大家重夫の世情考察

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わいせつ画像蔵置事件(刑事)

インターネット接続専門会社の会員が、サーバーコンピュータ内にわいせつ画像のデータを記憶、蔵置させて、インターネットの不特定多数の利用者に右わいせつ画像が再生閲覧可能な状態を設定したことが、わいせつ図画の公然陳列に当たるとされた事例。

東京地裁平成8年4月22日判決(平成8年(刑わ)302号、判時1597号51頁)

 被告人は、インターネット接続専門会社である(株)甲野・インターネットの会員である。インターネットの不特定多数の利用者にわいせつ画像を送信し、再生閲覧させてわいせつ画像を公然陳列しようと企て、平成8年1月28日頃から同月31日頃までの間、東京都墨田区の(株)甲野・インターネット所有・管理するサーバーコンピュータのサン・マイクロ・システム製デイスクアレイ内に男女の性器・性交場面等を露骨に撮影したわいせつ画像のデータ合計67画像分を記憶・蔵置させて、一般の電話回線を使用し、インターネット対応パソコンを有する不特定多数の利用者に右わいせつ画像が再生閲覧可能な状況を設定し、もって、わいせつ図画を公然と陳列したものである。
 東京地裁刑事2部の小川正持裁判官は、刑法175条前段を適用し、「被告人を懲役1年6月に処」し、「裁判確定の日から3年間右刑の執行を猶予」との判決を下した。

執行猶予がついて、刑の執行が猶予された。

  1. これは、無制約な情報発信を事実上放置している商用プロバイダの存在によって可能になった面があること、
  2. インターネットにおいて、他にもわいせつ画像データ発信が野放し状態で、被告人は誘発された面があること、
  3. 営利目的で犯行に及んでいないこと、
  4. 被告人は深く反省し、自宅所有のパソコンを処分、パソコン通信ネットの会員を退会した

等を判決文は述べている。

天気予報画像消去事件(刑事)

朝日放送がインターネット利用者に提供するため開設したホームページ内の天気予報画像を消去してわいせつ画像等に置き換え、不特定多数の者に閲覧させた者が、電子計算機損壊等業務妨害罪及びわいせつ図画公然陳列罪に問われた事例。

大阪地裁平成9年10月3日判決(平成9年(わ)第2305号、判タ980号286頁)
 被告人は、朝日放送が開設した天気情報提供ホームページのサーバーコンピュータ内に記憶、蔵置されていた画像データファイルを消去し、代わりに、わいせつな画像のデータファイルを送信するなどし、ハードディスク内に記憶、蔵置させ、利用者がわいせつ画像を受信し、再生閲覧することができる状況を設定し、不特定多数の者に再生閲覧させた。
被告人は、刑法234条の2の電子計算機損壊等業務妨害罪及び同法175条1項前段のわいせつ図画公然陳列罪に当たるとし、懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けた。

こういう事件のように画像を置き換えることは、インターネットを勉強すれば、誰でも可能であろうか。

[参考文献]
渡辺卓也「別冊ジュリスト メデイア判例百選」(堀部政男・長谷部恭男編・2005年)244頁。岡村久道・南石知哉「サイバー法判例解説」(岡村久道編・商事法務・2003年)64頁。

わいせつ画像マスク処理事件(刑事)

画像をマスク処理したが、わいせつ物公然陳列罪に問われた事件である。

岡山地裁平成9年12月15日判決(平成9年(わ)220号判時1641号158頁)

被告人2人は、猥褻画像を不特定多数のネット利用者へ有料で閲覧させようと意図して、女性の性器部分等を撮影した画像に、画像処理ソフトで、マスク処理したものをプロバイダーのサーバコンピュータに送信し、同時に取り外し機能のソフトを付して送信し、その記憶装置内に記憶、蔵置させた。不特定多数のインターネット利用者において受信した画像データを同じソフトを利用することにより、マスクを取り外した状態の猥褻画像を復元閲覧することができた。これが、猥褻物公然陳列罪に問われた。

被告人側は、

  1. サーバーコンピュータの記憶装置内に記憶、蔵置させた画像は、性器部分が画像処理ソフトにより、マスク処理され見えないようにされているから猥褻性はない
  2. 被告人らが送信し記憶、蔵置させたものは、情報である画像データであり、有体物であるべき、猥褻図画は存在せず、猥褻図画陳列罪に該当しない

