大家重夫の世情考察

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ジェイフォン事件

著名な営業表示含むドメイン名の使用を不正競争防止法2条1項2号に基づいて差し止め損害賠償も認めた事例である。

東京地裁平成13年4月24日判決(平成12年(ワ)第3545号、判時1755号43頁)

原告X(ジェイフォン東日本株式会社)は、携帯電話による通信サービスを主たる目的とする会社で、グループ企業8社とともに、平成9年2月頃から、「J-PHONE」というサービス名称を使用している。
被告Y(株式会社大行通商)は、水産物、海産物及び食品等の輸入販売を主たる目的とする株式会社である。

Yは、平成9年8月29日、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)から、「j-phone.co.jp」のドメイン名(以下、本件ドメイン名)の割り当てを受け、「http://www.j-phone.co.jp」のアドレスにおいて、ウエブサイトを開設し、そこにおいて、「J-PHONE」「ジェイフォン」「J-フォン」を横書きにした表示(以下、本件表示)をし、レッスンビデオ、携帯電話機、酵母食品等の販売を行っていた。

Xは、Yに対して、

  1. 本件ドメイン名の使用の禁止、
  2. インターネット上のアドレスにおいて開設するウエブサイトから、本件表示を削除すること、及び
  3. 損害賠償950万円

を求めて訴えた。根拠は、不正競争防止法2条1項1号、2号である。

[東京地裁]
民事46部の三村量一裁判長は、次のように判断した。

  1. 被告Yの本件ドメイン名の使用は、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「商品等表示」の使用に該当する。
  2. 「J-PHONE」本件サービス名称は、同法2条1項2号にいう「著名な商品等表示」である。
  3. Yに対し、Xが本件ドメイン名及び本件表示の使用の差し止め、本件ウエブサイトからの本件表示の抹消を求める請求は理由がある。
  4. 被告Yは、本件ウエブサイト内で、いわゆる大人の玩具販売広告、特定企業の誹謗中傷する文章等の表示をし、原告Xの信用毀損行為を故意に行った。
    その損害額は200万円、弁護士費用100万円である。

[判決主文]

  1. 被告は、その営業に関し、別紙目録記載の表示及び「j-phone.co.jp」のドメイン名を使用してはならない。
  2. 被告は、インターネット上のアドレス「http://www.j-phone.co.jp」において開設するウエブサイトから、別紙目録記載の表示を抹消せよ。
  3. 被告は原告に対し、300万円及びこれに対する平成12年4月24日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(4,5,6)省略。

ドメインは、先着順である。著名な会社などは、自他ともに認める自社がそのドメイン名を持ちたいのに出遅れた、そこで、訴えるなど紛争は多い。
ジャックス事件(名古屋高裁金沢支部平成13年9月10日判決、富山地裁平成12年12月6日判決)参照。

ヤフー電子掲示板発信者事件

インターネット上の掲示板に記載された情報で、名誉、プライバシー、名誉感情を傷つけられたとして、プロバイダ責任制限法により発信者情報開示が認容され、損害賠償請求は棄却された事例。

東京地裁平成16年11月24日判決(平成15年(ワ)第6540号、判タ1205号265頁)

原告Xは、田中次郎である。被告Yは、ヤフー株式会社である。

Yは、電気通信事業法に基づく一般第2種電気通信事業等を行う株式会社で、インターネット上で、「Yahoo!掲示板」を設営している。この掲示板に投稿するには、利用者は、Yに対して、住所氏名と「Yhoo!JAPAN ID」とパスワードを申告、YからIDが付与されることが必要である。利用者が掲示板に投稿しても、申告した住所氏名は表示されない。IDを取得した利用者は、プロフィールを公開することが可能で、これに本名真実の住所などを公開する必要もない。

