大家重夫の世情考察

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エステックサロン対楽天仮処分事件

発信者情報開示請求権を被保全権利とする発信者情報の開示を命ずる断行の仮処分が認められた事例である。

東京地裁平成17年1月21日決定(平成16年(モ)第54824号判時1894号35頁)
東京地裁平成16年9月22日決定(平成16年(ヨ)第2963号判時1894号40頁)

債権者Xは、A又はエステキューズ及びBの名称で、エステックサロンの経営等を業とする株式会社である。
債務者Y(楽天株式会社)は、各種マーケッテイング業務の遂行及びコンサルテイング等を業とし、インフォーシークレンタル掲示板という電子掲示板を開設、インターネットサービスを提供している。

インフォシークレンタル掲示板に、「ベルボーというサポーターが、全部で20万円もするにかかわらず、開封してみると紙1枚だけでどういう仕組みで痩せられるかのか等について全く掲載されておらず、グルメッツという食品に至っては詳しい成分の記載もなく、こんな怪しい商品は今まで見たことがない」といった記事が掲載された(ベルボーもグルメッツもXが販売している商品である。)。
Xは、Yに対して、Yの電子掲示板に対する投稿により、名誉を毀損されたとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報開示に関する法律(以下、プロバイダ責任制限法)4条1項の発信者情報開示請求権を被保全権利として、同投稿にかかるIPアドレス等の開示を求めた。

[平成16年原決定]
平成16年9月22日東京地裁は、Xの申立の内、別紙記事目録1記載番号15(タイトル、返品について),97(まとめて返事),143(Aやめました),178(現社員です),別紙記事目録2記載番号14(最悪でした)については、理由があるとして、これを認容し、その余の申立は、被保全権利の疎明を欠くとして、これを却下した。債務者Yが保全異議を申し立てた。

[平成17年本決定]
民事9部大橋寛明裁判長は、別紙記事目録1掲載番号178及び同目録2掲載番号14に係る発信者情報の開示を命じた部分については、被保全権利の疎明があるとはいえず、不当であるから、これを取消し、その余の部分は正当であるからこれを認可し、債権者の仮処分命令申立は、上記取消に係る部分につきこれを却下した。

電子掲示板においては、化粧品、健康食品などの商品、サービスへの悪口、非難、批評があり、これに対し、信用毀損、名誉毀損で対抗する事例が多い。

眼科医対電子掲示板事件

電子掲示板に医療法人の名誉信用を毀損する書き込みがなされ、医療法人が発信者情報の一部を把握している場合に、プロバイダ責任制限法4条の要件が肯定された事例。

東京地裁平成15年3月31日判決平成14年(ワ)第11665号判時1817号84頁、金判1168号18頁

 原告は、E眼科という名称で全国に眼科病院を運営する医療法人である。
 被告は、インターネット上で、電子掲示板を管理運営する者である。

 訴外のAが、平成14年2月16日、ハンドルネームBを名乗って、本件掲示板に、「E眼科のセミナーにいってきた。投稿者B。あのヤロー他院の批判ばかりだよ。Mが裁判かかえてるて。お前のところは、去年3人失明させてるだろうが!」というメッセージを書き込んだ。
 原告は、少なくともこの情報により1名の患者が手術取消をし営業利益を侵害されたこと、平成13年に患者が3人失明した事実はないこと。原告は、訴外Aと面談し、同人の住所氏名は、入手したこと。これは、名誉毀損、信用毀損であり、損害賠償請求権を行使するため、発信者情報の開示を求めるとし、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(プロバイダ責任制限法)4条の正当な理由があると主張し、被告に開示を求めた。また、原告はすでに訴外Aと面談しているが、Aが、原告と競業関係にある病院を運営する医療法人の理事長が経営する会社の正社員であったことから、医療法人へも損害賠償請求を検討中で、そのため本件発信情報が訴外人の個人のパソコンから発信されたか、勤務先のパソコンからの発信からか、知る必要があるとして、発信者情報の開示を求めて訴えた。

[東京地裁判決]
東京地裁民事6部の高橋利文裁判長は、原告(被害者)が発信者情報の一部を把握し、送信行為自体をおこなった者が特定されているような場合であっても、その余の発信者情報の開示を受けることにより、当該侵害情報を流通過程に置く意思を有していた者すなわち、当該送信行為自体を行った者以外の「発信者」の存在が明らかになる可能性がある、として、発信者情報の開示を受けるべき必要性があるとし、原告の請求を認容した。