と主張した。

裁判所は、

  1. 画像にマスクがなされていても、マスクを外すことが誰にでも、その場で、直ちに、容易にできる場合には、その画像は、マスクをかけられていないものと同視することできるとし、
  2. 陳列された図画は、サーバコンピュータではなく、情報としての画像データであると解すべきである、とし、情報としてのデータもわいせつ物の概念に含ませることは、刑法の解釈として許される、とし、

被告人らの行為は、刑法175条猥褻図画公然陳列罪に当たるとした。

当然の結論と思われる。

[参考文献]山本光英・判例評論487号59頁(判時1679号237頁)。

あまちゅあふぉーとぎゃらりー事件(刑事)

(1),画像処理ソフトによるマスク処理の画像データを記憶蔵置したコンピュータのデスクアレイが、「わいせつ図画」に該当し、(2)この画像データをサーバーコンピュータに送信、記憶蔵置させた行為が「公然と陳列した」に該当し、(3)日本国内から国外の海外プロバイダーのサーバーコンピュータへわいせつ画像を送信し記憶蔵置させる行為にも刑法の適用させることができるとされた事例である。

大阪地裁平成11年3月19日判決(平成9年(わ)第637号、判タ1034号283頁)

被告人は、インターネット上に、男女の性器、性交場面を露骨に撮影したわいせつ画像にマスク処理した画像データ18画像分を東京都港区赤坂のプロバイダのサーバーコンピュータに送信、その記憶装置であるデイスクアレイ内に記憶蔵置していた。被告人は、このマスクを外すことのできる「エフ・エル・マスク」と称する画像処理ソフトの利用方法等に関するホームページにアクセスできるリンク情報データを、被告人の滋賀県の自宅から、サーバーコンピュータに送信し、被告人開設のホームページにアクセスした不特定多数のインターネット利用者が、電話回線を使用し、マスクを外して、わいせつ画像を復元閲覧することが可能な状況を設定した。

被告人は、わいせつ画像データ合計102画像分を米国のレンタルサーバー会社のコンピュータに送信、同コンピュータの記憶装置であるデイスクアレイ内に記憶、蔵置させ、被告人開設のホームページにアクセスして会員登録した日本国内の不特定多数の利用者がわいせつ画像を再生閲覧できるようにした。

[大阪地裁]
第7刑事部湯川哲嗣裁判長は、

  1. 画像処理ソフトによるマスク処理の画像データを記憶蔵置したコンピュータのデスクアレイ自体が、刑法175条の「わいせつ図画」に該当するとした。
  2. わいせつ画像データをサーバーコンピュータに送信し、デスクアレイに記憶、蔵置させ、不特定多数の者ガダウンロードして、これを閲覧可能な状況においた被告人の行為が刑法175条1項「公然と陳列した」に該当する。
  3. 日本国内から国外の海外プロバイダーのサーバーコンピュータへわいせつ画像を送信し記憶蔵置させる行為にも刑法の適用させることができるとした。
わいせつ図画公然陳列罪にあたる刑事事件が、案外多い。

[参考文献]
高山佳奈子「別冊ジュリスト メデイア判例百選」(堀部政男・長谷部恭男編・2005年)246頁。

会社従業員ネガ窃盗事件

Y1会社の従業員Y2が同僚の女性Xの事務机の引き出しから、ネガ・フイルムを盗みだし、焼き付けて、無断でY1会社のホームページ(以下、HP)に掲載した行為について、会社の事業の執行につきなされたものとは認められず、Y1会社の使用者責任は認められなかった事例である。

東京地裁平成12年1月31日判決(判タ1046号187頁、控訴和解)

 Y1会社は、電子機器等の輸出入業務を行う会社で、Y2は、情報技術部のシニアマネージャー、Xも平成7年から平成10年8月まで従業員であった。平成10年4月頃、Y2は、Y1会社内のXの事務机の引出しに保管されていたX撮影の写真のネガフイルム数葉を盗み出し、Xに無断でこれを焼付け、そのうちの3葉をY1会社のHPに掲載した。

 Xは、Y2のネガフイルムの盗み出しとHPへの掲載は、不法行為に当たるとし、民法709条に基づき、また、右不法行為がY1会社の事業の執行につきなされたものであるとして、民法715条に基づき、Y1会社とY2に対し、それぞれ3000万円の慰藉料を求めて訴えた。

