大家重夫の世情考察

タグ「宗教団体」が付けられている判例

メール著作物事件

ウエブ上の記事により、著作権、著作者人格権が侵害されたとして、本件記事を掲載した者に対して、損害賠償請求権の行使のために、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告経由プロバイダに対し,発信者情報の開示を求めた原告が勝訴した事件である。

東京地裁平成25年3月21日判決(平成24年(ワ)第16391号)

原告は、宗教団体「ワールドメイド」の会員で、同団体の親睦団体関東エンゼル会の議長を勤めている。
被告は、イー・アクセス株式会社である。

原告は、「やっと『人形ムード』になった方も多いのではないでしょうか?」「B先生が『伊勢神業』のお取次ぎをしてくださるまでの貴重なこの時間は、私たちに『人形形代』をもっともっと書かせて頂くための時間ではないでしょうか?」などと書いた。
氏名不詳の誰かが、本件メールの全文をほぼそのまま記載した。
原告の本件メールの複製権、公衆送信権が侵害されたとして、被告イーアクセス(株)に対し、発信者情報を保有しており、原告は発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとして、訴えた。被告は、著作物性を争った。
裁判所は、開示を命じた。

[判決主文]
被告は、原告に対し、別紙アクセスログ目録記載17ないし22の各日時ころに、同目録記載のIPアドレスを使用して、同目録記載のアクセス先に接続していた者の氏名及び住所を開示せよ。訴訟費用は被告の負担とする。

宗教に関係する文章を、短いが、著作物と認めた判決で珍しい。

呪われしモザイク事件

原告製作のビデオ映像がニコニコ動画にモザイクをかけられ、改変され無断掲載されたため、原告が発信者情報に係る情報の開示を求めた事件である。

東京地裁平成26年3月14日判決(平成25年(ワ)第26251号)

原告は、株式会社シナノ企画で、映画の著作物を製作した(以下、本件映像)。この本件映像の著作権は、創価学会に譲渡したが、その著作者人格権は保有している。
被告は、ソフトバンクBB株式会社である。

「takuya」と称する氏名不詳者が、株式会社ニワンゴが開設・運営する動画投稿サイト「ニコニコ動画」のに「『チキ本さん』呪われしモザイク」と題する動画(以下、本件動画)を、被告の提供するインターネット接続サービスを経由して投稿した。
本件動画は、その後本件サイトから削除された。

原告は、この本件動画は、原告が製作した映画の著作物である本件映像の無断複製物であり、原告が著作者であるとの表示がなく、また、無断でモザイクをかけるという改変をし、その内容も登場人物や創価学会の信仰を揶揄嘲笑するような、原告の意に反する改変をしていたとして、被告に対し、原告の権利が侵害されたことが明らかで(「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」第4条第1項第1号)で、「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」(同法4条第1項第2号)に該当するとして、発信者情報を開示するよう被告を訴えた。
被告は、本件動画が本件映像の複製物であること、本件発信者が原告の同一性保持権を侵害したこと等を否認し、発信者情報の開示を受けるべき正当事由につき争った。

[東京地裁判決]
民事29部の大須賀滋裁判長は、

  1. 本件ビデオ映像の著作物性を認め、
  2. 本件ビデオ映像の著作者は原告であるとし、
  3. 本件動画の5箇所について、本件ビデオ映像の本質的特徴を感得できるとし、
  4. 本件動画が原告の氏名表示権を侵害しているとし、
  5. 本件動画の利用に正当化事由がないとして、法4条1項1号の「権利侵害の明白性」があり、法4条1項2号にいう「当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき」の要件を充足するとして、原告の請求は理由があるとし、

「被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の発信者情報を開示せよ。」と命じた。

宗教団体を攻撃するような動画の投稿者を知り、訴訟提起のため、発信者情婦を求めてソフトバンクBBを訴えた事件である。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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