 Xは、何者かによって、自己の名前のイニシヤルJとXの苗字のローマ字記載を連結した(j.tanaka.仮名)を取得され、同IDを使用してYが提供するサービスの1つ、公開プロフイールに、Xが持っている携帯電話番号が記載され、職業欄に知的障害者、住所欄は、精神病院隔離病棟などと記載され、Yが運営する掲示板にも、同IDを使用して携帯電話番号が書き込まれていた。さらに、他のID(bu)を使用して掲示板に、j.tanaka を侮辱する投稿がなされ、buから自己のIDに侮辱的な電子メールが送付された。
 そこで、Xは、各ID(j.tanaka,bu)を使用して、投稿等を行った者の発信者情報の開示を請求し、Yが、Xから前記投稿等の削除要求を受けながらこれを放置したとして、不法行為に基づく損害賠償請求をした(Yは、1週間後削除した)。
 Yは、電子メールは、プロバイダ責任制限法4条1項の特定電気通信による情報に該当しない、前記投稿の1部は、Y運営の掲示板へのものでない、j.tanakaは、個人として特定できないからXの名誉を毀損をしない、携帯電話番号は一般に公開されていないから、プライバシー侵害は不成立と主張した。

[東京地裁]
民事第5部の長秀之裁判長は、次のように判断した。

  1. 本件投稿等及び本件メールは、「特定電気通信による」情報にあたるか、について。
    プロバイダ責任制限法2条1号「特定電気通信」とは、不特定多数の者によって、受信されることを目的とする電気通信をいうから、「投稿」は、特定電気通信に当たるが、電子メールは、当たらない。
  2. 各投稿は、いずれもYが運営する掲示板に投稿されたものであり、職業欄に知的障害者、住所欄に精神病院隔離病棟などと記載するのは、Xへの名誉毀損であるとした。
  3. 上記掲示板に、個人名、携帯電話の電話番号、またj.tanakaと携帯電話番号を併記したことは、プライバシー侵害に当たるとした。 これにより、上記各投稿の発信者情報の開示を命じた。
  4. 損害賠償請求については、Yが、Xからの削除請求があってから1週間後に削除しており、遅きに失したと言えない、として、棄却した。

[判決主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙侵害情報目録記載1の1、1の5の各公開プロフイール並びに同目録記載1の2,1の3の1,1の4の1及び2,1の6,2の1の1,2の1の3ないし6,2の2の2及び3の各投稿に係る者の氏名又は名称、住所、発信者の電子メールアドレス、上記各公開プロフイール及び上記投稿に係るIPアドレス、同IPアドレスを割り当てられた電気通信設備から被告の用いる特定電気通信設備に上記各公開プロフイール及び上記各投稿が送信された年月日及び時刻の発信者情報を開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。(あと訴訟費用は省略)
電子掲示板への投稿、電子メールは「特定電気通信」に当たるか。

有名ホスト電子掲示板名誉毀損事件

有名ホストが電子掲示板になされた書き込みが名誉毀損に当たるとして携帯電話事業会社が発信者情報の開示を命ぜられたが、損害賠償請求は棄却された事例である。

大阪地裁平成18年6月23日判決(平成17年(ワ)第4861号、判タ1222号207頁)

原告Xは、有名ホストである。
被告Yは、携帯電話事業を業とするボーダホン株式会社である。

訴外Aの運営するホームページは、ホストクラブ情報交換を目的とする電子掲示板を包含しているが、ここに、「Xさんは、性病でした。花子うつされた~」などの書き込みがなされた。Xは、Aを相手に平成17年1月27日、大阪地裁に対し、発信者のIPアドレス及び書き込みがなされた日時の情報を開示を求める旨の仮処分を申立て、同年2月10日、仮処分決定を得て、同年3月16日に情報の開示を受けた。この開示で、Xは、書き込みに利用された端末が「j-phoneV402SH」で、IPアドレスは、被告Yが管理しているサーバーであることを知り、平成17年3月17日、Yに対し、書き込みについての発信者情報の開示及び開示までの保存を請求した。

平成17年5月20日、Yは、Xに対し、その発信者情報開示請求が、プロバイダ責任制限法4条1項の要件を充足していると判断できず、請求に応じられないと回答した。
Xは、名誉毀損及びプライバシー権侵害であるとして、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、発信者情報の開示を求めると共に、Yが開示しなかったことによる精神的損害100万円の損害賠償支払を求めて提訴した。