平成13年11月22日成立し、平成14年5月27日施行の「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成13年法律第137号)の4条をめぐる初めての裁判例である。動画無断使用事件(東京地裁平成25年10月22日判決平成25年(ワ)第15365号)参照。

[参考文献]
長谷部由紀子「プロバイダ責任制限法による開示命令(1)」『別冊ジュリスト』「メデイア判例百選」179号230頁。

女流麻雀士対2ちゃんねる事件

インターネット上の電子掲示板に書き込まれた発言により名誉毀損された者が、その発言の削除を掲示板運営者に求め、削除しなかったことが、不法行為とされ損害賠償が認められ、また、その発言の削除請求が認容され、しかし、当該発言の発信者情報の開示請求は棄却された事例である。

東京地裁平成15年6月25日判決(平成14年(ワ)第13983号、判時1869号46頁)

原告は、日本プロ麻雀連盟所属の20代の未婚のプロ麻雀士である。
被告は、インターネット上で、閲覧及び書き込みが可能な電子掲示板「2ちゃんねる」の開設者、管理運営者である。

平成14年1月、掲示板に、原告について、「整形しすぎ」「年いくつ誤魔化してんの?」「穴兄弟たくさんいるよ」などの書き込みがなされた。

原告は、

  1. 原告の名誉を毀損する発言等が書き込まれたのに、被告がこれら発言の送信防止措置を講じる義務を怠り、原告の名誉が毀損されるのを放置し、原告が損害を被ったなどとして、原告が被告に対し、民法709条に基づき、706万1000円の損害賠償を求め、
  2. プロバイダ責任制限法に基づき、掲示板に原告の名誉を毀損する発言等の書き込みをした者の情報の開示を求めて

訴えた。

[東京地裁]
民事24部の大橋寛明裁判長は、次のように判断した。

  1. 掲示板への各発言は、名誉毀損にあたる。
  2. 被告が当該発言の送信防止措置を講ずる条理上の作為義務を負う。送信防止措置を講じなかったことは、作為義務違反で、原告に対して不法行為になる。
  3. 被告は、本件発信者の氏名、住所及び電子メールアドレス、発言に係るIPアドレスを保有している証拠はない。従って原告の本件発信者の情報の開示請求は理由がない。
  4. 被告が、発言を削除せず、送信を継続し、原告の名誉を毀損し、名誉感情を侵害した不法行為について、精神的損害を慰藉する賠償金額は、90万円が相当で、弁護士費用10万が相当である。

とした。

発信者情報の開示請求は棄却され、当該発言の削除は認められた事例である。

パワードコム発信者情報開示事件

WinMXによるファイル送信は、「特定電気通信」=(不特定多数の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信)に当たり、特定電気通信の始点は、特定電気通信役務提供者でなくてもよいから、本件ファイル送信が、「特定電気通信」に該当し、被告(株)パワードコムへ、発信者情報開示が命ぜられた事例である。

東京地裁平成15年9月12日判決(平成14年(ワ)第28169号)

原告Xは、ネット上、名誉毀損された者である。
被告Yは、株式会社パワードコムである。

 原告Xは、コンピュータプログラムWinmx を利用して行われた方法で、インターネットを経由した情報の流通で、(ユーザー942)という者が、Xのプライバシーを侵害した文章を書いていることを知った。
ユーザー942は、被告Y提供の通信装置を利用し、Yによって、インターネットプロトコルが付与され、Yは、ユーザー942の住所、氏名に関する情報を保有している。
Yは、Xらから本件発信者情報の開示を請求されたので、ユーザー942に対し、開示を問い合わせたところ、「勘弁して貰いたい」と回答した。YはXへ開示しなかった。
Xは、インターネット接続を提供したプロバイダであるYを被告として、発信者の住所氏名の開示を求めて訴えた。
 裁判で、WinMXによる電子ファイルの送信が、「特定電気通信」か、特定電気通信は、特定電気通信役務提供者が、始点に立つものである必要があるか、について論ぜられた。

[東京地裁]

民事第38部菅野博之裁判長は、次のように判断した。

  1. WinMXによるファイル送信は、プロバイダ責任制限法2条の「特定電気通信」の定義である「不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信」に当たる。
  2. 特定電気通信は、特定電気通信役務者が、その始点に立つものであることを要しない。

