大家重夫の世情考察

タグ「著作権侵害」が付けられている判例

外務省デンバー元総領事肖像写真無断放送事件

被告日本テレビが、原告X作成のウエブサイト掲載のA元デンバー総領事の写真を、X及びAに無断で、放送し、100万円の損害賠償が認められ、複製及び公衆送信が禁止された事件である。

東京地裁平成16年6月11日判決(平成15年(ワ)11889号、判時1898号106頁)

原告Xは、アメリカ合衆国コロラド州デンバー市において、在米邦人向けの日本語新聞を発行する新聞社を経営し、ホームページを開設し、また写真家としても活動している。
被告Y(日本テレビ)は、放送法に基づき、一般放送事業、放送番組の企画、制作、販売等を行う株式会社で、キー局と言われる大放送局である。

Yは、平成13年7月当時、外務省の不祥事に関連する報道の一環として、その制作した報道番組において、原告X作成のウエブサイト上に掲載のXの友人である元デンバー総領事であったAの肖像写真を、XおよびAに無断で、ウエブサイトから採り、放送した。
Xは、Aの肖像写真は、著作物であるとし、Xの著作権侵害であるとし、損害賠償等を求めて訴えた。すなわち、Xは、Yに対し、写真の著作権(著作権法21条の複製権、同23条の公衆送信権)及び著作者人格権(同法19条の氏名表示権、同法20条の同一性性保持権)を侵害されたとして、

  1. 4521万円の損害賠償
  2. 上記写真の複製・公衆送信の差止め(同法112条1項)
  3. 上記写真及び上記写真が撮影された録画テープの廃棄(同法112条1項)
  4. 被害回復措置としての謝罪放送及び謝罪広告(同法115条)

を求めた。

東京地裁(三村量一裁判長、松岡千帆、大須賀寛之裁判官)は、次のように判断した。

  1. 被告が本件著作物(Aの同意を得て撮影されたAの肖像写真)が使用された各番組を原告Xの同意を得ずに公衆送信する行為は、公衆送信権の侵害である。
  2. 侵害による損害額は、キー局となる被告Yが1回公衆送信(放送)し、ネット局である各地方ネットワーク局が同時に公衆送信(放送)するに当たり、5万円を著作権法114条3項の損害額とする。5万円×12回=60万円
  3. 被告Yの公衆送信及び地方ネットワーク局の公衆送信におけるXの著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害による損害額(慰謝料)は、10万円である。
  4. 弁護士費用は、30万円である。合計100万円の損害賠償を命じた。

Aの写真を複製し、又は公衆送信してはならない。原告のその余の請求を棄却する。

米国在住の原告であるからか4521万円の請求を行った。だが判決は、100万円であった。被告は著作権法41条時事の事件の報道である、との主張をしたか。

「がん闘病記」医師ネット転載事件

医師が患者が月刊誌に掲載したがん闘病記事 を、患者に無断で、医師がクリニックのホームページに掲載し、医師が著作権(複製権、公衆送信権)侵害及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害に問われた事例である。

東京地裁平成22年5月28日判決(平成21年(ワ)第12854号)

 原告Xは、平成14年、末期の子宮頸がんを宣告されたが、化学療法、外科療法等により治癒した者である。
 被告Yは、平成16年4月21日から平成20年3月18日まで、Xを診療、治療を実施したYクリニックを経営する医師である。

 Xは、平成18年1月頃から、体験を基に、「がん闘病マニュアル」を執筆をはじめて、月刊誌「がん治療最前線」に平成18年10月号(8月発売)から、20回にわたって連載し、のち単行本にした。
 Yは、平成17年に、Yクリニックのホームページを開設していたが、Xの記事の4回目(平成19年1月号)から10回目連載の分及び18回連載分の本文部分を、ホームページの「漢方コラム」欄に転載した。
 Xは、Yへ平成20年9月16日、Yの転載中止を求め、Yは、同年9月末日までに、転載記事を削除した。
平成21年、Xは、Yに対し、著作権侵害、著作者人格権侵害、プライバシー権侵害及び名誉権侵害で、1250万円の損害賠償を求めて提訴した。

[東京地裁]
民事40部の岡本岳裁判長は、次のように判断した。

  1. Yは、Xの文章をインターネット、ホームページに転載するについて、Xの許諾を得たと主張しているが、転載についてXが許諾した事実は認めることができないとした。
  2. Yは、本件転載は、著作権法32条1項の「引用」に当たる、と主張したが、これを認めなかった。著作権(複製権、公衆送信権)侵害を認めた
  3. Yは、Xに無断で、Xを「子パンダ」と表示したことは、Xの氏名表示権の侵害で、Xの文章を転載の際、リード文を切除し、本文のみを転載したが、これは、同一性保持権の侵害であるとした。
  4. Xは、プライバシー権侵害を主張したが、Yの転載記事は、Xが公開した事実の範囲内であり、認めなかった。Xは、Yの転載によりXの名誉権が侵害されたと主張したが、名誉権侵害は、認められないとした。
  5. Xの著作権(複製権、公衆送信権)侵害による財産的損害額について、損害額は利用許諾料の額とし、21万6000円(1頁12000円×18頁)とした。
     著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)侵害を慰藉する額として、15万円、弁護士費用5万円とした。

「判決主文」
1,被告は、原告に対し、41万6000円及びこれに対する平成21年4月25日から支払い済みまで年5分の割合の金員を支払え。(あと省略)」

患者に無断で医師が患者の著作物を転載したということは、相互の信頼関係が失われていたということである。

データSOS事件

ウエブサイトの文章が類似するが、著作権侵害に当たらない、とされた事件である。

知財高裁平成23年5月26日判決(平成23年(ネ)第10006号判時2136号116頁判タ1386号322頁)
東京地裁平成22年12月10日判決(平成20年(ワ)第27432号)

