大家重夫の世情考察

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ナップスター型音楽ファイル交換事件

インターネットを使って音楽を送受信してもかまわないか。

東京高裁平成17年3月31日判決(判例集未登載)
東京地裁平成15年1月29日中間判決(平成14年(ワ)第4237号。判時1810号29頁、判タ1113号113頁) - 東京地裁平成15年12月17日判決(終局判決、判タ1145号102頁判時1845号36頁)
仮処分、東京地裁平成14年4月11日決定(判タ1092号110頁)

 インターネット上のピア・ツー・ピア(P2P)方式の電子ファイル交換サービスにおいて、ユーザーの間で、音楽著作物を複製して電子ファイルの送受信が行われる。
 これによる著作権侵害が起きる場合において、このサービスの提供者は、どういう責任を負うか。

 被告Y1は、ピアー・ツー・ピア技術を用い、中央サーバー(セントラルポイント、P2Pネトワークの方式の1つでP2Pネットワークを見つけやすくするための入り口として働くホストのこと)を設置し、インターネットを経由して、利用者のパソコンに蔵置されている電子ファイルから他の利用者が好みの音楽のものを選択して、無料でダウンロードできる「ファイルローグ」事業を行っている業者である。
 被告Y2は、Y1の代表者。
 原告Xは、日本音楽著作権協会(JASRAC)である。
原告Xは、被告らに、原告の管理著作物を複製したMP3ファイルを本件サービスにおける送受信の対象とすることの差止めを求めるとともに、Yら2名に対して2億1000万余円の損害賠償金の連帯支払を求めて訴えた。

「東京地裁」 次の点が争われた。

  1. ハイブリッド型P2Pファイル交換サービスのセンターサーバーの提供者が、ユーザーのパソコン間で、直接行われる電子ファイルの送受信の「主体」であるか。
  2. 差止めの対象となる行為の特定方法。
  3. 著作権侵害の主体とプロバイダ責任制限法3条1項「情報の発信者」の関係。
  4. 損害賠償額の認定。

東京地裁平成15年1月29日中間判決および平成15年12月17日判決の結果は、次の通りである。

  1. 1審被告Y1が運営する本件サービスにおいて、Xに無断でXの管理著作物を複製した電子ファイルをユーザーのパソコンの共有フォルダに蔵置した状態で、本件サーバーに接続させる行為は、Xの著作権侵害であり、Y1がその著作権侵害の主体である。
  2. 「送信型パソコンから被告サーバーに送信されたファイル情報のうち、ファイル名または、フォルダ名のいずれかに本件管理著作物の『原題名』を表示する文字及び『アーテイスト』を表示する文字(漢字、ひらがな、片仮名並びにアルファベットの大文字、小文字等の表記方法を問わない。姓又は名についてはいずれか一方のみの表記を含む)の双方が表記されたファイル情報に関連つけて、当該ファイル情報に係るMP3ファイルの送受信行為として特定するのが、最も実効性のある方法である。」
  3. Yらは、自らがプロバイダ責任制限法上のプロバイダに該当するので、損害賠償責任を免れると主張したが、Y1は、同法2条4号所定の「発信者」に該当し、同法3条1項による損害賠償責任の免責は適用されない。
  4. 本件サービスにおいて、本件各MP3ファイルが送信可能化ないし自動公衆送信されることによって、原告の受けた使用料相当額の損害額については、特段の事情のないかぎり、本件使用料規程の定める額を参酌して算定するのが合理的である。

しかし、諸事情を考慮し、著作権法114条の4により、2億7932万8000円の概ね10分の1に相当する3000万円(平成3年11月1日から平成14年2月28日までについては概ね10分の1に相当する2200万円)を使用料相当損害額とした。
 裁判所は、JASRAC等のもつ「自動公衆送信権」「送信可能化権」の侵害であるとして損害賠償を命じている。
 このように被告のようなファイル交換サービス事業者は、単に電子ファイルの送受信に必要なファイル情報を提供しているに過ぎないが、管理性があり、営業上の利益を得ていることから、著作権、著作隣接権の侵害行為の主体であるとした。