[大阪地裁]
第9民事部の深見敏正裁判長は、本件書き込みは、公共性も公益目的も違法性阻却事由もなく、権利侵害の明白性要件を満たしているとし、発信者情報の開示を命じた。Yの損害賠償責任については、Yに故意や重過失はないとし、これを否定した。

[判決主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙書込目録1及び2記載の各書込の発信者に係る住所及びメールアドレスを開示せよ。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. (省略)
有名ホストが原告として、発信者情報を求めて訴訟するという珍しい事例。

MYUTA事件

CD等の楽曲を自己の携帯電話で聞くことのできる「MYUTA」という名称のサービスの提供は、許されるか。

東京地裁平成19年5月25日判決(平成18年(ワ)第10166号、判タ1251号319頁、判時1979号100頁)

 原告は、携帯電話向けストレージサービス等を業とする会社で、au WIN端末のユーザーを対象として、CD等の楽曲を自己の携帯電話で聴くことのできる「MYUTA」という名前のサービスを始めようと考えた。
 そこで、原告の行おうとする事業が円滑に行えるように、音楽著作権を多数管理している日本音楽著作権協会を被告として、被告(日本音楽著作権協会)が、「作詞者、作曲者、音楽出版者その他著作権を有する者から委託されて管理する音楽著作物の著作権に基づき、これを差し止める請求権を有しないことを確認する」との訴えを提起した。

 主要な争点は、次の通り。

  1. 複製権侵害の主体(本件サーバーにおける3G2ファイル(携帯向け動画音声ファイルの形式)の複製行為の主体)は、原告か、ユーザーか。
  2. 公衆送信、自動公衆送信がなされているか。なされているとして、その主体は誰か。

である。原告は、管理著作物が複製されていることは認めるが、行為主体は、ユーザーで、公衆送信に当たらないと主張した。

すなわち、本件サーバーからユーザーの携帯電話に向けた3G2ファイルを送信(ダウンロード)しているのは原告か、ユーザーか。自動公衆送信行為がなされたか、である。

東京地裁民事47部高部眞規子裁判長は、次のように判決した。

  1. 本件サーバーにおける3G2ファイルの複製行為の主体は、原告である。
  2. 本件サーバーからユーザーの携帯電話に向けた3G2ファイルを送信(ダウンロード)している主体は、複製と同様、原告である。
  3. 本件サービスを担う本件サーバは、ユーザーの携帯電話からの求めに応じ、自動的に音源データの3G2ファイルを送信する機能を有している。ユーザーによって、直接受信されることを目的として自動的に行われるから、自動公衆送信に当たり、その主体は原告である。
  4. 本件サーバーにおける音楽著作物の複製及びユーザーの携帯電話への自動公衆送信も原告が行っている。

これらの原告の行為は、被告の承諾がなければ、被告の著作権を侵害するものである。
本件サーバーにおける音楽著作物の蔵置及びユーザーの携帯電話に向けた送信につき、被告は差止請求権を揺する。よって、原告の請求は棄却する。

この事件は、CD等の楽曲を携帯電話で聴くことができるように音楽データのストレージサービス提供事業というビジネスモデルが、適法であるかどうか、を事業開始前に、裁判所の判断を仰いだ訴訟という点で、田中豊弁護士は、原告を高く評価している。同感である。

[参考文献]
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応ー司法救済による権利の実効性確保」(紋谷暢男編「JASRAC概論ー音楽著作権の法と管理」(日本評論社・2009年)151頁、特に188頁)
相澤英孝「知的財産法判例の動き」『ジュリスト』1354号「平成19年度重要判例解説」286頁。

花画像デジタル写真集事件

携帯電話の待受画面用に1日1枚1年分として、花の画像を365枚集めたデジタル写真集について、その著作権の譲渡を受けた者が、週1回1枚ずつその画像を携帯電話の待受画面として配信した行為は、編集著作物としてのデジタル写真集の同一性保持権を侵害するものではない、という事例である。

