大家重夫の世情考察

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クラブ・キャッツアイ事件

(最高裁1988年3月15日判決民集42巻3号199頁判時1270号34頁)

 音楽家を雇い、音楽の生演奏をさせていたクラブ・キャッツアイというバーが、それをやめ、カラオケ装置を置いて、客がカラオケで、歌うようになった。
 作詞家作曲家からその著作権を信託的譲渡されている日本音楽著作権協会は、演奏権に基いて、著作権使用料を請求、経営者であるバーを訴えた。
 バーにおいて、カラオケで歌唱しているのは、客か客と従業員であって、経営者は、音痴で歌わないし、店にいないといい、責任主体は、バーの経営者でないと主張した。

 最高裁は、

  1. 客が歌っていたとしても、バーの管理下にあること、
  2. バーは、カラオケスナックとしての雰囲気を醸成し、客の来集を謀り、営業上の利益の増大を意図していること、

を理由に客による歌唱も、著作権法上の規律の観点から、バーの経営者による歌唱と同視しうるとした。

 著作権侵害について、侵害者と思われる者が直接、侵害していないとしても、その行為のなされる状況において、

  1. その仕組みが侵害者の管理下にあること、
  2. 侵害者が利得している場合、

侵害とされる。この判例法理は「カラオケ法理」と呼ばれる。
最高裁平成23年1月27日判決(ロクラクII事件)、知財高裁平成22年4月28日判決(TVブレイク事件)、東京地裁平成19年5月25日判決(MYUTA事件)、東京地裁17年10月7日決定(録画ネット事件)など、このカラオケ法理に拠ると思われる判決は多い。

[参考文献]
井上由里子「著作権判例百選(第二版)」16頁(1994)。
大淵哲也「著作権判例百選(第4版)」190頁(2009)。
市村直也「田中豊編『判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講』(日本評論社)166頁」(2010)
上野達弘「著作権法における『間接侵害』」ジュリスト1326号75頁(2007)。
上野達弘「いわゆる『カラオケ法理』の再検討」「知的財産法と競争法の現代的展開ー紋谷暢男先生古稀記念」(発明協会)781頁(2006)
田中豊「著作権侵害とJASRACの対応」(紋谷暢男編「JASRAC概論」(日本評論社)151頁)(2009)

2ちゃんねる削除義務放置事件

インターネットの運営者はどんな責任があるかが論ぜられた事件である。

東京高裁平成17年3月3日判決(平成16(ネ)第2067号、判時1893号126頁。)
東京地裁平成16年3月11日判決(平成15年(ワ)第15526号)

 インターネットの運営者は、どういう責任を負うか、という事件である。
書籍に掲載された対談記事(原告ら2名が著作権共有)が、ある利用者によりそのまま「2ちゃんねる」に転載され、送信可能化され、アクセスした者に自動公衆送信された。
対談者の1人が、「2ちゃんねる」の運営者に対し、「運営者は著作権侵害を行っている」との警告をし、対談記事の削除を求めて、訴えた。
 原告は、対談記事の発言者、被告は、「2ちゃんねる」の運営者である。

[東京地裁]

  1. 裁判所は、自動公衆送信又は送信可能化差止請求について、相手方が、現に侵害行為を行う主体となっているか、あるいは侵害行為を主体として行うおそれのある者に限られる。被告は、書き込みの内容をチェックしたり、改変したりすることはできず、運営者である被告は、侵害行為を行う主体でない、とした。
  2. 発言者から削除要請があるにも拘わらず、ことさら電子掲示板設置者が要請を拒絶したりすれば、著作権侵害の主体と観念され、差止請求も許容されようが、本件ではその事情はない。プロバイダー責任制限法に照らし、本件では、被告が送信防止装置を講じた場合、同法による発信者に対する損害賠償責任が免責される場合に当たらない、発信者から責任追及されるおそれあり、また被告に送信可能化又は自動公衆送信を止める義務なし。