関係者にとって重要な判例である。

[参考文献]
平嶋竜太・ファイルローグ事件(中間判決)「サイバー判例解説」(商事法務・2003年)60頁。富岡英次・判タ1154号188頁。
田中豊編「判例で見る音楽著作権訴訟の論点60講(日本評論社・2010年)209頁、356頁、176頁(市村直也執筆)。紋谷暢男編「JASRAC概論」151頁以下、特に185頁(執筆田中豊)。

ウイニー事件(刑事)

最高裁平成23年12月19日決定(平成21(あ)第1900号刑集65巻9号1380頁)(刑事事件)
大阪高裁平成19年10月8日判決(平成19(う)第461号)
京都地裁平成18年12月13日判決(平成16(わ)第726号)

 元・東大助手X(金子勇)は、平成14年5月、ファイル交換ソフト・ウイニーを開発し、ネット上に公開し、配布した。平成15年11月、AおよびBは、このウイニーを用いて、米国映画、ゲームソフトを違法にコピーし、ABは、それぞれ、著作権法違反で、逮捕され、懲役1年、執行猶予3年の判決を受けた。開発者Xも逮捕された。

[京都地裁]
平成18年判決は、Xを有罪とした。

Xは、

  1. ウイニーによって、著作権侵害がインターネット上に蔓延することを積極的に企図したとまでは認められないが、
  2. 著作権侵害が起こることを認識しながら不特定多数の者が入手できるようにホームページで公開しており、幇助罪に当たる。
  3. 社会に生じる弊害を十分知りつつ、ウイニーを公開しており、独善的かつ無責任で非難は免れない。

として罰金150万に処した。幇助罪の成立要件として「ウイニーの現実の利用状況やそれに対する認識、提供する際の主観的態様がどうかということになる」との基準をあげて、幇助犯成立とした。

「主文」
 被告人を罰金150万円に処する。その罰金を完納することができないときは、金1万円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。訴訟費用は被告人の負担とする。」 Xは控訴した。

[大阪高裁]
平成19年、Xを無罪とした。大阪高裁は、

  1. 著作権侵害の幇助犯の成立は、侵害する者が出る可能性があると認識していただけでなく、ソフトを侵害の用途で使用するようインターネット上で勧めていることが必要であるとし、
  2. 被告人Xは、侵害の可能性を認識していたが、ネット上での発言を見ても著作権侵害の用途で使うよう勧めていたとはいえない。
  3. 原審のように認めると、ソフトが存在する限り、無限に刑事責任を問われることになり、罪刑法定主義の観点から慎重に判断することが必要、

とした。

[最高裁]
最高裁第3小法廷は、検察からの上告を棄却した。
被告人において、本件ウイニーを公開、提供した場合に、例外的とはいえない範囲の者がそれを著作権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識、認容していたとまで認めることは困難である。したがって、被告人は著作権法違反罪の幇助犯の故意を欠く、とした。
言い換えれば、ウイニーは、中立価値のソフトである、入手者のうち例外的といえない範囲の人が著作権侵害に使う可能性を認容して、提供した場合に限って、幇助に当たる、とした。4人の裁判官のうち1人の裁判官は、幇助犯が成立すると反対意見を述べた。

非常に難しい事件である。

[参考文献]
林幹人「ファイル共有ソフトWinnyの公開・提供と著作権法違反幇助罪の成否」(「平成24年度重要判例解説」152頁)

イスラム教徒個人情報インターネット流出事件

インターネット上にイスラム教徒の個人情報が流出したことにつき、原告イスラム教徒の個人情報を警察当局が収集・保管・利用したことは憲法20条等に違反しないが、警視庁の情報管理上の注意義務違反があったとされ、しかし警察庁の監査・監督上の責任は否定され、国家賠償法上、モロッコ、イラン、アルジェリア、チュニジアとの間に相互保証があり、被告東京都は、原告1人へ220万円、原告16人へそれぞれ550万円が支払うよう命じた事例である。