[東京地裁判決]
 原告は、コンピュータの保守、管理、コンピュータにおいて、バックアップされていないデータがコンピュータ上で出力できなくなった場合、そのデータをコンピュータ等から取り出して復元するサービスの請負などを行う会社である。
原告は、2006年10月から12月にかけて、データ復旧サービスを一般に周知させ、顧客を誘引するためウエブページを創作し、これを自社のウエブサイトに「データSOS」の題名で掲載し、その後も文章を推敲、改良し、2007年4月28日、データ復旧サービスに関するウエブページを完成させた。
 被告は、コンピュータ機器開発販売会社である。被告も被告のウエブサイトにデータ復旧サービスに関する文章を掲載した。
 原告は、被告の文章は、原告の文章の著作権侵害であるとして、訴えた。

すなわち、原告は、

  1. 主位的に、被告の行為は、原告のウエブページにコンテンツ又は広告用の文章の複製又は翻案であるとして、原告の著作権侵害(複製権、翻案権、公衆送信権、二次的著作物に係る利用)及び著作者人格権(氏名表示権、著作権法113条6項のみなし侵害)を侵害する行為であるとして、損害賠償1650万3562円及び遅延損害金、著作権法115条に基づく謝罪広告を求め、
  2. 予備的に、被告行為は、一般不法行為に当たる

として、1,と同額の損害賠償金及び遅延損害金、民法723条に基づく謝罪広告を求めた。

東京地裁民事40部岡本岳裁判長は、次のように述べて、原告の請求を棄却した。

  1. 原告は、被告が(原告の)どの部分の著作権を侵害したか主張していない。
  2. 原告の広告用の文章作成者の個性が現れていなく、原告の文章の創作性がない部分において、被告の文書と同一であるにすぎない。
  3. 被告文章が著作権侵害でなく、翻案権侵害でない以上、著作者人格権の侵害もない。
  4. 一般不法行為について、被告文章が原告文章に依拠して作成されたとしても、被告の行為は、公正な競争として社会的に許容される限度を逸脱した不正な競争行為として不法行為を構成すると認められない、とした。

[知財高裁判決]
知財高裁第4部は、次のように判断し、控訴を棄却した。

  1. 被控訴人がウエブサイトに掲載したデータ復旧サービスに関する文章が、控訴人がウエブサイトに掲載したコンテンツ又は広告用文章に係る控訴人の著作権(複製権、翻案権、二次的著作物に係る公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)の侵害にも、著作権法113条6項のみなし侵害)にも当たらない。
  2. 被控訴人が控訴人の広告と同一ないし類似の広告をしたからといって、被控訴人の広告について著作権侵害が成立せず、他に控訴人の具体的な権利ないし利益の侵害が認められない以上、不法行為が成立する余地はない。
平成25年のナビキャスト事件(東京地裁平成25年9月12日判決)は、入力フォームのアシスト機能に係るサービスの説明資料が類似しているという事件で、原告資料が著作物であるとされ、原告が勝訴している。この事件で、原告は、「個性が現れている文章」、「創作性がある文章」にすべきであった。ウエブサイト上の図表について、著作物の主張をしたが、図形の著作物、編集著作物、データベースの著作物でもないとされた東京地裁平成22年12月21日判決(2010-11)がある。

ロクラクII事件

インターネット通信によるTY番組ネット送信サービスは、著作権侵害、著作隣接権侵害か、という事件である。

知財高裁平成24年1月31日判決(判時2141号117頁。)
最高裁第一小法廷平成23年1月20日判決(民集65巻1号399頁判時2103号128頁判タ1342号100頁)
知財高裁平成21年1月27日判決(平成20年(ネ)第10055号、10069号)
東京地裁平成20年5月28日判決(判時2029号125頁判タ1289号234頁)

[東京地裁]
原告は、日本放送協会、日本テレビ放送網(株)、(株)静岡第一テレビ、(株)東京放送、静岡放送(株)、(株)フジテレビ、(株)テレビ静岡、(株)テレビ朝日、(株)静岡朝日テレビ、(株)テレビ東京である。
 被告は、(株)日本デジタル家電である。

被告は、「ロクラクIIビデオデッキレンタル」という名称の事業を始めようとした。
日本国内で放送されるテレビ番組を複製し、被告のそのサービスの利用者が海外で視聴できるようにしたものである。
すなわち、ハードデイスクレコダー2台のうち、1台(親機)を日本国内に置き、受信するテレビ放送の放送波を親機に入力するとともに、これに対応するもう1台(子機)を利用者に貸与又は譲渡することにより、当該利用者をして、子機を操作する。
親機ロクラクは、インターネット通信機能付き地上アナログ放送用TVチユーナー内蔵ビデオ録画装置をもち、テレビ番組を複製、複製した番組データを子機ロクラクに送信し、子機ロクラクは、インターネット上、親機ロクラクに録画を指示し、親機ロクラクから録画データの送信を受け、これを再生する。利用者は、子機ロクラクで、番組データを再生して、テレビ番組を視聴する。