「判決主文」

  1. 被告は原告等に対し、平成14年12月6日22時48分ころに「61.204.152.48というインターネットプロトコルアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名及び住所を開示せよ。
  2. 訴訟費用は被告の負担とする。
被告が東京地裁平成15年4月24日判決平成14年(ワ)第18428号(羽田タートルサービス事件)を援用したが、東京地裁は、別件判決であり、そもそもプロバイダ責任制限法のインターネット適用のない事案で、斟酌することはできないと、述べている。ナップ型音楽ファイル交換事件(東京高裁平成17年3月31日判決、東京地裁平成15年1月30日中間判決)は、送信者側コンピュータから受信者側コンピュータに対する電子ファイルの送信において、受信者側ユーザーが、アイデイーやインターネットプロトコルアドレスにより特定されていたとしても、送信側ユーザーから見て「不特定の者」に当たる、とする。
プロバイダについては、一般社団法人日本インターネットプロバイダー協会があり、正会員148,賛助会員6という(2015年6月)。なお、堀之内清彦「メデイアと著作権」(論創社・2015年)256頁。

[参考文献]森亮二・NBL771号(2003年10月15日)6頁。

弁護士対経由プロバイダPRIN事件

氏名不詳者により電子掲示板「2ちゃんねる」に名誉毀損書き込みがなされた弁護士が、プロバイダ責任制限法に基づき、経由プロバイダに対してしたは発信者情報の開示請求が認容された事例である。

東京地裁平成15年9月17日判決(平成15年(ワ)第3992号、判タ1152号276頁)

原告は、航空旅客手荷物運搬等を行う訴外B会社の顧問を務める弁護士である。
被告は、「PRIN」の名称で、インターネット接続サービス等の通信事業を営む株式会社である。

氏名不詳の本件発信者は、被告にインターネットでアクセスし、ウエブサイト「2ちゃんねる」内の電子掲示板に、「最悪のアルバイト会社 Part 7」という名前のスレッドに対し、原告を中傷する内容の記事(合計11本)を投稿した。
訴外B会社は、「2ちゃんねる」の訴外管理者Cを仮処分で訴えた。B会社のCに対する仮処分命令申立事件の和解となり、和解条項によりCは、本件各記事に関するアクセスログの情報を開示した。しかし、掲示板への投稿は匿名で行えるため、Cは、投稿した者につきIPアドレス以外の情報を保有していない。
原告は、上記アクセスログを被告に提出し、本件発信者の個人情報の開示を求めたが、被告は、拒否した。原告は、本件発信者に対して、名誉毀損の損害賠償請求訴訟をするためには、本件発信者の氏名、住所が必要である。そこで、原告は、被告に対し、本件発信者へインターネット接続を提供していること、被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の「開示関係役務提供者」に該当する、とし同項に基づいて、発信者情報の開示を求め提訴した。

[東京地裁]
民事第32部井上哲男裁判長は、「したがって、発信者からウエブサーバーへの情報の送信とウエブサーバーから不特定多数の者への情報の送信を、それぞれ別個独立の通信であると考えるべきではなく、両者は一体不可分であり、全体として1個の通信を校正すると考えるのが相当である。」「両者が一体となって構成された1個の通信は、発信者から不特定多数の者に対する情報の送信にほかならないものであるから、これが『不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信』であることは明らかである。」
「発信者からウエブサーバーへの情報の送信は、発信者から不特定多数への情報の送信という『特定電気通信』の一部となると解する」とする。
経由プロバイダである被告は交換機などの特定電気通信設備を用いて、発信者と不特定多数の者の間で行われる通信を媒介した者で、「特定電気通信役務提供者」に当たるとした。 原告は、記事11本について、名誉毀損を主張したが、裁判長は、2本は、原告の社会的地位を低下させるものでないとし、次のように判決した。

「主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙アクセスログ目録記載1ないし6,同9ないし11の各日時ころにおいて、各IPアドレスを割当てられた電気通信設備を管理する者の氏名及び住所を開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. 訴訟費用は被告の負担とする。
経由プロバイダについて、最高裁平成22年4月8日判決民集64巻3号676頁もプロバイダ責任制限法2条3項の「特定電気通信役務提供者」とした。