東京地裁平成26年1月15日判決(平成23年(ワ)第15750号、第32072号、平成24年(ワ)第3266号、判時2215号30頁)

原告は、いずれもイスラム教徒で、日本国籍4名、チュニジア共和国国籍6名、アルジェリア民主人民共和国国籍3名、コロッコ人王国国籍3名、イラン・イスラム共和国国籍1名である。

平成22年10月28日頃、インターネット上に、114点のデータがファイル交換ソフト・ウイニーを通じて、掲出された。このデータは、同年11月25日時点で、20を超える国と地域の1万台以上のパソコンにダウンロードされた。データには、履歴書のような書面、モスクへの出入り状況、イスラム教徒との交友関係などがある。

原告等は、

  1. 警視庁、警察庁、国家公安員会は、モスクの監視など憲法上の人権を侵害し、個人情報を収集・保管・利用し、
  2. 個人情報を情報管理上の注意義務違反で、インターネット上に流出し、適切な損害拡大防止措置を執らなかったことは、国家賠償法上違法である

と主張し、東京都(警視庁)、国(警察庁、国家公安員会)に対し、国家賠償法1条1項等に基づき、連帯してそれぞれ1100万円及び遅延損害金の支払いを求めた。

[東京地裁]
民事第41部の始関正光裁判長は、次のように判断した。

  1. 平成22年流出のデータは、警察が作成したもので、警視庁公安部外事第3課が保有していた。警察の情報収集活動は、国際テロ防止のために必要やむを得ないもので憲法20条(信教の自由・国の宗教活動の禁止)、これを受けた宗教法人法84条に違反するものでない。憲法13条(個人の尊重、生命・自由・幸福追求の権利の尊重)でない。
  2. 本件データは、4警察職員(おそらくは警視庁職員)によって外部記録媒体を用いて持ち出された。警視総監には情報管理上の注意義務を怠った過失がある。国家賠償法上の違法性があり、被告東京都に原告が被った損害賠償責任がある。
    警察庁は流出事件の責任はなく、被告国にもない。
  3. 本件で流出した原告の個人情報の種類・性質・内容、当該個人情報が、インターネットによって、広汎に伝播したことを考えると、原告等が受けたプライバシー侵害、名誉権侵害は大きく、原告16人へ、慰謝料各500万円(弁護士費用各50万円)、原告1名には、200万円(テロリストであるような表記をされた原告の妻として氏名、生年月日、住所のみが流出)(弁護士費用20万円)を東京都に命じた。
  4. 原告モロッコ、イラン、アルジェリア、チュニジア間に国家賠償法6条(この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証がある限り、これを適用する。)があると認められ、東京都から損害賠償を受けることができる。
この事件、控訴されているが、控訴審判決を入手していないので、1審のみ掲載する。イスラム過激派による国際テロがあり、警察当局の取締、犯罪の予防、公共の安全、秩序維持をわれわれは期待している。ただ、そのため、個人の自由を必要以上に縛り、侵害しないよう願いたい。アメリカ合衆国では、外国情報監視法裁判所(United States Foreign Intelligence Surveillance Court)は、2013年4月25日、大手のプロバイダベライゾンに対し、顧客の電話記録(電話メタデータ)を90日間、NSA(国家安全保障局)へ提出せよ、と命じている(ルーク・ハーデイング「スノーデンファイル」(日経BP社・2014年)122頁。

[参考文献]
ルーク・ハーデイング著、三木俊哉訳「スノーデンファイル」日経BP社・2014年。
グレン・グリーンウオルド著、田口俊樹・濱野大道・武藤陽生訳「暴露」新潮社・2014年。
上杉隆「ウイキリークス以後の日本」光文社新書・2011年。
柏原竜一「中国の情報機関」祥伝社新書・2013年。

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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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