東京地裁地裁民事40部の都築裁判官は、

  1. Y1のHPの管理等がY2の職務行為の範囲内に属しない、Y2の右不法行為がY1会社の事業の執行につきなされたとはいえないと判断し、XのY1に対する請求は、棄却した。
  2. Y2のネガフイルムの盗みだしとY1のHPへの掲載については、不法行為として、Y2の損害賠償責任のみを認め、Xへ200万円の慰藉料の支払いを命じた。
Y1会社にも責任が問えるのではないだろうか。

アルファネット事件(刑事)

被告人がわいせつな画像データを記憶、蔵置させたホストコンピュータのハードデスクは、刑法175条のわいせつ物に当たる、とした刑事判例である。

最高裁平成13年7月16日判決(平成11年(あ)第1221号、判時1762号150頁。刑集55巻5号317頁)
大阪高裁平成11年8月26日判決(平成9年(う)第1052号、判時1692号148頁、高刑集52巻42頁)
京都地裁平成9年9月24日判決(平成7年(わ)第820号、判時1638号160頁)

自らパソコン通信「アルファネット」を開設、運営していた被告人は、ホストコンピュータのハードデイスクにわいせつな画像データを記憶、蔵置させて、不特定多数の会員が、自己のパソコンを操作して、電話回線を通じ、ホストコンピュータにアクセスして、わいせつな画像データをダウンロードし、画像表示ソフトを使用してパソコン画面にわいせつな画像を現出させ、これを観覧することができる状態にした。

1審及び2審は、会員の再生閲覧が可能な状態に設定したことが、「公然陳列」に当たるとして、刑法175条の公然陳列罪にあたるとした。

被告人は、上告し、会員が再生閲覧するのは、自分のパソコンにウンロードされたわいせつな画像データで、ホストコンピュータに記憶蔵置された画像データは、不可視なままで、わいせつ性が顕在化していない、わいせつ物公然陳列罪は成立しない、と主張した。

最高裁第3小法廷(奥田昌道裁判長、千種秀夫、金谷利廣、濱田邦夫裁判官)は、被告人がわいせつな画像データを記憶、蔵置させたホストコンピュータのハードデスクは、刑法175条のわいせつ物に当たるとした。同条のわいせつ物を「公然と陳列した」とは、その物のわいせつな内容を不特定又は多数の者が認識できる状態に置くことをいうとした。
原判決は、同旨の判断をしているとして、上告を棄却した。

この結論は、正しいと思う。

[参考文献]
園田寿「ダウンロードとわいせつ物陳列罪」『別冊ジュリスト・メデイア判例百選』(№179)(2005年12月)242頁。

ラーメン・チェーン店名誉毀損事件(刑事)

インターネット上の名誉毀損行為には、インターネットの特殊性を反映した独自の判断基準が適用されるのかー1審は、無罪、2・3審は、有罪とされた事例である。

最高裁平成22年3月15日第一小法廷決定(平成21(あ)360刑集64巻2号1頁、判時2075号160頁、判タ1321号93頁)
東京高裁平成21年1月30日第12刑事部判決(判タ1309号91頁)
東京地裁平成20年2月29日判決(判時2009号151頁、判タ1277号46頁)

[東京地裁判決]
 被告人は、米国の大学中退後、平成8年7月頃から、プログラマーとして、数社に勤務し、現在に至っている。
 被告人は、自己の開設するホームページにラーメン店チェーンの経営会社である株式会社甲野食品(のち乙山株式会社に商号変更)について、「インチキFC甲野粉砕」「貴方が『甲野』で食事をすると、飲食代の4~5%がカルト集団の収入になります。」などと甲野食品がカルト集団である旨の虚偽の内容を記載した文章や同社が会社説明会の広告に虚偽の記載をしている旨の文章を掲載し、不特定多数の者に閲覧させたとして、名誉毀損罪に問われ、検事は罰金30万円を求刑した。
 東京地裁刑事3部(波床昌則裁判長、柴田誠、牛島武人裁判官)は、無罪を言渡した。

 日本の名誉毀損罪は、真実を述べた場合も成立するとされ、表現の自由よりも個人の名誉を優先保護していると批評されていた。戦後占領下の昭和22年の刑法改正で、刑法230条の2が追加され、名誉毀損的表現が、