 原告敗訴。原告控訴。

[東京高裁]
2審では、逆転し、原告が勝訴した。
(1),電子掲示板の設置者は、書込まれた発言が著作権侵害(公衆送信権侵害)に当たるとき、侵害行為を放置しているときは、放置自体が著作権侵害行為と評価すべき場合がある。電子掲示板の運営者は、著作権侵害となる書込みがあったと認識した場合、適切な是正措置を速やかにとる義務がある。著作権侵害が極めて明白な場合、ただちに削除するなど、速やかに対処すべきである。本件の場合、被告は、本件発言がデッドコピーで、著作権侵害と容易に理解し得た。発言者に照会もせず、是正措置をとらなかった。被告は、故意過失により著作権侵害に加担したと評価できる。原告著作権者が、著作権侵害者の実名、メールアドレス等発信者情報を得ることはできず、削除要請が容易であるとは到底言えない。被告は、著作権の侵害者である、とした。

山本隆司「コピライト」2004年8月号20頁は、1審東京地裁判決に対して、17頁にわたり批判的に判例紹介をしている。田中豊も「コピライト」同号7頁(講演録)において東京地裁平成16年3月11日判決に批判的である。草地邦晴・知財管理55巻13号2007頁は、2審東京高裁判決を「貴重な事例を提供するもの」として、好意的である。

ナップスター型音楽ファイル交換事件

インターネットを使って音楽を送受信してもかまわないか。

東京高裁平成17年3月31日判決(判例集未登載)
東京地裁平成15年1月29日中間判決(平成14年(ワ)第4237号。判時1810号29頁、判タ1113号113頁) - 東京地裁平成15年12月17日判決(終局判決、判タ1145号102頁判時1845号36頁)
仮処分、東京地裁平成14年4月11日決定(判タ1092号110頁)

 インターネット上のピア・ツー・ピア(P2P)方式の電子ファイル交換サービスにおいて、ユーザーの間で、音楽著作物を複製して電子ファイルの送受信が行われる。
 これによる著作権侵害が起きる場合において、このサービスの提供者は、どういう責任を負うか。

 被告Y1は、ピアー・ツー・ピア技術を用い、中央サーバー(セントラルポイント、P2Pネトワークの方式の1つでP2Pネットワークを見つけやすくするための入り口として働くホストのこと)を設置し、インターネットを経由して、利用者のパソコンに蔵置されている電子ファイルから他の利用者が好みの音楽のものを選択して、無料でダウンロードできる「ファイルローグ」事業を行っている業者である。
 被告Y2は、Y1の代表者。
 原告Xは、日本音楽著作権協会(JASRAC)である。
原告Xは、被告らに、原告の管理著作物を複製したMP3ファイルを本件サービスにおける送受信の対象とすることの差止めを求めるとともに、Yら2名に対して2億1000万余円の損害賠償金の連帯支払を求めて訴えた。

「東京地裁」 次の点が争われた。

  1. ハイブリッド型P2Pファイル交換サービスのセンターサーバーの提供者が、ユーザーのパソコン間で、直接行われる電子ファイルの送受信の「主体」であるか。
  2. 差止めの対象となる行為の特定方法。
  3. 著作権侵害の主体とプロバイダ責任制限法3条1項「情報の発信者」の関係。
  4. 損害賠償額の認定。