ソニーコミュニケーションネットワーク事件

送信者側プロバイダが、「開示関係役務提供者」に該当するとされ、同プロバイダにより第三者に対し、権利侵害情報を送信した者の住所、氏名の開示請求を認容した事例である。

東京地裁平成16年1月14日判決(平成15年(ワ)第354号発信者情報開示事件、金融・商事判例1196号39頁)

WinMxプログラム(ピア・ツー・ピア方式による電子ファイルの交換をするリフト)における送信側プロバイダが、プロバイダ責任制限法4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当するかどうか争われたが、該当するとして、同プログラムにより、第三者に対し、権利侵害情報を送信した者の住所および氏名の開示請求を認容した。
原告は、X1、及びX2である。被告Yは、ソニーコミュニケーションネットワーク株式会社である。

[判決主文]

  1. 被告は、原告等に対し、平成14年12月27日21時54分ころに、「218,41.21.155」というインターネットプロトコルアドレスを使用して、インターネットに接続していた者に関する氏名および住所を開示せよ。
  2. 訴訟費用は、被告の負担とする。
この判例は、「金融・商事判例」という雑誌に掲載されている。

マンション建設業者対電子掲示板事件

マンション建設業者が、電子掲示板の書込みにより名誉等の権利を侵害されたとして、ネット運営会社に不法行為に基づく損害賠償請求、書込の削除請求、発信者の情報開示請求をし、いずれも棄却された事例である。

名古屋地裁平成17年1月21日判決(平成16年(ワ)第3336号、判時1893号75頁)

 原告Xは、木材防腐処理業等を目的とする甲野木材防腐株式会社である。
被告Yは、インターネットの運営等を目的とする株式会社である。

Xは、東京都豊島区にマンションを建設することを計画しているが、附近住民により、反対運動がなされていた。このような状況下で、Yの運営する電子掲示板に、「(1)投稿日、2004/6/15/7:32、(2)投稿者kounomokuzai-shaco-otsuyama、(3)題名 なめとんか? (4)今更、ワンルームマンション、誤った新規事業、最低。」と書き込まれていた。

Xは、

  1. 不法行為に基づく損害賠償請求
  2. 条理上の削除請求権に基づく書き込みの削除
  3. プロバイダ責任制限法4条に基づく発信者情報の開示

を求めた。

[名古屋地裁]
民事8部の黒岩巳敏裁判長は、

  1. 原告の請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。

と判決した。

 この電子掲示板の投稿者は、kounoで、原告の名を冒用しているが、内容から通常の一般人は、この書き込みの主体がXの代表者であると誤認することはない。本件書き込みがXの名誉、信用、プライバシー権及び人格権を侵害したと評価できない。したがって、本件書き込みがXの権利を侵害するのとは認められず、その余の点を判断するまでもなく、理由がないとした。

この事件は、珍しく、発信者情報を求めた原告が敗訴しているが、裁判所は、インターネットによる原告への攻撃は、軽微であると判断したのであろうか。

弁護士発信者情報請求事件

弁護士の名誉を毀損する情報がホームページに掲載され、インターネット・サービス・プロバイダへ発信者情報の開示請求をし、認められた事件である。

東京地裁平成17年8月29日判決(平成17年(ワ)第1876号判タ1200号286頁)

原告Xは、第2東京弁護士会に所属する弁護士である。
被告Y(ヤフー株式会社)は、プロバイダ業等を営む株式会社である。

  1. 平成16年11月1日から同月26日の間、Yのサーバー上に開設しているホームページに、「私たちにとってXらは、お金のために、何の関係もない私たちを利用し、沢山の幸せを奪い取るという精神的な虐待をした、恐喝犯でしかありません」等の文章(本件各侵害情報)が掲載された。
  2. Xは、平成16年11月5日付けで、Yに対し、発信者情報の開示を求めた。
  3. Yは、本件ホームページの開設者に、平成16年11月16日、本件発信者情報をXへ開示することについて意見照会をした。同年11月23日、開設者は、Xへ、同意しないと返答した。
  4. Yは、平成16年11月27日、本件ホームページの掲載を一時的に停止し、同月30日、Xに対し、直ちに開示請求に応じられない、と返答した。