知財高裁平成20年6月23日判決(平成20年(ネ)第10008号、判時2027号129頁)
東京地裁平成19年12月6日判決(平成18年(ワ)第29460号

 原告Xは、主として四季の風景、野花などの自然写真の撮影、発表を専門とする写真家で「四季の肖像」(1994年)等の写真集を出版している。
被告Yは、通信システム等の製造・販売等を業とする富士通株式会社で、インターネット上に同社製造のiモード対応携帯電話利用者のための「@Fケータイ応援団」というサイト(本件サイト)を開設している。

Xは、1日1枚、日めくりカレンダー用に、花の写真365枚を画像データにした、デジタル写真集(本件写真集)を作成した。
2003年、Yは、子会社の富士通パレックスを通じて、この携帯電話向け画像について、画像に関する権利をXから237万7500円で、譲渡を受けた(1枚7500円×365=237万7500円)。
Yは、平成15年6月27日から、週1回、1枚の割合で、本件写真集の写真の配信を行ない、平成17年7月15日にすべての配信を終了した。
平成20年、Xは、Yに対し毎日である各配信日に、対応する写真を用いなかったことは、編集著作物である本件写真集の同一性保持権等の侵害であるとして、不法行為による損害賠償額として慰藉料273万7500円と遅延損害金の支払いを求めて訴訟を提起した。

[東京地裁]

  1. 本件写真集は、著作権法12条の編集著作物か。
  2. 週1回の配信行為は、著作権法20条1項の同一性保持権の侵害か。
  3. 週1回の配信方法にXは、明示又は黙示の同意があったか。

の争点について、原被告の主張が行われた。

東京地裁は、3.についてのみ判断し、花の写真が毎週1回の割合で更新してYが配信することにXは、Yに対して黙示の同意を与えていたとして、Xの請求を棄却した。

[知財高裁]

次のように判断した。

  1. 本件画集は、編集著作物である。
  2. 編集著作権の譲渡を受けたYが、概ね7枚に1枚の割合で、X指定の応当日前後に配信していて、いわば編集著作物たる本件写真集について、公衆送信の方法で、その1部を使用するもので、Xから提供を受けた写真の内容に変更を加えていない。著作権法20条1項の「変更、切除その他の改変」の文理的意味からして、配信行為が同一性保持権を侵害していない。

本件控訴を棄却するとした。

編集著作物かどうか、そうだとしてもこのような使い方は、侵害でない、という結論が正いと思う。

[参考文献]
井関涼子・Law &Technology49号40頁(2010年10月)
堀江亜以子・発明2009年5月号52頁。
平澤卓人・知的財産法政策学研究24号259頁(2009年9月)

医療法人社団対NTTドコモ請求事件

携帯電話から接続サービスを利用してインターネットのブログになされた書き込みにより名誉、信用を毀損された者から携帯電話会社NTTドコモに対する発信者情報開示請求が認められた事例である。

東京地裁平成20年9月9日判決(判時2049号40頁)

被告Yは、NTTドコモである。
原告Xは、医療法人社団で、診療所を開設し、化粧品(本件化粧品)も販売している。

Xは、芸能人だった訴外Aへ本件化粧品を贈呈した。Aは、訴外B会社が提供しているブログのシステムを利用してインターネット上にブログ(本件ブログ)を開設していたが、平成19年8月15日午前10時20分頃、本件ブログに本件化粧品のカラー画像を掲載し、「嬉しき頂き物」などと書き込んだ。ところが、同日午後9時37分ころ、「肌悲しい子」の名前の者から、「その化粧品でひどく肌が赤くただれて、大学病院の皮膚科で治るまで3ケ月かかると言われました」などの書き込み(本件書き込み)がなされた。Xの求めに応じて、B会社は、同年9月20日、Xに、IPアドレスとこのIPアドレスを割当てられた携帯電話等からBの電気通信設備に送信された年月日及び時刻の情報を任意に開示した。
Xは、本件IPアドレスは、Yが所有しており、本件発信者が本件ブログに本件書込みをした際、インターネット接続サービスを提供したのは、Yであると知った。
Xは、Yの通信回線を利用し、本件書き込みをした者(「肌悲しい子」)の住所、氏名の情報の開示を請求をしたが、Yは拒否した。