東京地裁平成15年1月29日中間判決および平成15年12月17日判決の結果は、次の通りである。

  1. 1審被告Y1が運営する本件サービスにおいて、Xに無断でXの管理著作物を複製した電子ファイルをユーザーのパソコンの共有フォルダに蔵置した状態で、本件サーバーに接続させる行為は、Xの著作権侵害であり、Y1がその著作権侵害の主体である。
  2. 「送信型パソコンから被告サーバーに送信されたファイル情報のうち、ファイル名または、フォルダ名のいずれかに本件管理著作物の『原題名』を表示する文字及び『アーテイスト』を表示する文字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字、小文字等の表記方法を問わない。姓又は名についてはいずれか一方のみの表記を含む)の双方が表記されたファイル情報に関連つけて、当該ファイル情報に係るMP3ファイルの送受信行為として特定するのが、最も実効性のある方法である。」
  3. Yらは、自らがプロバイダ責任制限法上のプロバイダに該当するので、損害賠償責任を免れると主張したが、Y1は、同法2条4号所定の「発信者」に該当し、同法3条1項による損害賠償責任の免責は適用されない。
  4. 本件サービスにおいて、本件各MP3ファイルが送信可能化ないし自動公衆送信されることによって、原告の受けた使用料相当額の損害額については、特段の事情のないかぎり、本件使用料規程の定める額を参酌して算定するのが合理的である。

しかし、諸事情を考慮し、著作権法114条の4により、2億7932万8000円の概ね10分の1に相当する3000万円(平成3年11月1日から平成14年2月28日までについては概ね10分の1に相当する2200万円)を使用料相当損害額とした。
 裁判所は、JASRAC等のもつ「自動公衆送信権」「送信可能化権」の侵害であるとして損害賠償を命じている。
 このように被告のようなファイル交換サービス事業者は、単に電子ファイルの送受信に必要なファイル情報を提供しているに過ぎないが、管理性があり、営業上の利益を得ていることから、著作権、著作隣接権の侵害行為の主体であるとした。

関係者にとって重要な判例である。

[参考文献]
平嶋竜太・ファイルローグ事件(中間判決)「サイバー判例解説」(商事法務・2003年)60頁。富岡英次・判タ1154号188頁。
田中豊編「判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講(日本評論社・2010年)209頁、356頁、176頁(市村直也執筆)。紋谷暢男編「JASRAC概論」151頁以下、特に185頁(執筆田中豊)。

TVブレイク事件

無許諾の音楽付動画ファイル視聴サービスが音楽著作権者の公衆送信権等を侵害するとされた事例である。

知財高裁平成22年9月8日判決(平成21年(ネ)第10078号判時2115号103頁)
東京地裁平成21年11月13日判決(判時2076号93頁判タ1329号226頁)

(1)東京地裁平成21年11月13日判決
 被告Y1(ジャストオンライン社)は、インターネット上で、動画投稿・共有サービスを運営する会社で、旧商号を株式会社パンドラTVといい、平成17年11月10日、インターネット等の通信ネットワークを利用した映像コンテンツ配信事業等を目的として設立された株式会社である。  被告Y2は、Y1の代表者である。

原告X(日本音楽著作権協会JASRAC)は、音楽著作物の著作権等の管理事業者である。 原告Xは、被告Y1が主体となって、そのサーバーに原告Xの管理著作物の複製物を含む動画ファイルを蔵置し、これを各ユーザーのパソコンに送信しているとして、

  1. 被告Y1に対して著作権(複製権及び公衆送信権)に基づいて、それらの行為の差止を求めると共に、
  2. 被告Y1及び被告Y1代表者Y2に対して、不法行為(著作権侵害)に基づいて過去の侵害に対する損害賠償金及びこれに対する遅延損害金並びに将来の侵害に対する損害賠償金の連帯支払

を求めた。

すなわち、音楽著作権者であるXが、

  1. 別紙記載の音楽著作物を、被告Y1のサーバーの記録媒体に複製し、又は公衆送信することの禁止、
  2. 被告Y1Y2各自が、原告Xへ1億28174888円支払え、
    1. 被告Yらは、原告Xに対し、各自平成20年4月25日から同年11月4日まで1月当たり、944万円支払え、
    2. 被告らは、各自、平成20年11月5日から、被告Y1が別紙サービスにおいて、別紙記載音楽著作物の複製及び公衆送信(送信可能化を含む)を停止するに至るまで1か月当たり504万円支払え、