 平成17年2月2日、Xは、Yへ、発信者情報を開示せよと訴えた。

[東京地裁]
第31民事部金子順一裁判長は、次のように判断した。

  1. Yは、別紙発信者情報のうち、別紙発信者情報目録記載の3、4,5の各情報のみを保有している。
  2. 本件各侵害情報は、プロバイダ責任制限法4条1項1号の権利侵害要件を具備している。
  3. 原告Xには、同法4条1項2号所定の本件各侵害情報の開示を受けるべき正当な理由がある。

[判決主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載3ないし5の各情報を開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. (省略)
原告弁護士が、発信者情報、誰が書いたか、知りたいという気持ちもわかる。

有名ホスト電子掲示板名誉毀損事件

有名ホストが電子掲示板になされた書き込みが名誉毀損に当たるとして携帯電話事業会社が発信者情報の開示を命ぜられたが、損害賠償請求は棄却された事例である。

大阪地裁平成18年6月23日判決(平成17年(ワ)第4861号、判タ1222号207頁)

原告Xは、有名ホストである。
被告Yは、携帯電話事業を業とするボーダホン株式会社である。

訴外Aの運営するホームページは、ホストクラブ情報交換を目的とする電子掲示板を包含しているが、ここに、「Xさんは、性病でした。花子うつされた~」などの書き込みがなされた。Xは、Aを相手に平成17年1月27日、大阪地裁に対し、発信者のIPアドレス及び書き込みがなされた日時の情報を開示を求める旨の仮処分を申立て、同年2月10日、仮処分決定を得て、同年3月16日に情報の開示を受けた。この開示で、Xは、書き込みに利用された端末が「j-phoneV402SH」で、IPアドレスは、被告Yが管理しているサーバーであることを知り、平成17年3月17日、Yに対し、書き込みについての発信者情報の開示及び開示までの保存を請求した。

平成17年5月20日、Yは、Xに対し、その発信者情報開示請求が、プロバイダ責任制限法4条1項の要件を充足していると判断できず、請求に応じられないと回答した。
Xは、名誉毀損及びプライバシー権侵害であるとして、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めると共に、Yが開示しなかったことによる精神的損害100万円の損害賠償支払を求めて提訴した。

[大阪地裁]
第9民事部の深見敏正裁判長は、本件書き込みは、公共性も公益目的も違法性阻却事由もなく、権利侵害の明白性要件を満たしているとし、発信者情報の開示を命じた。Yの損害賠償責任については、Yに故意や重過失はないとし、これを否定した。

[判決主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙書込目録1及び2記載の各書込の発信者に係る住所及びメールアドレスを開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. (省略)
有名ホストが原告として、発信者情報を求めて訴訟するという珍しい事例。

発信者情報NTT請求事件

ネットのチャットルームにおける書込みがプライバシー侵害、名誉毀損に該当する等として、発信者情報開示請求が認められたが、プロバイダーによる情報開示請求の拒否につき重過失がないとして、損害賠償請求が棄却された事例である。

大阪地裁平成20年6月26日判決(平成20年(ワ)第461号、判タ1289号294頁)

Xは、私人である。
Yは、エヌ・テイ・テイ・コミュニケーションズ株式会社である。

インターネットのチャットルームにおいて、Aが、原告Xについて、その住所、氏名を公開し、「郵便局の配達員クビになった」、「誰もが認める人格障害」「引き籠もり40歳」などと記載した。
Xは、プロバイダ責任制限法4条1項に基づいて、Aの住所、氏名の開示を求めたが、拒否された。Xは、「別紙アクセスログ記載の参加日時から退出日時までの間に同目録記載のIPアドレスを使用してインターネットに接続していた者の氏名及び住所を開示せよ」および百万円の損害賠償を請求して訴訟を提起した。

[大阪地裁]
第17民事部の西岡繁靖裁判官は、Xのプライバシー権が侵害されたことが明白で、名誉を毀損されたことも明白で、開示を受ける正当な理由があるとして、Aの住所、氏名の開示請求を認めた。
しかし、損害賠償請求については、被告Yに、故意、重過失を認めず、原告Xの損害賠償請求は理由がない、とした。
Aは、原告Xから、(弁護士が発信者の住所を調べ、判明したら原告が極道をAの下に送るから待ってろよ)、との脅迫を度々受けており、被告Yとしては、Aの意見を尊重して、原告の開示請求に応じることはできないと判断した事情があった。

発信者情報開示請求について、被告側にもいろいろの事情がある。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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