 原告であるNHK、放送会社は、この被告の行為は、原告らが著作権を有する番組を複製し、又は原告らが著作隣接権を有する放送に係る音又は映像を複製する行為に当たるから、原告らの著作権(複製権=法21条)、又は著作隣接権(複製権=法98条)を侵害するとして、対象番組の複製等の差止、本件対象サービスに供されているハードデスクレコダーの廃棄及び逸失利益等の損害賠償を求めた。
東京地裁民事29部清水節裁判長は、「クラブキャッツアイ事件最高裁判決等を踏まえ」(筆者注、本稿、「クラブキャッツアイ事件」最高裁1988年3月15日判決参照)、被告の提供するサービスの性質に基づき、支配管理性、利益の帰属等の諸点を総合考慮し、被告が本件番組等の複製行為を管理支配しており、それによる利益も得ているとして、被告の侵害主体性を肯定し、原告の著作権又は著作隣接権を侵害しているとし、対象番組の著作物の複製禁止、対象番組の放送に係る音又は影像を録音又は録画の禁止、別紙目録記載の器具の廃棄、NHKへ、226万円、静岡第一テレビへ88万円、日本テレビへ33万円などの判決を下した。被告が控訴し、原告らが附帯控訴した。

[知財高裁]
知財高裁田中信義裁判長は、1審判決と異なる判断を下した。被告(控訴人)は、利用者が私的複製を行う環境を提供しているに過ぎず、主体性はないとした。

知財高裁は、

  1. 本件サービスの目的、
  2. 機器の設置・管理、
  3. 親機ロクラクと子機ロクラクとの間の通信の管理、
  4. 複製可能なテレビ放送及びテレビ番組の範囲、
  5. 複製のための環境整備、
  6. 被告が得ている経済的利益を総合

すれば、被告が本件複製を行っていることは明らかで有る旨主張する原告らの主張に即して、検討の上、「本件サービスにおける録画行為の実施主体は、利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず、被告が提供するサービスは、利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境、条件等を提供しているにすぎない」として、被告の侵害主体性を否定した。
クラブキャッツアイ事件最高裁判決については、「上記判例は、本件とは事案を異にする」とした。第1審判決中、被告(控訴人)敗訴部分を取消し、原告らの請求をすべて棄却した。原告らが、上告及び上告受理申立をした。

[最高裁]
最高裁(金築誠志裁判長、宮川光治、櫻井龍子、横田尤孝、白木勇裁判官)は、次のように述べて、原審の判断と異なる判断をし、知財高裁に差し戻した。
「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて、サービスを提供する者が、その管理、支配下において、テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて、当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合、その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても、当該サービスを提供する者はその複製の主体と解すべきである。」と述べて、テレビ番組の録画転送サービスにおいて、一定の状況があれば、サービス提供者は複製の主体となることを示し、本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく、テレビ番組等の複製をしているのは、被告ではない、とした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、本件を知財高裁に差し戻した。

[金築誠志裁判官の補足意見]
金築裁判官は、「カラオケ法理」は、「法概念の規範的解釈として、一般的な法解釈の手法の一つにすぎず、特殊な法理論でなく、考慮されるべき要素も行為類型により変わりうる。録画の指示が利用者によってなされるという点にのみ、重点を置くのは相当でない。本件システムを単なる私的使用の集積とみることは、実態に沿わない。著作権侵害者の認定に当たっては、総合的視点に立って行うことが著作権法の合理的解釈である」とした。

[知財高裁]
知財高裁第3部(飯村敏明裁判長、八木貴美子、知野明裁判官)は、上告審において示された判断基準に基づいて、詳細な事実認定を行った。
その上で、インターネト通信による親子機能を有する機器を利用して、海外等において、日本国内の放送番組等の複製又は視聴を可能にするサービスについて、被告であるサービス提供者が、放送番組等の複製の主体であるとした。
放送事業者の著作権及び著作隣接権の侵害をしているとして、原告らの放送番組等の放送回数、平均視聴率、本件サービスの契約数等を斟酌し、著作権法114条の5により、「相当な損害額」を認定した。著作権侵害の損害額は、1番組当たり3万円から24万円。
著作隣接権侵害の損害額は、1社あたり、80万円から400万円と認めた。

知財高裁平成21年1月27日判決は、このサービスの利用者が録画の指示をださなければ、録画が実行されることはないので、利用者を複製の主体とし、この判決は注目された。しかし、最高裁は、この判決を認めなかった。

[参考文献]
『ジュリスト』1423号(2011年6月1日号)(特集まねきTV]/ロクラクII最判のインパクト)。小泉直樹「まねきTV・ロクラクII最判の論理構造とインパクト」『ジュリスト』1423号6頁、田中豊「利用(侵害)主体判定の論理ー要件事実論による評価」『ジュリスト』1423号12頁。上原伸一「放送事業者の著作隣接権と最高裁判決のインパクト」ジュリスト1423号19頁。奥邨弘司「米国における関連事例の紹介ー番組リモート録画サービスとロッカーサービス の場合」『ジュリスト』1423号25頁。「ロクラクII最高裁判決の解説及び全文」『ジュリスト』1423号38頁。
横山久芳「自炊代行訴訟判決をめぐって」ジュリスト1463号36頁。

「まねきテレビ」事件

日本のテレビ番組をインターネットにより、海外の日本人は視聴できるか。

知財高裁平成24年1月31日判決(平成23年(ネ)第10009号)
最高裁平成23年1月18日判決(民集65巻1号121頁、判時2103号124頁、判タ1342号05頁)
知財高裁平成20年12月15日判決(平成20年(ネ)第10059号判時2038号110頁)
東京地裁平成20年6月20日判決(平成19年(ワ)第5765号)

