貴重な事例を提供するもの」として、好意的である。

ナップスター型音楽ファイル交換事件

インターネットを使って音楽を送受信してもかまわないか。

東京高裁平成17年3月31日判決(判例集未登載)
東京地裁平成15年1月29日中間判決(平成14年(ワ)第4237号。判時1810号29頁、判タ1113号113頁) - 東京地裁平成15年12月17日判決(終局判決、判タ1145号102頁判時1845号36頁)
仮処分、東京地裁平成14年4月11日決定(判タ1092号110頁)

 インターネット上のピア・ツー・ピア(P2P)方式の電子ファイル交換サービスにおいて、ユーザーの間で、音楽著作物を複製して電子ファイルの送受信が行われる。
 これによる著作権侵害が起きる場合において、このサービスの提供者は、どういう責任を負うか。

 被告Y1は、ピアー・ツー・ピア技術を用い、中央サーバー(セントラルポイント、P2Pネトワークの方式の1つでP2Pネットワークを見つけやすくするための入り口として働くホストのこと)を設置し、インターネットを経由して、利用者のパソコンに蔵置されている電子ファイルから他の利用者が好みの音楽のものを選択して、無料でダウンロードできる「ファイルローグ」事業を行っている業者である。
 被告Y2は、Y1の代表者。
 原告Xは、日本音楽著作権協会(JASRAC)である。
原告Xは、被告らに、原告の管理著作物を複製したMP3ファイルを本件サービスにおける送受信の対象とすることの差止めを求めるとともに、Yら2名に対して2億1000万余円の損害賠償金の連帯支払を求めて訴えた。

「東京地裁」 次の点が争われた。

  1. ハイブリッド型P2Pファイル交換サービスのセンターサーバーの提供者が、ユーザーのパソコン間で、直接行われる電子ファイルの送受信の「主体」であるか。
  2. 差止めの対象となる行為の特定方法。
  3. 著作権侵害の主体とプロバイダ責任制限法3条1項「情報の発信者」の関係。
  4. 損害賠償額の認定。

東京地裁平成15年1月29日中間判決および平成15年12月17日判決の結果は、次の通りである。

  1. 1審被告Y1が運営する本件サービスにおいて、Xに無断でXの管理著作物を複製した電子ファイルをユーザーのパソコンの共有フォルダに蔵置した状態で、本件サーバーに接続させる行為は、Xの著作権侵害であり、Y1がその著作権侵害の主体である。
  2. 「送信型パソコンから被告サーバーに送信されたファイル情報のうち、ファイル名または、フォルダ名のいずれかに本件管理著作物の『原題名』を表示する文字及び『アーテイスト』を表示する文字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字、小文字等の表記方法を問わない。姓又は名についてはいずれか一方のみの表記を含む)の双方が表記されたファイル情報に関連つけて、当該ファイル情報に係るMP3ファイルの送受信行為として特定するのが、最も実効性のある方法である。」
  3. Yらは、自らがプロバイダ責任制限法上のプロバイダに該当するので、損害賠償責任を免れると主張したが、Y1は、同法2条4号所定の「発信者」に該当し、同法3条1項による損害賠償責任の免責は適用されない。
  4. 本件サービスにおいて、本件各MP3ファイルが送信可能化ないし自動公衆送信されることによって、原告の受けた使用料相当額の損害額については、特段の事情のないかぎり、本件使用料規程の定める額を参酌して算定するのが合理的である。

しかし、諸事情を考慮し、著作権法114条の4により、2億7932万8000円の概ね10分の1に相当する3000万円(平成3年11月1日から平成14年2月28日までについては概ね10分の1に相当する2200万円)を使用料相当損害額とした。
 裁判所は、JASRAC等のもつ「自動公衆送信権」「送信可能化権」の侵害であるとして損害賠償を命じている。
 このように被告のようなファイル交換サービス事業者は、単に電子ファイルの送受信に必要なファイル情報を提供しているに過ぎないが、管理性があり、営業上の利益を得ていることから、著作権、著作隣接権の侵害行為の主体であるとした。