との請求の訴訟を提起した。

被告Yらは、本件サービスにおいて、著作権侵害の主体は、ユーザーであると主張した。
被告Yらは、原告Xは、本件管理著作物を示すことはしても権利侵害コンテンツとする具体的な権利侵害情報の特定をしないまま漠然と権利侵害通知をしたのみであるから被告Y会社は、具体的な権利侵害の認識はない。放置したことをもって被告Y1が著作権侵害の主体という結論は導くことはできない等の反論を行った。

[東京地裁判決]
民事40部の岡本岳裁判長は、次のように述べて、音楽著作権者の公衆送信権等を侵害するとして、差止請求を認容するとともにし、約9000万円の損害賠償を命じた。
「著作権法上の侵害主体を決するについては、当該侵害行為を物理的、外形的な観点のみから見るべきではなく、これらの観点を踏まえた上で、実態に即して、著作権を侵害する主体として責任を負わせるべき者と評価することができるか否かを法律的な観点から検討すべきである。」「この検討に当たっては、問題とされる行為の内容・性質・侵害の過程における支配管理の程度、当該行為により生じた利益の帰属等の諸点を総合考慮し、侵害主体と目されるべき者が自らコントロール可能な行為により当該侵害結果を招来させてそこから利得を得た者として、侵害行為を直接に行う者と同視できるか否かとの点から判断すべきである。」とし、「被告Y1は、著作権侵害行為を支配管理できる地位にありながら著作権侵害行為を誘引、招来、拡大させてこれにより利得を得る者であって、侵害行為を直接に行う者と同視できるから、本件サイトにおける複製及び公衆送信(送信可能化を含む。)に係る著作権侵害の主体というべきである」とした。

主文

  1. 被告Y1は、1,別紙記載の音楽著作物を、原告のサーバーの記録媒体に複製し、又は公衆送信することをしてはならない。
  2. 被告各自が、原告へ各自8993万円及びうち5748万円に対する平成20年4月24日から支払い済みまで年5分の割合の金員を支払え。
  3. 請求の趣旨第3項(2)に係る訴え中、被告らに平成21年9月12日以後に生ずべき損害賠償金の支払いを求める部分を却下する。
  4. 原告のその余の請求(訴え却下部分を除く)をいずれも棄却する。
  5. (省略)
  6. (省略)

[知財高裁判決]
知財高裁第4部滝澤孝臣裁判長は、原判決の文章を基にして加除あるいは、改変し、その上で、「原判決は相当であって、本件控訴は棄却」とした。
著作権侵害主体について、次のように述べている。
「控訴人会社が、本件サービスを提供し、それにより経済的利益を得るために、その支配管理する本件サイトにおいて、ユーザーの複製行為を誘引し、実際に本件サーバーに本件管理著作物の複製権を侵害する動画が多数投稿されることを認識しながら、侵害防止装置を講じることなくこれを容認し、蔵置する行為は、ユーザーによる複製行為を利用して、自ら複製行為を行ったと評価することができるものである。よって、控訴人会社は、本件サーバに著作権侵害の動画ファイルを蔵置することによって、当該著作物の複製権を侵害する主体であると認められる。また、本件サーバに蔵置した上記動画ファイルを送信可能化して閲覧の機会を提供している以上、公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体と認めるべきことはいうまでもない。以上からすると、本件サイトに投稿された本件管理著作物に係る動画ファイルについて、控訴人会社がその複製権及び公衆送信(送信可能化を含む。)を行う権利を侵害する主体であるとして、控訴人会社に対してその複製又は公衆送信(送信可能化を含む。)の差止めを求める請求は理由がある。」