 海外の日本人がインターネット回線を通じて、日本のテレビ番組を鑑賞できるよう日本に居住するAが事業を始めた。
 Aは、コンピュータ、その付属機器の製造販売、電気通信事業法に基づく一般第2種電気通信事業等を目的とする会社である。
Aは、「まねきTV」という名の、インターネット回線を通じてテレビ番組が視聴できるサービスを入会金3万1500円、毎月5040円で、提供しようとした。サービスとは、利用者が購入したソニー製の「ロケーション・フリー」という機器をAの事務所に置いて、インターネット回線に常時接続する専用モニター又はパソコンで、海外の利用者が、インターネット回線を通じてテレビ番組を視聴できるようにするものである。
ロケーションフリーという機器は、地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し、受信する放送をデジタル化し、このデータを自動的に送信する機能を有する機器(ベースステーション)を中核的なものとした機器である。
原告B(NHK,TBSなど)は、放送局である。Bは、Aの事業は、放送局(放送事業者)に無断で、そのテレビ番組を放送する権利すなわち公衆送信権又は送信可能化権を侵害するとして、訴えた。

[東京地裁]
 1審東京地裁は、Bの請求を棄却し、Aは勝訴した。
理由は、

  1. ベースステーションが自動公衆装置に該当すれば、送信可能化権侵害になるが、そのためには、送信者にとって当該送信行為の相手方が不特定または、特定多数の者に対する送信をする機能を有する装置が必要である。ところで、ベースステーションの所有者が利用者であり、サービスを構成する機器類は汎用品で、特別なソフトウエアは用いられていない。従って、ベースステーションによる送信行為は、各利用者によってなされるものだ。ベースステーションは、1対1の送信をする機能で、自動公衆送信装置に該当しない、送信可能化権侵害は認められない。
  2. 自動公衆送信しうるのは、デジタル化された放送で、アナログ放送のままではインターネット回線で送信できない。アナログ放送をベースステーションに入力することは自動公衆送信し得るようにしたものでない。アンテナから利用者までの送信全体が公衆送信(自動公衆送信)に当たらず、公衆送信権侵害は認められない

とし、原告の請求を棄却した。

[知財高裁]
 2審知財高裁は、

  1. 送信可能化とは、自動公衆送信装置の使用を前提とする。
    本件では、各ベースステーションは、あらかじめ設定の単一の機器あてに送信する1対1の送信を行う機能を有するに過ぎない、自動公衆送信装置とはいえない。利用者がベースステーションに放送を入力するなどして、放送を視聴しうる状態に置くことは、放送の送信可能化に当たらない、送信可能化権侵害は認められない。
  2. ベースステーションが自動公衆送信装置に当たらないとすれば、本件サービスにおけるベースステーションからの送信が自動公衆送信としての公衆送信行為にも該当せず、ベースステーションについても送信可能化行為がなされているともいえない。公衆送信権侵害も認められない。

[最高裁]
 最高裁は、次のように述べて事件を知財高裁へ差し戻した。

  1. 公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は、これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても、当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは、自動公衆送信装置に当たる。
  2. 自動公衆送信が、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としているが、当該装置が受信者からの求めに応じて情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者が、その主体である。
    当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており、これに継続的に情報が入力されている場合には、当該装置に情報を入力するする者が送信の主体である。

 2審では、

  1. ベースステーションを自動公衆送信装置と認めなかったが、最高裁は、自動公衆送信装置と認めた。
  2. 2審では、利用者が主体であるとしたが、最高裁は、ベースステーションをその事務所に置き、管理し、ベースステーションに放送の入力をしているAを主体とした。

[知財高裁]
知財高裁は、本件放送の送信可能化及び本件番組の公衆送信行為の各差止を求める原告(NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)らの請求には理由があり、被告に対し、著作権及び著作隣接権侵害による損害賠償の支払いを求める原告らの請求も一部理由があるとし、次の判決を下した。

主文

  1. 原判決を取消す。
  2. 被告は、別紙目録記載のサービス(まねきTV)において、別紙放送目録記載の放送(NHKなどが放送波を送信して行う地上波テレビ放送)を送信可能化してはならない。
  3. 被告は、別紙サービス目録記載のサービスにおいて、別紙放送番組目録記載の番組(NHK「バラエテイー生活百科」など)を公衆送信してはならない。
  4. 被告は、原告NHKへ、50万9204円支払え。
  5. 被告は、原告日本テレビ、原告TBS、原告テレビ朝日、原告テレビ東京へ、それぞれ24万0663円支払え。
  6. 被告は、原告フジテレビへ、20万6517円支払え。
  7. 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

知財高裁は、ベースステーションに本件放送の入力をしている者は、被告であり、ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被告であり、本件放送の送信可能化の主体は、被告である。被告の本件サービスによる本件放送の送信可能化は、原告らの送信可能化(著作隣接権)侵害、本件番組の公衆送信は、原告らの公衆送信権(著作権)侵害であるとした。

重要な判決で、多くの判例批評がある。

[参考文献]
島並良「自動公衆送信の主体」(「平成23年年度重要判例解説」281頁。
『ジュリスト』1423号(2011年6月1日号)(特集まねきTV/ロクラクⅡ最判のインパクト)小泉直樹「まねきTV・ロクラクⅡ最判の論理構造とインパクト」『ジュリスト』1423号6 頁、田中豊「利用(侵害)主体判定の論理ー要件事実論による評価」『ジュリスト』1423号12頁、上原伸一「放送事業者の著作隣接権と最高裁判決のインパクト」『ジュリスト』1423号19頁、奥邨弘司「米国における関連事例の紹介ー番組リモート録画サービスとロッカーサービス の場合」『ジュリスト』423号25頁、「まねきTV最高裁判決の解説及び全文」『ジュリスト』1423号32頁。最高裁判決について、岡邦俊「ロケーションフリー」テレビへの入力者は送信可能化権の侵害主体である。」『JCAジャーナル』2011年4月号62頁。山田真紀最高裁調査官・Law & Technology 51号95頁