関係者にとって重要な判例である。

[参考文献]
平嶋竜太・ファイルローグ事件(中間判決)「サイバー判例解説」(商事法務・2003年)60頁。富岡英次・判タ1154号188頁。
田中豊編「判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講(日本評論社・2010年)209頁、356頁、176頁(市村直也執筆)。紋谷暢男編「JASRAC概論」151頁以下、特に185頁(執筆田中豊)。

YOLニュース見出し事件

インターネット用のニュース記事の見出しは、無断でインターネットに転載できるかということを論じた判決で、1審、2審の判断が分かれた事件である。

知財高裁平成17年10月6日判決(平成17年(ネ)第10049号)
東京地裁平成16年3月24日判決(平成14年(ワ)第28035号、判時1857号108頁判タ1175号281頁)

原告X(読売新聞)は、日刊紙発行を業とする新聞社であるが、ホームページ(Yomiuri On-Line)も運営し、ニュース記事(YOL記事)を載せ、記事に見出しを付している。
被告は、デジタルコンテンツの企画・制作等を業とする有限会社で、インターネット上で、「ライントピックス」というサービスを提供している。

「ライントピックス」とは、自ら運営するウエブサイト上に、ヤフー株式会社の開設するウエブサイト「Yahoo! Japan 」上のニュース記事の見出しと同一の見出しを掲載し、その見出しをクリックすると、見出しに対応するニュース記事本文が表示されるというサービスが提供される。このサービス希望者は、Yサイトにユーザー登録し、指定された手続きを経てYサイトからデータをダウンロードし、自己の管理するウエブサイトニライントピックスを表示させることができる仕組みになっている。
 Xとヤフー株式会社は、Yomiuri On-Line上の主要なニュースの使用を許諾するとの内容の契約を結んでおり、Yahoo! ニュースには、YOL見出しと同一の記事見出しが表示され、同記事見出しをリンクするとYOL記事と同一の記事が表示される。

 Yは、Yahoo! ニュースの記事の中から、重要度関心度の高いニュースを選択し、

  1. Yのライントピックスにおいて、Yahooニュースへリンクを張り、リンクボタンを当該記事見出し(その中にYOL見出しが含まれる)と同一又は実質的に同一の語句とし、
  2. ライントピックス登録ユーザーにLTリンク見出し及びリンク先データを送信して、ユーザーのホームページ上にも、「Yahoo!ニュース」にリンクしたLTリンク見出しが表示されるようにし、

定期的に更新していた。Yは、Xには無断で、YOL見出しを利用したことになった。

Xは、主位的にYの行為は、Xの著作権侵害、予備的に、仮にXの記事見出しに著作物性が認められないとしても、その無断複製等の行為は、不法行為であるとし、Yに対し、記事見出しの複製等の差止等及び損害賠償を求めて訴えた。

[東京地裁判決]

東京地裁民事29部飯村敏明裁判長は、

  1. YOL見出しは、ありふれたもので、創作性が認められず、YOL記事で記載された事実を抜き出して記述したもので、著作権法10条2項の「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」に当たるとして、著作物性を否定、著作権侵害を否定した。
  2. 著作権法等によって排他的な権利が認められない以上、第三者が利用することは自由で、不正に自らの利益を図る目的により利用した場合あるいはXに損害を加える目的により利用する等の特段の事情のない限り、インターネット上に公開された情報を利用することは、合法であるとし、不法行為を構成しないとして、Xの請求を棄却した。

[知財高裁判決]