民事23部須藤典明裁判長は、原告は、本件発信者によって、その名誉や信用を侵害されている。本件書き込みは、携帯電話等から被告の通信回線を経由して本件ブログに書き込まれたもので、被告は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(平成13年法律第137号)4条1項にいう「開示関係役務提供者」に該当するとし、原告に対し、本件発信者の氏名、住所、電子メールアドレス等の情報を開示せよ、と命じた。

2005-1エステックサロン事件と類似する事件である。

「しずちゃん」経由プロバイダ事件

経由プロバイダが、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」(以下、法)2条3項にいう「特定電気通信役務提供者」に該当するとした判例である。

最高裁平成22年4月8日判決(平成21年(受)第1049号民集64巻3号676頁)
東京地裁平成20年9月19日判決、東京高裁平成21年3月12日判決

被告Yは、株式会社NTTドコモである。
原告X1は、土木工事事業等を目的とする株式会社である。原告X2は、X1の代表取締役である。原告X3は、X2の妻である。原告X4は、X1の従業員である。

ウエブサイト「しずちゃん」内の電子掲示板に、原告X1ではいじめがはげしい、X2は、不貞行為をしている、X3は、従業員と不貞行為をしている、X4は暴力団と関係があるなど、という事実無根の記事を、複数の氏名等不詳の者(本件発信者)から書かれた。
Xらは、名誉毀損、プライバシー権等の人格権侵害をされているとして、原告等は、静岡地方裁判所浜松支部に対し、「しずちゃん」管理者から委託を受けたホステイング業者を相手に仮処分命令を申立てて、投稿した者のIPアドレス及びタイムスタンプ等の情報を得、これにより、本件発信者らは、被告Yの管理するサービスのユーザーで、Y経営の携帯電話からの発信と判明、X等は、東京地裁へ、Yを相手に発信者情報の消去の禁止を求める仮処分命令申立をしたが、自動消去されていたので、同地裁から却下決定がなされた。
原告等は、コンテンツプロバイダ「しずちゃん」管理者に発信者の携帯端末機の機種、シリアルナンバー及びFOMAカード個体識別子がアクセスログとして記録されているので、被告Yに、発信者等の情報を特定することが可能であるとして、経由プロバイダである、被告Yへ、発信者情報の開示を求めて訴えた。
被告Yは、被告は経由プロバイダであるから、法4条1項、法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当しないと主張した。

1審の東京地裁民事第37部は、

  1. 被告は、「特定電気通信役務提供者」(法4条1項、2条3号)に該当しない
  2. 原告主張のFOMAカード個体識別子による情報は、法4条1項所定の「権利の侵害に係る発信者情報」ではなく、被告は発信者情報を保有していない、原告らの本件請求はいずれも理由がない

とし、原告らの各請求をいずれも棄却した。

2審の東京高裁第24民事部は、解釈を変えた。

[判決主文]

  1. 原判決を次の通り変更する
  2. 被控訴人は、控訴人X1に対し、原判決別紙アクセスログ目録(1)の表の2,3及び5の「投稿日」及び「時間」欄記載の日時における、これに対応する同表の「icc」欄記載のFOMAカード個体識別子によって特定されるFOMAカードに係るFOMAサービス契約の相手方の住所及び氏名又は名称をそれぞれ開示せよ。」とし、被控訴人は、控訴人X2、X3,X4に対しても、同様の開示をせよ

と命じ、控訴人らのその余の請求は棄却した。

最高裁(金築誠志裁判長、宮川光治、櫻井龍子、横田尤孝、白木勇)は、上告を棄却した。

[判決要旨]
「最終的に不特定多数の者に受信されることを目的として特定電気通信設備の記録媒体に情報を記録するためにする発信者とコンテンツプロバイダとの間の通信を媒介する経由プロバイタは、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律2条3項にいう「特定電気通信役務提供者」に該当する。