「釣りゲーム」事件

携帯電話用ゲームの画面表示の類似はどこまで、許されるか、という事件で、1審は、侵害とし、2審は、問題なしとした。

知財高裁平成24年8月8日判決(平成24年(ネ)第10027号、判時2165号42頁)
東京地裁平成24年2月23日判決(平成21年(ワ)34012号)

 原告X(グリー株式会社)は、インターネットを利用した情報サービス等を提供する株式会社である。インターネット上で、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(コミュニテイ型サービス)を提供するインターネット・ウエブサイト「GREE」を携帯電話向け及びパソコン向けに運営している。
 被告Y1(株式会社デイー・エヌ・エー)は、インターネットを利用した各種情報処理サービス及び情報提供サービス、ソフトウエアの企画、開発等及びその代理業等を業とする会社である。携帯電話向け及びパソコン向けにインターネット・ウエブサイト「モバゲータウン」を運営している。
 被告Y2(株式会社ORSO)は、インターネット、コンピュータ、携帯電話、テレビゲーム機器等のシステム開発、コンサルタント業務、ゲームソフトの企画制作、製造販売等の業務を業とする株式会社である。

Xは、2007年、携帯電話向けGREEに、その会員に対し、釣りのゲームの作品「釣り★スタ」(X作品)を公衆送信によって配信した。このX作品は、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、魚を釣り上げた釣果画面が存在する。
 2009年、Y1およびY2は、「釣りゲータウン」という携帯電話機用の釣りのインターネット・ゲーム(Y作品)を共同で製作し、携帯電話機向けのモバゲータウンにおいて、その会員一般に、公衆送信による配信を開始した。このY作品にも、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、釣果画面が存在する。
Y1のモバーゲタウンや、Y2のホームページには、Y作品が掲載されている。
 Xは、1,YらによるY作品の製作及び公衆送信は、X作品の著作権(翻案権、公衆送信権)および著作者人格権の侵害である、Y作品の公衆送信の差止およびモバゲータウンなどウエブサイトからY作品を抹消すること、2,Yらが、Y作品をウエブページに「魚の引き寄せ画面」のY影像を掲載することは、不正競争防止法2条1項1号所定の周知な商品等表示の混同惹起行為に当たるとして、Y影像の抹消を求め、3,YらがY作品を製作し、公衆に送信する行為は、Xの法的保護に値する利益を侵害する民法の不法行為に当たる、と主張し、著作権侵害、不正競争防止法2条1項1号違反、共同不法行為に基づく損害賠償として9億4020万円、4,著作権法等に基づく謝罪広告を求めて訴えた。

東京地裁平成24年2月23日判決は、Y作品の「魚の引き寄せ画面」が、X作品の「魚の引き寄せ画面」を翻案したものである、X作品にかかるXの著作権及び著作者人格権を侵害するとして、Y作品の公衆送信の差止、ウエブサイトの抹消、損害賠償の一部約2億3500万円の支払いを認めた。

 この判決に不服のYらは控訴した。

知財高裁平成24年8月8日判決は、「魚の引き寄せ画面」は、たしかに共通しているが、「ありふれた表現である」か(魚を引き寄せる決定キーを押すタイミングを魚影が同心円の一定の位置にきたときにする)ことにした点は、「アイデア」にすぎない、として、翻案権侵害を否定した。また、「魚の引き寄せ画面」は、不正競争防止法2条1項1号に該当せず、著作権侵害、不正競争行為に該当せず、民法の不法行為も構成しないとした。

 東京地裁判決は、携帯電話向け釣りゲームのX作品は、従来にない、新しいものとし、著作権法で保護しようとしたが、知財高裁は、X作品は、ありふれている、又は著作権法で保護するに値しない単なるアイデアであると判断した。

最高裁第三小法廷は、平成25年4月16日、X側の上告を棄却する決定をした。

非常に難しい問題である。しかし、この2審判決を研究し、多少、類似したゲームを、創作する者が出るかも知れない。

[参考文献]横山久芳「翻案の判断方法」(「平成24年度重要判例解説」267頁)。

漫画家佐藤秀峰事件

漫画家佐藤秀峰の描いた天皇の似顔絵を無断で、画像投稿サイトに投稿したことが著作権侵害及び著作者人格権侵害とされ、50万円の損害賠償が命ぜられた事例である。

知財高裁平成25年12月11日判決(平成25年(ネ)第24571号)
東京地裁平成25年7月16日判決(平成24年(ワ)第24571号)

原告X(佐藤秀峰)は、著名な漫画家であるが、2012年9月、「ブラックジャクによろしく」の二次使用を商用、非商用をとわずフリーにしたことで話題になった。
訴外A(有限会社佐藤漫画製作所)は、Xが制作した作品の著作権の管理等を行う特例有限会社である。