控訴審において、控訴人Xは、

  1. 著作権侵害(YOL見出しの複製権侵害及び公衆送信権侵害、並びにYOL記事の複製権侵害)を理由とする差止請求及び損害賠償請求(使用料相当額480万円)
  2. 不正競争防止法2条1項3号の不正競争行為を理由とする差止請求及び損害賠償請求(使用料相当額480万円)
  3. 不法行為を理由とする差止請求及び損害賠償請求(使用料相当額480万円のほか無形侵害1000万円、弁護士費用1000万円、合計2480万円)

の請求をした。
知財高裁4部塚原朋一裁判長は、1.YOL見出しの著作物性について、おおむね原審と同一の判断をした。

2.不法行為について、これを肯定した。次のように述べた。
「本件YOL見出しは、控訴人の多大の労力、費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること、著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの、相応の苦労・工夫により作成されたものであって.簡潔な表現により、それ自体から報道される事件等のニュースの概要について、簡潔な表現により、それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること、YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば、YOL見出しは、法的保護に値する利益となり得るものというべきである。」そう述べた上で、「一方、前認定の事実によれば、被控訴人は、控訴人に無断で、営利の目的をもって、かつ、反復継続して、しかも、YOL見出しが作成されて間もないいわば情報の鮮度が高い時期に、YOL見出し及びYOL記事に依拠して、特段の労力を要することもなくこれらをデッドコピーないし実質的にデッドコピーしてLTリンク見出しを作成し、これらを自らのホームページ上のLT表示部分のみならず、2万サイト程度にも及ぶ設置登録ユーザーのホームページ上のLT表示部分に表示させるなど、実質的にLTリンク見出しを配信しているものであって、このようなライントピックスが控訴人のYOL見出しに関する業務ろ競合する面があることも否定できないものである。そうすると、被控訴人のライントピックスサービスとしての一連の行為は、社会的に許容される限度を超えたものであって、控訴人の法的保護に値する利益を違法に侵害したものとして不法行為を構成する」

非常に難しい問題であるが、筆者は2審判決を支持したい。

[参考文献]
前田哲男・著作権判例百選「第4版」10頁。茶園成樹・知財管理56巻7号1063頁。蘆立順美・コピライト521号60頁。奥邨弘司・著作権研究31号81頁。

「録画ネット」事件

日本のテレビ番組をインターネットにより、海外の日本人が視聴できる仕組みが、著作隣接権侵害とされた事例である。

知財高裁平成17年11月15日決定(平成17年(ラ)第10007号)
東京地裁平成17年5月31日決定(判タ1187号335頁)
東京地裁平成16年10月7日決定(平成16年(モ)第15793号判時1895号120頁判タ1187号335頁)

 海外諸国へ転勤し、その外国で働く日本人は、日本で放映されている日本のテレビ番組をどうしても観たいと思っている。その希望を叶えたいとAという事業者が考えた。
A(有限会社エフエービジョン)は、「録画ネット」の名称で、インターネット回線を通じて、テレビ番組の受信・録画機能を有するパソコンを操作して、日本で録画されたファイルを、海外の邦人の自宅等のパソコンに転送できる環境を提供する方法により、海外など遠隔地居住の日本人が日本のテレビ番組を視聴できるサービスを提供しようとした。

サービスとは、次の通りである。

  1. Aが利用者ごとに1台づつ販売したテレビチューナー付のパソコンをAの事務所内に設置し、テレビアンテナを接続するなどして、放送番組を受信可能な状態にする。
  2. 各利用者はインターネットを通じて、テレビパソコンを操作して録画予約し、録画されたファイルを海外の自宅のパソコンへ転送して貰う。

放送事業者(NHKなど)は、Aの行為は、NHKなどの放送を複製するもので、放送事業者の有する著作隣接権侵害(放送に係る音又は映像の複製権)(著作権法98条)であるとして、本件サービスによる放送の複製の差止を求める仮処分を求めた。