  1. 公共の利害に関係し、
  2. 公益目的でなされたとき、
  3. 摘示された事実が真実であると証明されたときは、これを罰しない

と規定した。しかし、真実の証明は困難であることが多いため、最高裁昭和44年6月25日判決刑集23巻7号975頁(「夕刊和歌山時事」事件)は、「真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実だと誤信し、その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当の理由があるときは、故意がなく、名誉毀損罪は成立しない。」とし、言論の表現者に有利な判例変更を行った。

 このインターネットの名誉毀損事件で判決は、

  1. 公共の利害に関係し、
  2. 公益目的であることは肯定し、
  3. 摘示された事実が、真実であるとの証明がなされていない、しかし、
  4. 真実であると誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らして相当な理由があったかどうか、

として、インターネット上の表現行為について、新たな基準を提示し、名誉毀損罪に当たらないとした。

 すなわち、

  1. インターネットにおける個人利用者の表現行為については、従前のマスメデイアと個人の関係と異なり、相互に情報の発受信に対し、対等の地位に立ち、言論を応酬し合え、容易に加害者に反論することができる、
  2. インターネット利用の個人利用者は、マスメデイアのような高い取材能力や綿密な情報収集、分析活動が期待できないことについて、利用者一般が知悉しており、個人利用者がインターネット上で発信した情報の信頼性は一般的に低いものと受け止められていることに鑑みると、確実な資料、証拠に基づいて真実と誤信したと認めなければ名誉毀損罪に問擬するとするのは相当ではなく、「加害者が、摘示した事実が真実でないことを知りながら発信したか、あるいは、インターネットの個人利用者に対して要求される水準を満たす調査を行わず真実かどうか確かめないで発信したといえるときにはじめて同罪に問擬するのが相当」

とした。

 このように解することによって「インターネットを使った個人利用者による真実の表現行為がいわゆる自己検閲により萎縮するという事態が生ぜず、ひいては憲法21条によって要請される情報や思想の自由な流通が確保される、という結果がもたらされることにもなると思われる。」とする。

[東京高裁判決]
東京高裁は、1審判決を否定、「原判決を破棄」「被告人を罰金30万円に処」した。

高裁判決は、

  1. 被告人は、公益を図る目的で表現行為に及んだ(検察官は疑問であると主張)、という1審の判断は是認した。
  2. 被告人に名誉毀損罪を問えない、とした1審判決は、間違いで、刑法230条の2第1項の解釈・適用の誤りがある、という検察官の点については、同調した。
  3. 被告人の表現は、重要な部分が真実であるあることが証明されていないとした。
  4. 仮に証明不十分であったとしても、被告人は必要な調査義務は尽くしたか、について、「被告人は、乙山株式会社の関係者に事実関係を確認することを一切していないこと等に照らして」、「摘示された事実が真実であると信じたことについて」「『確実な資料、根拠に照らして相当な理由があった』とは到底いえない、」

とした。

「結局のところ、個人利用者によるインターネット上での表現行為について、名誉毀損罪の成否に関する独自の基準を定立し、これに基づき被告人に名誉毀損罪は成立しないとした原判決は、刑法230条の2第1項の解釈。適用を誤ったもの」とした。

[最高裁判決](判例要約)
インターネットのホームページにおいて、被害会社の名誉を毀損する虚偽の事実を掲載した場合、個人利用者が公益を図る目的であったとしても、一律に他の表現手段と区別して、より緩やかな要件で名誉毀損罪の成立を否定すべきでなく、犯人が当該事実を真実であると誤信したことについて確実な資料や根拠が認められず、相当の理由がないときには、同罪が成立する。

1審判決が出たことは、非常に興味深い。

[参考文献]
西土彰一郎「インターネット上の表現について名誉毀損罪の成否」平成22年度重要判例解説23頁。丸山雅夫「インターネット上の個人利用者による名誉毀損と真実性の誤信についての相当 の理由」平成22年度重要判例解説210頁。
岡田好史「インターネット上における名誉毀損について」専修大学法学100号143頁。
永井善之「インターネットと名誉・わいせつ犯罪」刑事法ジャーナル15号10頁。
鈴木秀美・ジュリスト2010年11月15日号22頁。小島慎司・ジャーナリズム2010年7月号48頁。西野吾一「最高裁刑事破棄判決等の実情(中)平成22年度」判時2132号3頁。