Aは、「漫画on Web」というウエブサイトを運営しているが、販売促進活動の一環として、同サイトで、Xの作品を購入した顧客に対し、その希望する人物の似顔絵をXが色紙に描き、これを贈与するというサービスを提供した。
被告Yは、平成24年3月20日頃、このサイトを通じて、Xの「特攻の島」3巻及び4巻を購入すると共に、Aに対し、Xが描いた昭和天皇及び今上天皇の似顔絵を各1枚贈るよう申し入れ、Xは、これに応じAがYに送付した。
平成24年3月24日、Yは、ツイッターのサイト(以下、本件サイト)に、
「天皇陛下にみんなでありがとうを伝えたい。陛下の似顔絵を描いてくれるプロのクリエータさん。お願いします。クールJAPANなう、です。」
と投稿し、その後、似顔絵のうちの1枚を撮影した写真をTwitpicという画像投稿サイトにアップロードした上、本件サイトに
「陛下プロジェクトエントリーナンバー1,X.海猿、ブラックジャックによろしく、特攻の島」
と投稿し、上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示した。また、Yは、残る1枚の似顔絵についても、上記画像投稿サイトにアップロードし、本件サイトに
「はい応募も早速三通目!…なんとまたXさんの作品だ!なんか萌えますな。萌え陛下。」
と投稿し、上記画像投稿サイトへのリンク先を掲示した(以下、本件行為1)。

これに対しXは、
「お客様のリクエストには極力お応えするのですが、政治的、思想的に利用するのはご遠慮ください。あくまで個人的利用の範囲でお応えしたイラストです。」
と投稿したところ、Yは、
「あ、はいゴメンなさい。賛同していただけるかと思ったのですが、届きませんでしたか…ごめんなさい。消します。」
と投稿し、その後、本件似顔絵の写真を上記画像投稿サイトから削除した。

しかし、Yは、本件サイトに、平成24年3月25日、
「毒をもって毒を制すということで、大手マスコミと同じ手法を取ってみた。」
翌26日
「どんな手を使っても注目を集めて伝えたいことがあるんです。」
「Xさんにも○害予告されましたし、あちこちから狙われてますのでW俺の交友範囲は右から左、官から暴、聖から貧まで幅広いですが、危険情報ばかり流しているので…アブナイJAPANというのに少しまとめてあります…(以下省略)」
と投稿した(以下、本件行為2)。
本件サイト及び画像投稿サイトにおけるYの投稿内容は、Yがブロックした者以外の者に自由に閲覧できた。

Xは、

  1. 本件行為1について、Xの著作権(公衆送信権)侵害である。また、本件行為1は、原告Xの名誉声望を害する方法で著作物を利用する行為であり、著作者人格権侵害である(著作権法113条6項)、
  2. 本件行為2の中で、「○害予告」は「殺人予告」を意味する、XがYに対し殺害予告をしたとの事実を摘示することは、Xの社会的評価を低下させるもので、Xへの名誉毀損であると主張し、平成24年9月、Yを相手に400万円の損害賠償を求め提訴した。

[東京地裁]
民事46部の長谷川浩二裁判長は、本件行為1の著作権侵害による損害額20万円、本件行為1による著作者人格権侵害、及び本件行為2のXへの名誉毀損について、それぞれ15万円(合計30万円)と認定し、Yは、Xへ50万円を支払うよう命じた。
Yは、控訴し、Xは、自らの作品について、著作権フリーの姿勢をみせており、Yには著作権侵害の故意はない、と主張、これに対し、Xは、「自ら制作した特定の作品のみ他人意よる自由な二次利用を許諾したにすぎない」と反論した。

[知財高裁]
第3部の設楽隆一裁判長は、原判決が認容した限度で、理由がある、と1審判決を支持し、本件控訴を棄却した。

佐藤秀峰氏は、マンガの二次利用は、フリーにしたいという気持ちを持っていたと思われるが、自分と違う思想の人の手にかかると、このように「悪用」されるので、考えを改めたかも知れない。「著作権法113条6項」という条文の有用性が証明された。

[参考文献]
判例評釈として、小泉直樹「著作者の名誉声望の侵害」『ジュリスト』2013年10月号6頁、大家重夫「入手した天皇似顔絵を政治・思想目的でウエブサイトに掲載利用した事件」日本マンガ学会ニューズレター36号(2014年1月)8頁。

ナビキャスト事件

入力フォーム紹介の資料は著作物であり、類似サービスの資料が著作権侵害とされ、10万円の損害賠償が命ぜられた事例である。

東京地裁平成25年9月12日判決(平成24年(ワ)第36678号)

 原告X((株)ショーケース・テイービー)は、その業務に関連して、ウエブサイトの入力フォームのアシスト機能に係るサービスである「ナビキャスト」の内容を説明する資料を作成し、ネット上、あるいは紙媒体で、Xの著作の名義で公表した。
 ところが、同様の事業を行っている被告Y((株)コミクス)が、COMIX Inc.の著作名義で「EFO CUBEによる入力フォーム改善・最適化~入力フォームでの離脱を改善します」という資料をネット上で、あるいは紙媒体の印刷物で公表した。

 Xは、Yに対し、

  1. 上記「EFO CUBEによる入力フォーム改善・最適化~入力フォームでの離脱を改善」の営業資料を記録した電磁的記録媒体の記録抹消、又は同資料印刷パンフレット、レジメ等の印刷物の廃棄を求め、
  2. 被告Yは、原告Xへ、1680万円及び訴状到達日翌日から支払済みまでの年5分の金員の支払を求める、

として訴訟になった。

 原告は、原告各資料は、全体として、著作者の個性が発揮され、思想を創作的に表現し、文芸及び学術の範囲に属する言語及び美術の著作物に当たると主張した。
 被告は、原告資料は、特徴的言い回しがなく、表現が平凡で、ありふれている、創作的表現はない、と反論した。