この知財高裁判決は、一定の条件下、動画投稿サイト自身が複製の主体に当たると認めている、とされる。小泉直樹教授は、「クラウド時代の著作権法」において、「このようなサービスにおいて、動画投稿サイトが投稿された違法著作物のファイル形式の統一を行う場合、当該統一行為自体については47条の9の適用を受けるが、形式を統一したファイルを著作権者に無断でサーバーに蔵置する行為自体は、『準備に必要』とはいえないので違法であることに変わりはない。」とされる。
平成24年著作権法改正により、情報通信の技術を利用した情報提供の場合(各種動画投稿サイト、SNSなど)、「記録媒体への記録または翻案」など準備に必要な情報処理のための利用を、著作権侵害にしない、という「47条の9」が設けられた。このことと、当該情報自体が著作権侵害物であること、は別で47条の9によって影響を受けない、ことが小泉直樹教授、池村聰弁護士の問答(ジュリスト1449号17頁)で明らかにされている。また、サーバーへの蔵置が、「準備」にあたる(当該提供を円滑かつ効率的に行うための「準備」に必要な電子計算機による情報処理を行うのため必要な限度であること)とされれば、47条の9により合法である。
この判決は、クラウド・コンピューテイングに関連して、重要な判決となった。

[参考文献]
岡村久道「プロバイダ責任制限法上の発信概念と著作権の侵害主体」(堀部政男監修「プロバイダ責任制限法実務と理論」(商事法務・2012年)116頁)
田中豊編「判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講」184頁(市村直也執筆)
小泉直樹、池村聰、高杉健二「平成24年著作権法改正と今後の展望」ジュリスト1449号12頁。小泉直樹「日本におけるクラウド・コンピューテイングと著作権」(小泉直樹、奥邨弘司、駒田泰土ほか「クラウド時代の著作権法」勁草書房・2013)25頁。

ロクラクII事件

インターネット通信によるTY番組ネット送信サービスは、著作権侵害、著作隣接権侵害か、という事件である。

知財高裁平成24年1月31日判決(判時2141号117頁。)
最高裁第一小法廷平成23年1月20日判決(民集65巻1号399頁判時2103号128頁判タ1342号100頁)
知財高裁平成21年1月27日判決(平成20年(ネ)第10055号、10069号)
東京地裁平成20年5月28日判決(判時2029号125頁判タ1289号234頁)

[東京地裁]
原告は、日本放送協会、日本テレビ放送網(株)、(株)静岡第一テレビ、(株)東京放送、静岡放送(株)、(株)フジテレビ、(株)テレビ静岡、(株)テレビ朝日、(株)静岡朝日テレビ、(株)テレビ東京である。
 被告は、(株)日本デジタル家電である。

被告は、「ロクラクIIビデオデッキレンタル」という名称の事業を始めようとした。
日本国内で放送されるテレビ番組を複製し、被告のそのサービスの利用者が海外で視聴できるようにしたものである。
すなわち、ハードデイスクレコダー2台のうち、1台(親機)を日本国内に置き、受信するテレビ放送の放送波を親機に入力するとともに、これに対応するもう1台(子機)を利用者に貸与又は譲渡することにより、当該利用者をして、子機を操作する。
親機ロクラクは、インターネット通信機能付き地上アナログ放送用TVチユーナー内蔵ビデオ録画装置をもち、テレビ番組を複製、複製した番組データを子機ロクラクに送信し、子機ロクラクは、インターネット上、親機ロクラクに録画を指示し、親機ロクラクから録画データの送信を受け、これを再生する。利用者は、子機ロクラクで、番組データを再生して、テレビ番組を視聴する。