イカタコウイルス事件(刑事)

コンピュータウイルスを受信、実行させるなどの行為がパソコンのハードデスクの効用を害したとされ、器物損壊罪に当たるとされた事例である。

東京地裁平成23年7月20日判決(平成22年刑(わ)第2150号
平成22刑(わ)第2651号、判タ1393号366頁)

 本件は、いわゆるイカタコウイルス(又はタコイカウイルス)と呼ばれるコンピュータウイルスをインターネット上に公開して被害者に受信、実行させた行為が器物損壊罪に問われたものである。

器物損壊罪の「損壊」が物の物理的破壊に限らず、効用喪失を含むとしている(飲食用のすき焼き鍋や徳利に放尿する行為を器物損壊罪にした大審院明治42年4月16日刑録15巻452頁)。本判決は、

  1. 効用侵害の有無につき、ハードデスクは、読み出し機能と書き込み機能の2つが本来的効用で、ウイルスの感染により2つの機能が失われたこと、
  2. いずれの効用も一般人には容易に現状回復できない

として、器物損壊罪の成立を認め、岡部豪裁判長は、被告人を懲役2年6月に処した。「刑法第261条 前3条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

コンピュータ・ウイルスを、「感染」させる行為が、器物損壊罪に当たる、という判例である。

ウイニー事件(刑事)

最高裁平成23年12月19日決定(平成21(あ)第1900号刑集65巻9号1380頁)(刑事事件)
大阪高裁平成19年10月8日判決(平成19(う)第461号)
京都地裁平成18年12月13日判決(平成16(わ)第726号)

 元・東大助手X(金子勇)は、平成14年5月、ファイル交換ソフト・ウイニーを開発し、ネット上に公開し、配布した。平成15年11月、AおよびBは、このウイニーを用いて、米国映画、ゲームソフトを違法にコピーし、ABは、それぞれ、著作権法違反で、逮捕され、懲役1年、執行猶予3年の判決を受けた。開発者Xも逮捕された。

[京都地裁]
平成18年判決は、Xを有罪とした。

Xは、

  1. ウイニーによって、著作権侵害がインターネット上に蔓延することを積極的に企図したとまでは認められないが、
  2. 著作権侵害が起こることを認識しながら不特定多数の者が入手できるようにホームページで公開しており、幇助罪に当たる。
  3. 社会に生じる弊害を十分知りつつ、ウイニーを公開しており、独善的かつ無責任で非難は免れない。

として罰金150万に処した。幇助罪の成立要件として「ウイニーの現実の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的態様がどうかということになる」との基準をあげて、幇助犯成立とした。

「主文」
 被告人を罰金150万円に処する。その罰金を完納することができないときは、金1万円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。訴訟費用は被告人の負担とする。」 Xは控訴した。

[大阪高裁]
平成19年、Xを無罪とした。大阪高裁は、

  1. 著作権侵害の幇助犯の成立は、侵害する者が出る可能性があると認識していただけでなく、ソフトを侵害の用途で使用するようインターネット上で勧めていることが必要であるとし、
  2. 被告人Xは、侵害の可能性を認識していたが、ネット上での発言を見ても著作権侵害の用途で使うよう勧めていたとはいえない。
  3. 原審のように認めると、ソフトが存在する限り、無限に刑事責任を問われることになり、罪刑法定主義の観点から慎重に判断することが必要、

とした。

[最高裁]
最高裁第3小法廷は、検察からの上告を棄却した。
被告人において、本件ウイニーを公開、提供した場合に、例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたとまで認めることは困難である。したがって、被告人は著作権法違反罪の幇助犯の故意を欠く、とした。
言い換えれば、ウイニーは、中立価値のソフトである、入手者のうち例外的といえない範囲の人が著作権侵害に使う可能性を認容して、提供した場合に限って、幇助に当たる、とした。4人の裁判官のうち1人の裁判官は、幇助犯が成立すると反対意見を述べた。

非常に難しい事件である。

[参考文献]
林幹人「ファイル共有ソフトWinnyの公開・提供と著作権法違反幇助罪の成否」(「平成24年度重要判例解説」152頁)

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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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