[東京地裁判決]
民事47部の高野輝久裁判長は、次のように述べて、原告の請求を一部認容した。

  1. 差止め及び廃棄等の請求について。
    被告Yは、平成21年8月頃から、「EFO CUBE」のサービスを開始し、上記営業資料を作成し、顧客に頒布、上映していたが、平成24年1月15日、本件訴状の送達を受けて、被告資料の使用を中止し、記録した電磁的記録媒体や被告資料印刷の印刷物を保有している証拠はないので、「原告の差止め及び廃棄等の請求」は理由がないとした。
  2. 損害賠償の請求について。
    1. 原告各資料が著作物に当たるか否か
      「『ナビキャスト』の内容を効率的に顧客に伝えて購買意欲を喚起することを目的として『ナビキャスト』の具体的な画面やその機能を説明するために相関図等の図や文章の内容を要領よく選択し、これを顧客に分かりやすいように配置したもので」「全体として筆者の個性が発揮され」「創作的な表現を含むから、著作物に当たる」とした。
      また、原告Xが、平成20年、訴外A(インターネット広告代理店事業(株)フルスピード)に、ナビキャストフォームアシストの供給の委託等をしたこと、被告Yは、Aから、「〈入力フォーム最適化ツール〉フルスピードEFO」資料の送付を受け、被告Y従業員がこれを修正し、被告資料が完成したことを認め、原告資料に「依拠」したと認定、被告Yは、原告Xの著作権(複製権及び翻案権)侵害したとし、顧客に対し被告資料の頒布上映は、原告の著作権(上映権又は著作権法28条に基づく上映権及び譲渡権又は著作権法28条に基づく譲渡権)侵害するとした。
    2. 被告の代表者は、原告ナビキャスト担当者の訪問を受けて原告資料を入手している。原告資料と被告資料の記載が同一のものがあると知ることができたのに、しなかった被告には過失がある。
    3. 被告資料が「EFO CUBE」の営業で補助的役割であること、著作権侵害部分は、被告資料の38.8%相当にすぎないこと等の理由で、原告損害額は10万円とした。
ウエブページに載せるこういう文章の著作物性が認められた事例である。

プラスチック自動車部品事件

被告らが著作、販売、インターネット上に掲載等をした「自動車プラスチック部品メーカー分析と需要予測」が、原告が著作した「プラステック自動車部品」の著作権侵害ではないとされた事例である。

知財高裁平成26年2月19日判決(平成25年(ネ)第10070号)
東京地裁平成25年7月18日判決(平成24年(ワ)第25843号)

原告Xは、自動車用プラスチックの研究開発、企画、市場開発、営業及びコンサルテイングを業としてきた者で、「プラステック自動車部品」(以下、本件書籍)の著者である。
被告Yは、「自動車プラスチック部品メーカー分析と需要予測」(以下、被告書籍)の著者の1人である。
被告Y2(有限会社シーエムシー・リサーチ)は、被告書籍の発行元である。
被告Y3(株式会社シーエムシー出版)は、被告書籍の発売元である。

Xは、Y1Y2Y3らが共謀して、被告書籍を作成・販売し、被告書籍をインターネット上に掲載している行為は、原告の本件書籍に掲載されている14個の表についての著作権(複製権、譲渡権、公衆送信権)侵害及び著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害であると主張し、

  1. 著作権侵害の不法行為による損害賠償請求権に基づき、Yらに84万円、
  2. 著作者人格権の不法行為による損害賠償請求権に基づき、Y1に対し100万円、Y2に対し、100万円、Y3に対し、50万円、
  3. 著作権法112条1項に基づき、Yらに対し、被告書籍の複製、譲渡、公衆送信の差止め禁止、
  4. 同条2項に基づき、Yらに対し、被告書籍の廃棄及びその電子データを記憶した媒体の廃棄を、
  5. 同法115条に基づき、Yらに対し、別紙告知文の掲載を求めた。

[東京地裁]
民事46部の長谷川浩二裁判長は、原告Xの本件書籍の各表は、自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な形式に整理したものにすぎず、その表現自体は平凡かつありふれたもので、著作物性を認めることはできない、としてXの請求を棄却した。

[知財高裁]
第2部清水節裁判長は、原判決の認定判断を支持し、控訴人Xの請求は、理由がないとし、控訴を棄却した。2審において、Xは、本件書籍の各表が編集著作物であるとも主張したが、アイデアの独創性や記載事項の情報としての価値を述べたに過ぎず、著作権法上の保護対象でないとした。

1審、2審とも、書籍及びその中の表は、著作物性がないとされている。

風俗記事無断マンガ化事件

フリー・ライター執筆のブログ記事を無断でマンガ化にし、これを雑誌に掲載した雑誌発行者と編集プロダクションを訴えたが、ライターがブログで、雑誌社と編集プロダクシヨンを名誉毀損したことで、反訴され、55万円の損害賠償金を得たが、40万円の損害賠償金の支払を命ぜられた事例である。

知財高裁平成27年5月21日判決(平成26年(ネ)第10003号)
東京地裁平成25年11月28日判決(平成24年(ワ)第3677号、第7461号)

原告Xは、風俗記事を書くフリーのライターで、自分のブログ(以下、本件ブログ)を運営している。
被告Y1(株式会社ジーオーテイー)は、「実話大報」という雑誌を出版、販売している出版社である。
被告Y2(有限会社ジップス・ファクトリー)は、Y1から依頼され実話大報の編集等を請け負っている編集プロダクションである。