 原告であるNHK、放送会社は、この被告の行為は、原告らが著作権を有する番組を複製し、又は原告らが著作隣接権を有する放送に係る音又は映像を複製する行為に当たるから、原告らの著作権(複製権=法21条)、又は著作隣接権(複製権=法98条)を侵害するとして、対象番組の複製等の差止、本件対象サービスに供されているハードデスクレコダーの廃棄及び逸失利益等の損害賠償を求めた。
東京地裁民事29部清水節裁判長は、「クラブキャッツアイ事件最高裁判決等を踏まえ」(筆者注、本稿、「クラブキャッツアイ事件」最高裁1988年3月15日判決参照)、被告の提供するサービスの性質に基づき、支配管理性、利益の帰属等の諸点を総合考慮し、被告が本件番組等の複製行為を管理支配しており、それによる利益も得ているとして、被告の侵害主体性を肯定し、原告の著作権又は著作隣接権を侵害しているとし、対象番組の著作物の複製禁止、対象番組の放送に係る音又は影像を録音又は録画の禁止、別紙目録記載の器具の廃棄、NHKへ、226万円、静岡第一テレビへ88万円、日本テレビへ33万円などの判決を下した。被告が控訴し、原告らが附帯控訴した。

[知財高裁]
知財高裁田中信義裁判長は、1審判決と異なる判断を下した。被告(控訴人)は、利用者が私的複製を行う環境を提供しているに過ぎず、主体性はないとした。

知財高裁は、

  1. 本件サービスの目的、
  2. 機器の設置・管理、
  3. 親機ロクラクと子機ロクラクとの間の通信の管理、
  4. 複製可能なテレビ放送及びテレビ番組の範囲、
  5. 複製のための環境整備、
  6. 被告が得ている経済的利益を総合

すれば、被告が本件複製を行っていることは明らかで有る旨主張する原告らの主張に即して、検討の上、「本件サービスにおける録画行為の実施主体は、利用者自身が親機ロクラクを自己管理する場合と何ら異ならず、被告が提供するサービスは、利用者の自由な意思に基づいて行われる適法な複製行為の実施を容易ならしめるための環境、条件等を提供しているにすぎない」として、被告の侵害主体性を否定した。
クラブキャッツアイ事件最高裁判決については、「上記判例は、本件とは事案を異にする」とした。第1審判決中、被告(控訴人)敗訴部分を取消し、原告らの請求をすべて棄却した。原告らが、上告及び上告受理申立をした。

[最高裁]
最高裁(金築誠志裁判長、宮川光治、櫻井龍子、横田尤孝、白木勇裁判官)は、次のように述べて、原審の判断と異なる判断をし、知財高裁に差し戻した。
「放送番組等の複製物を取得することを可能にするサービスにおいて、サービスを提供する者が、その管理、支配下において、テレビアンテナで受信した放送を複製の機能を有する機器に入力していて、当該機器に録画の指示がされると放送番組等の複製が自動的に行われる場合、その録画の指示を当該サービスの利用者がするものであっても、当該サービスを提供する者はその複製の主体と解すべきである。」と述べて、テレビ番組の録画転送サービスにおいて、一定の状況があれば、サービス提供者は複製の主体となることを示し、本件サービスにおける親機ロクラクの管理状況等を認定することなく、テレビ番組等の複製をしているのは、被告ではない、とした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、本件を知財高裁に差し戻した。

[金築誠志裁判官の補足意見]
金築裁判官は、「カラオケ法理」は、「法概念の規範的解釈として、一般的な法解釈の手法の一つにすぎず、特殊な法理論でなく、考慮されるべき要素も行為類型により変わりうる。録画の指示が利用者によってなされるという点にのみ、重点を置くのは相当でない。本件システムを単なる私的使用の集積とみることは、実態に沿わない。著作権侵害者の認定に当たっては、総合的視点に立って行うことが著作権法の合理的解釈である」とした。

[知財高裁]
知財高裁第3部(飯村敏明裁判長、八木貴美子、知野明裁判官)は、上告審において示された判断基準に基づいて、詳細な事実認定を行った。
その上で、インターネト通信による親子機能を有する機器を利用して、海外等において、日本国内の放送番組等の複製又は視聴を可能にするサービスについて、被告であるサービス提供者が、放送番組等の複製の主体であるとした。
放送事業者の著作権及び著作隣接権の侵害をしているとして、原告らの放送番組等の放送回数、平均視聴率、本件サービスの契約数等を斟酌し、著作権法114条の5により、「相当な損害額」を認定した。著作権侵害の損害額は、1番組当たり3万円から24万円。
著作隣接権侵害の損害額は、1社あたり、80万円から400万円と認めた。