争点は、次の通り。

  1. 放送事業者側の主張。
    1. 本件サービスは、専ら利用者に放送番組をその無断複製物により視聴させるおのだ。
    2. 放送番組の複製は、Aの管理・支配下で行われている。
    3. このサービスで、Aは、直接利益を得ている。複製主体は、Aと評価すべきである。
  2. Aの主張。
    1. 本件サービスは、テレビパソコンの販売とそのハウジングサービス(寄託、インターネット接続、保守)であり、利用者は、自己のパソコンで、適法な私的複製(著作権法30条)をしている。
    2. 本件サービスにおける放送番組の複製行為は、Aの管理・支配下で行われていない。
    3. Aが得ているのは、テレビパソコンの対価とその保守管理費用で、複製のサービスによる対価でない。要するに複製主体は、利用者であるとした。

東京地方裁判所民事40部賴晋一裁判官は、平成16年10月7日、NHKの請求を認容する仮処分決定をした。
「本件サービスにおける複製は、債務者の強い管理・支配下において行われており、利用者が管理・支配する程度はきわめて弱い」「より具体的にいえば、本件サービスは、解約時にテレビパソコンのハードウエアの返還を受けられるという点を除き、実質的に、債務者による録画代行サービスと何ら変わりがない。債務者が主張する、テレビパソコンの販売とその保守管理というのは、本件サービスの一部を捉えたものにすぎず、サービス全体の本質とはいえない。」「本件サービスにおいて、複製の主体は債務者であると評価すべきである」とした。

Aは、この決定に対し、異議を申し立てたが、上級審は、この仮処分を認可する決定を行い、東京地裁平成16年10月7日決定を是認した。カラオケ法理(ア、管理支配の帰属、イ、利用による利益の帰属)によって、A(抗告人)は、敗訴した。

この一連の判決は重要なものである。

[参考文献]
相澤英孝「知的財産法判例の動き」(『ジュリスト』1313号)276頁は、「特定の記録媒体から利用者の機器への送信は公衆送信とはいえないので、記録媒体を管理している者の行為を複製権の侵害とすることによって著作隣接権の効力を及ぼしたものと理解される。」とする。

スメルゲット事件

ホームページ上の広告販売用商品写真について、1審は著作物性を認めず、2審は、著作物性を認め、1万円の損害賠償を認めた事例である。

知財高裁平成18年3月29日判決(平成17年(ネ)第10094号判タ1234号295頁)
横浜地裁平成17年5月17日判決(平成16年(ワ)第2788号)

平成13年頃、Aは、シックスハウス症候群対策品である「スメルゲット」及び「ホルムゲット」の広告販売をインターネット上で行っていて、ホームページにおいて、その商品の写真(本件写真)を掲載し、「川崎市に住むKさん一家は、県営住宅に当選し、新築の団地に引っ越ししました。すると間もなく6歳の娘がアトピー性皮膚炎にかかり、極度のアレルギー体質となってしまいました」といった文章を掲載した。
インターネット上で、商品販売を行うY1(株式会社プラスマークス)及び被告Y2(有限会社)は、平成14年11月から平成15年6月27日まで、本件写真を文章とともにAに無断で、自社のホームページに掲載した。
平成16年、Aは、X(有限会社トライアル)へ営業権を譲渡した。
Xは、Yらに対し、本件写真と文章について、複製権ないし翻案権を侵害したとして、損害賠償60万円及び慰藉料150万円を求めて訴えた。

[横浜地裁]
1審は、本件写真の著作物性および文章の著作物性を認めず、請求棄却。

[知財高裁]
2審の塚原朋一裁判長は、

  1. 本件写真の著作物性を認め、
  2. 文章については、創作性がない部分について同一性があるが、各文章について、複製権ないし翻案権について侵害はない、

とし、YらはXへ、連帯して1万円及びこれに対する平成15年6月28日から支払済みまでの年5分の金員を支払えとの判決を下した。

1審と2審の判断が異なった事例である。

[参考文献]三浦正広・コピライト2006年9月号43頁。

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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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