Xは、自分の本件ブログに「混浴乱交サークル」と題する記事を平成22年7月30日に、「生脱ぎパンテイオークション乱交」と題する記事を平成22年1月10日を掲載した。
Y2は、訴外Aに、これらXの記事に依拠して作画させ、漫画にし、「実話大報」平成23年1月号、同6月号に掲載した。
Xは、平成22年1月6日頃からほぼ1年の間に、本件ブログに、別紙目録記載の記事1ないし6を書き込み、Y1Y2らが著作権侵害をしたとし、Y1が著作権侵害をしたことについて「盗作行為をどう思う」などの投票を行い、投票プログラムを利用して別紙投票プログラム記載のとおりの投票を実施した。
平成24年、Xは、Yらにより、著作権侵害、著作者人格権侵害を受けたとして、Yらに連帯して131万円(著作権侵害16万円、著作者人格権侵害100万円、弁護士費用15万円)の支払いと、雑誌「実話大報」への謝罪広告1回掲載を求めて訴えを起こした。
これに対して、Y1Y2は、(1)Xは、Y1Y2らに、それぞれ、100万円支払え、(2)Xは、別紙目録記載の記事1ないし6の記事及び別紙ブログ記載のブログにおける別紙投票プログラム記載の投票プログラム及びその投票結果を抹消せよ、との反訴を提起した。投票の募集や投票プログラムの記載、投票の実施等が、Y1及びY2の名誉、信用の社会的評価の低下を招いたというのである。

[東京地裁]民事47部の高野輝久裁判長は、次のように判断した。

  1. Y1Y2は、「実話大報」の2回の掲載によりXの記事の著作権(翻案権)侵害をしたとした。
  2. また、Y1Y2が、Xの氏名表示権、同一性保持権を侵害したとした。
  3. 被告らは、原告Xの著作権侵害及び著作者人格権侵害につき、過失があるとした。
    Aから漫画の提供を受けるに当たり、「三行広告」で検索し、調査すべきであったとする。
  4. Xが著作権行使で受けるべき金額は1万円とし、慰藉料として、5万円、弁護士費用6000円、合計6万6000円が相当であるとした。
  5. Xの社会的声望名誉は、毀損されていないとして、謝罪広告は認めなかった。

Y1Y2の起こした反訴について、次の判断をした。

  1. Y1は、Xの本件ブログの記事1,3,4により、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。 
    Y1は、Xの本件ブログの記事5,6により、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。 
    Y1は、Xの本件ブログの投票プログラムにより、名誉、信用等の社会的評価を低下させられた。
    Y2については、記事、投票プログラムによる名誉、信用等の社会的評価の低下を認めなかった。
  2. Xが、Y1の名誉、信用等を毀損したことについて、故意があるとした。
  3. Y1は、40万円の損害を被ったとした。
  4. Y1は、その名誉権に基づき、現に行われている侵害行為を排除するために、本件記事1,3ないし6及び投票プログラム等の記載の削除を求めることができる、とした。

[判決主文]

  1. 被告・反訴原告Y1、Y2は、原告・反訴被告Xに対し、連帯して6万6000円(財産権侵害1万円、慰謝料5万円、弁護士費用6000円)を支払え。
  2. 原告・反訴被告Xは、被告・反訴原告Y1に対し、40万円及びこれに対する平成24年3月28日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  3. 原告・反訴被告Xは、別紙ブログ目録記載のブログにおける別紙記事目録記載1,3ないし6の記事及び別紙ブログ目録記載のブログにおける別紙投票プログラム記載の投票プログラム及びその投票結果を抹消せよ。
  4. 被告・反訴原告Y2の請求並びに原告・反訴被告X及び被告・反訴原告Y1のその余の請求をいずれも棄却する。
  5. (訴訟費用の負担)省略。
  6. この判決は、第1、第2項に限り、仮に執行することができる。

 この判決に対し、Xは、控訴した。
「知財高裁」第4部富田善範裁判長は、Y1Y2は、Xに対し、連帯して55万円(財産権侵害10万円)、慰謝料40万円、弁護士費用5万円)を支払えと、Xの著作権侵害の損害額を1審にくらべ、多額に評価した。

[判決主文]

  1. 原判決を次のとおり変更する。
  2. 1審被告らは、1審原告に対し、連帯して55万円を支払え。
  3. 1審原告は、1審被告ジーオーテイに対し、40万円及びこれに対する平成24年3 月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
  4. 1審原告は、1審被告ジーオーテイーに対し、原判決別紙ブログ目録記載のブログに おける原判決別紙記事目録記載1,3ないし6の各記事を抹消せよ。
  5. 1審原告は、1審被告ジーオーテイーに対し、原判決別紙ブログ目録記載のブログに おける原判決別紙投票プログラム記載1のタイトル、同記載2の選択肢及び同記載3の投票結果を抹消せよ。
  6. 1審原告のその余の本訴請求、1審被告ジーオーテイーのその余の反訴請求及び1審 被告ジップス・ファクトリイーの反訴をいずれも棄却する。
  7. (訴訟費用の負担)省略
  8. この判決は、第2項及び第3項に限り、仮に執行することができる。
原告が自分のブログに掲載した風俗記事が、無断で漫画化され、著作権侵害等が認められ、55万円(1審は6万6000円)を得たが、ブログで、著作権侵害者である出版社を誹謗、名誉権や信用を低下させたとして、40万円の支払いを命ぜられた。原稿料の相場が低いこと、慰藉料については、裁判官の裁量によるところが大きい。
ページトップへ

中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出のイメージ

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出 【2,800円+税】

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社のイメージ

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社 【4,500円+税】

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例のイメージ

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例 【2,800円+税】