知財高裁平成21年1月27日判決は、このサービスの利用者が録画の指示をださなければ、録画が実行されることはないので、利用者を複製の主体とし、この判決は注目された。しかし、最高裁は、この判決を認めなかった。

[参考文献]
『ジュリスト』1423号(2011年6月1日号)(特集まねきTV]/ロクラクII最判のインパクト)。小泉直樹「まねきTV・ロクラクII最判の論理構造とインパクト」『ジュリスト』1423号6頁、田中豊「利用(侵害)主体判定の論理ー要件事実論による評価」『ジュリスト』1423号12頁。上原伸一「放送事業者の著作隣接権と最高裁判決のインパクト」ジュリスト1423号19頁。奥邨弘司「米国における関連事例の紹介ー番組リモート録画サービスとロッカーサービス の場合」『ジュリスト』1423号25頁。「ロクラクII最高裁判決の解説及び全文」『ジュリスト』1423号38頁。
横山久芳「自炊代行訴訟判決をめぐって」ジュリスト1463号36頁。

「まねきテレビ」事件

日本のテレビ番組をインターネットにより、海外の日本人は視聴できるか。

知財高裁平成24年1月31日判決(平成23年(ネ)第10009号)
最高裁平成23年1月18日判決(民集65巻1号121頁、判時2103号124頁、判タ1342号05頁)
知財高裁平成20年12月15日判決(平成20年(ネ)第10059号判時2038号110頁)
東京地裁平成20年6月20日判決(平成19年(ワ)第5765号)

 海外の日本人がインターネット回線を通じて、日本のテレビ番組を鑑賞できるよう日本に居住するAが事業を始めた。
 Aは、コンピュータ、その付属機器の製造販売、電気通信事業法に基づく一般第2種電気通信事業等を目的とする会社である。
Aは、「まねきTV」という名の、インターネット回線を通じてテレビ番組が視聴できるサービスを入会金3万1500円、毎月5040円で、提供しようとした。サービスとは、利用者が購入したソニー製の「ロケーション・フリー」という機器をAの事務所に置いて、インターネット回線に常時接続する専用モニター又はパソコンで、海外の利用者が、インターネット回線を通じてテレビ番組を視聴できるようにするものである。
ロケーションフリーという機器は、地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し、受信する放送をデジタル化し、このデータを自動的に送信する機能を有する機器(ベースステーション)を中核的なものとした機器である。
原告B(NHK,TBSなど)は、放送局である。Bは、Aの事業は、放送局(放送事業者)に無断で、そのテレビ番組を放送する権利すなわち公衆送信権又は送信可能化権を侵害するとして、訴えた。

[東京地裁]
 1審東京地裁は、Bの請求を棄却し、Aは勝訴した。
理由は、

  1. ベースステーションが自動公衆装置に該当すれば、送信可能化権侵害になるが、そのためには、送信者にとって当該送信行為の相手方が不特定または、特定多数の者に対する送信をする機能を有する装置が必要である。ところで、ベースステーションの所有者が利用者であり、サービスを構成する機器類は汎用品で、特別なソフトウエアは用いられていない。従って、ベースステーションによる送信行為は、各利用者によってなされるものだ。ベースステーションは、1対1の送信をする機能で、自動公衆送信装置に該当しない、送信可能化権侵害は認められない。
  2. 自動公衆送信しうるのは、デジタル化された放送で、アナログ放送のままではインターネット回線で送信できない。アナログ放送をベースステーションに入力することは自動公衆送信し得るようにしたものでない。アンテナから利用者までの送信全体が公衆送信(自動公衆送信)に当たらず、公衆送信権侵害は認められない