東京地裁平成15年9月17日判決(平成15年(ワ)第3992号判タ1152号276頁)は、経由プロバイダについて同旨の判断をしていた。

「釣りゲーム」事件

携帯電話用ゲームの画面表示の類似はどこまで、許されるか、という事件で、1審は、侵害とし、2審は、問題なしとした。

知財高裁平成24年8月8日判決(平成24年(ネ)第10027号、判時2165号42頁)
東京地裁平成24年2月23日判決(平成21年(ワ)34012号)

 原告X(グリー株式会社)は、インターネットを利用した情報サービス等を提供する株式会社である。インターネット上で、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(コミュニテイ型サービス)を提供するインターネット・ウエブサイト「GREE」を携帯電話向け及びパソコン向けに運営している。
 被告Y1(株式会社デイー・エヌ・エー)は、インターネットを利用した各種情報処理サービス及び情報提供サービス、ソフトウエアの企画、開発等及びその代理業等を業とする会社である。携帯電話向け及びパソコン向けにインターネット・ウエブサイト「モバゲータウン」を運営している。
 被告Y2(株式会社ORSO)は、インターネット、コンピュータ、携帯電話、テレビゲーム機器等のシステム開発、コンサルタント業務、ゲームソフトの企画制作、製造販売等の業務を業とする株式会社である。

Xは、2007年、携帯電話向けGREEに、その会員に対し、釣りのゲームの作品「釣り★スタ」(X作品)を公衆送信によって配信した。このX作品は、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、魚を釣り上げた釣果画面が存在する。
 2009年、Y1およびY2は、「釣りゲータウン」という携帯電話機用の釣りのインターネット・ゲーム(Y作品)を共同で製作し、携帯電話機向けのモバゲータウンにおいて、その会員一般に、公衆送信による配信を開始した。このY作品にも、トップ画面、釣り場選択画面、キャステイング画面、魚の引き寄せ画面、釣果画面が存在する。
Y1のモバーゲタウンや、Y2のホームページには、Y作品が掲載されている。
 Xは、1,YらによるY作品の製作及び公衆送信は、X作品の著作権(翻案権、公衆送信権)および著作者人格権の侵害である、Y作品の公衆送信の差止およびモバゲータウンなどウエブサイトからY作品を抹消すること、2,Yらが、Y作品をウエブページに「魚の引き寄せ画面」のY影像を掲載することは、不正競争防止法2条1項1号所定の周知な商品等表示の混同惹起行為に当たるとして、Y影像の抹消を求め、3,YらがY作品を製作し、公衆に送信する行為は、Xの法的保護に値する利益を侵害する民法の不法行為に当たる、と主張し、著作権侵害、不正競争防止法2条1項1号違反、共同不法行為に基づく損害賠償として9億4020万円、4,著作権法等に基づく謝罪広告を求めて訴えた。

東京地裁平成24年2月23日判決は、Y作品の「魚の引き寄せ画面」が、X作品の「魚の引き寄せ画面」を翻案したものである、X作品にかかるXの著作権及び著作者人格権を侵害するとして、Y作品の公衆送信の差止、ウエブサイトの抹消、損害賠償の一部約2億3500万円の支払いを認めた。

 この判決に不服のYらは控訴した。

知財高裁平成24年8月8日判決は、「魚の引き寄せ画面」は、たしかに共通しているが、「ありふれた表現である」か(魚を引き寄せる決定キーを押すタイミングを魚影が同心円の一定の位置にきたときにする)ことにした点は、「アイデア」にすぎない、として、翻案権侵害を否定した。また、「魚の引き寄せ画面」は、不正競争防止法2条1項1号に該当せず、著作権侵害、不正競争行為に該当せず、民法の不法行為も構成しないとした。

 東京地裁判決は、携帯電話向け釣りゲームのX作品は、従来にない、新しいものとし、著作権法で保護しようとしたが、知財高裁は、X作品は、ありふれている、又は著作権法で保護するに値しない単なるアイデアであると判断した。

最高裁第三小法廷は、平成25年4月16日、X側の上告を棄却する決定をした。

非常に難しい問題である。しかし、この2審判決を研究し、多少、類似したゲームを、創作する者が出るかも知れない。

[参考文献]横山久芳「翻案の判断方法」(「平成24年度重要判例解説」267頁)。

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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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