とし、原告の請求を棄却した。

[知財高裁]
 2審知財高裁は、

  1. 送信可能化とは、自動公衆送信装置の使用を前提とする。
    本件では、各ベースステーションは、あらかじめ設定の単一の機器あてに送信する1対1の送信を行う機能を有するに過ぎない、自動公衆送信装置とはいえない。利用者がベースステーションに放送を入力するなどして、放送を視聴しうる状態に置くことは、放送の送信可能化に当たらない、送信可能化権侵害は認められない。
  2. ベースステーションが自動公衆送信装置に当たらないとすれば、本件サービスにおけるベースステーションからの送信が自動公衆送信としての公衆送信行為にも該当せず、ベースステーションについても送信可能化行為がなされているともいえない。公衆送信権侵害も認められない。

[最高裁]
 最高裁は、次のように述べて事件を知財高裁へ差し戻した。

  1. 公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は、これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても、当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは、自動公衆送信装置に当たる。
  2. 自動公衆送信が、当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としているが、当該装置が受信者からの求めに応じて情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者が、その主体である。
    当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており、これに継続的に情報が入力されている場合には、当該装置に情報を入力するする者が送信の主体である。

 2審では、

  1. ベースステーションを自動公衆送信装置と認めなかったが、最高裁は、自動公衆送信装置と認めた。
  2. 2審では、利用者が主体であるとしたが、最高裁は、ベースステーションをその事務所に置き、管理し、ベースステーションに放送の入力をしているAを主体とした。

[知財高裁]
知財高裁は、本件放送の送信可能化及び本件番組の公衆送信行為の各差止を求める原告(NHK、日本テレビ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京)らの請求には理由があり、被告に対し、著作権及び著作隣接権侵害による損害賠償の支払いを求める原告らの請求も一部理由があるとし、次の判決を下した。

主文

  1. 原判決を取消す。
  2. 被告は、別紙目録記載のサービス(まねきTV)において、別紙放送目録記載の放送(NHKなどが放送波を送信して行う地上波テレビ放送)を送信可能化してはならない。
  3. 被告は、別紙サービス目録記載のサービスにおいて、別紙放送番組目録記載の番組(NHK「バラエテイー生活百科」など)を公衆送信してはならない。
  4. 被告は、原告NHKへ、50万9204円支払え。
  5. 被告は、原告日本テレビ、原告TBS、原告テレビ朝日、原告テレビ東京へ、それぞれ24万0663円支払え。
  6. 被告は、原告フジテレビへ、20万6517円支払え。
  7. 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

知財高裁は、ベースステーションに本件放送の入力をしている者は、被告であり、ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被告であり、本件放送の送信可能化の主体は、被告である。被告の本件サービスによる本件放送の送信可能化は、原告らの送信可能化(著作隣接権)侵害、本件番組の公衆送信は、原告らの公衆送信権(著作権)侵害であるとした。

重要な判決で、多くの判例批評がある。

[参考文献]
島並良「自動公衆送信の主体」(「平成23年年度重要判例解説」281頁。
『ジュリスト』1423号(2011年6月1日号)(特集まねきTV/ロクラクⅡ最判のインパクト)小泉直樹「まねきTV・ロクラクⅡ最判の論理構造とインパクト」『ジュリスト』1423号6 頁、田中豊「利用(侵害)主体判定の論理ー要件事実論による評価」『ジュリスト』1423号12頁、上原伸一「放送事業者の著作隣接権と最高裁判決のインパクト」『ジュリスト』1423号19頁、奥邨弘司「米国における関連事例の紹介ー番組リモート録画サービスとロッカーサービス の場合」『ジュリスト』423号25頁、「まねきTV最高裁判決の解説及び全文」『ジュリスト』1423号32頁。最高裁判決について、岡邦俊「ロケーションフリー」テレビへの入力者は送信可能化権の侵害主体である。」『JCAジャーナル』2011年4月号62頁。山田真紀最高裁調査官・Law & Technology 51号95頁

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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

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2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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