大家重夫の世情考察

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ジェイフォン事件

著名な営業表示含むドメイン名の使用を不正競争防止法2条1項2号に基づいて差し止め損害賠償も認めた事例である。

東京地裁平成13年4月24日判決(平成12年(ワ)第3545号、判時1755号43頁)

原告X(ジェイフォン東日本株式会社)は、携帯電話による通信サービスを主たる目的とする会社で、グループ企業8社とともに、平成9年2月頃から、「J-PHONE」というサービス名称を使用している。
被告Y(株式会社大行通商)は、水産物、海産物及び食品等の輸入販売を主たる目的とする株式会社である。

Yは、平成9年8月29日、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)から、「j-phone.co.jp」のドメイン名(以下、本件ドメイン名)の割り当てを受け、「http://www.j-phone.co.jp」のアドレスにおいて、ウエブサイトを開設し、そこにおいて、「J-PHONE」「ジェイフォン」「J-フォン」を横書きにした表示(以下、本件表示)をし、レッスンビデオ、携帯電話機、酵母食品等の販売を行っていた。

Xは、Yに対して、

  1. 本件ドメイン名の使用の禁止、
  2. インターネット上のアドレスにおいて開設するウエブサイトから、本件表示を削除すること、及び
  3. 損害賠償950万円

を求めて訴えた。根拠は、不正競争防止法2条1項1号、2号である。

[東京地裁]
民事46部の三村量一裁判長は、次のように判断した。

  1. 被告Yの本件ドメイン名の使用は、不正競争防止法2条1項1号、2号にいう「商品等表示」の使用に該当する。
  2. 「J-PHONE」本件サービス名称は、同法2条1項2号にいう「著名な商品等表示」である。
  3. Yに対し、Xが本件ドメイン名及び本件表示の使用の差し止め、本件ウエブサイトからの本件表示の抹消を求める請求は理由がある。
  4. 被告Yは、本件ウエブサイト内で、いわゆる大人の玩具販売広告、特定企業の誹謗中傷する文章等の表示をし、原告Xの信用毀損行為を故意に行った。
    その損害額は200万円、弁護士費用100万円である。

[判決主文]

  1. 被告は、その営業に関し、別紙目録記載の表示及び「j-phone.co.jp」のドメイン名を使用してはならない。
  2. 被告は、インターネット上のアドレス「http://www.j-phone.co.jp」において開設するウエブサイトから、別紙目録記載の表示を抹消せよ。
  3. 被告は原告に対し、300万円及びこれに対する平成12年4月24日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え。

(4,5,6)省略。

ドメインは、先着順である。著名な会社などは、自他ともに認める自社がそのドメイン名を持ちたいのに出遅れた、そこで、訴えるなど紛争は多い。
ジャックス事件(名古屋高裁金沢支部平成13年9月10日判決、富山地裁平成12年12月6日判決)参照。

ジャクス事件

著名な営業表示と類似の部分を含むドメイン名の使用を不正競争防止法2条1項2号に基づいて差し止めた事例である。

名古屋高裁金沢支部平成13年9月10日判決
富山地裁平成12年12月6日判決(平成10年(ワ)第323号判時1734号3頁)

原告は、株式会社ジャックスといい、割賦購入斡旋等を主たる事業とする会社で、英文では「JACCS CO.LTD.」と表記している。肉太のアルファベットであるJACCSを、指定役務「36 債務の保証、金銭債権の取得及び譲渡…」、で、スリムな書体のアルファベットで、指定役務「35 広告用具の貸与…」、「38、電話機・ファクシミリその他の通信機器の貸与…」「42、電子計算機のプログラム設計・作成または保守。電子計算機の貸与」についてそれぞれ、商標登録を受けている。1部上場の会社である。
被告は、有限会社日本海パクトで、簡易組み立てトレイの販売及びリース等を事業とする有限会社である。

平成10年5月26日、被告は、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)から、「http://www.jaccs.co.jp」というドメイン名の割り当てを受け登録した。同年、9月から、ホームページを開設し、「ようこそJACCSのホームページ」というタイトルで、「取扱商品」等を表示し、そのリンク先に被告の扱う簡易組立トイレや携帯電話などの商品の販売広告をし、のち、ホームページのJACCSの下に、「ジェイエイシーシーエス」と振り仮名を附けた。

原告は、不正競争防止法2条1項1号及び2号を根拠に、被告に対し、

  1. ホームページによる営業活動に、「JACCS」の表示を使用しないこと
  2. 被告は、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、平成10年5月26日受付の「http://www.jaccs.co.jp」を使用しないこと

を求めて、訴訟を提起した。

[富山地裁]
民事部徳永幸蔵裁判長は、不正競争防止法2条1項2号に当たるとして、原告の請求を全て認容した。

[名古屋高裁金沢支部]
控訴を棄却した。「本件ドメイン名」を「jaccs.co.jp」を略称するものとした。控訴審で、原告は付帯控訴により「http://www.」を除いた「jaccs.co.jp」の差止めを求めるよう請求の趣旨を変更、高裁は認めた。

2001-1(東京地裁平成13年4月24日判決、ジェイフォン事件)参照。

[参考文献]
満田重昭・判例時報1764号184頁(判例評論515号30頁)
土肥一史・法律のひろば2001年5月号。土肥一史・発明2001年10月号。
岡村久道・NBL706号14頁、同707号54頁。桐原和典・CIPICジャーナル109号(2001年2月号)。小野昌延・芹田幸子「ジャックス事件」(岡村久道編「サイバー法判例解説」(商事法務・2003年・14頁)

「mp3.co.jp]事件

MP3(音声圧縮技術の国際規格)形式で配信サービスを行うアメリカ合衆国法人に対して、「mp3.co.jp」ドメインをもつ原告が不正競争防止法3条1項に基づく使用差止請求権を有しない、「不正競争行為」に当たらないとの判決を得た事例である。

東京地裁平成14年7月15日判決(平成13年(ワ)第12318号、判時1796号145頁)

MP3は、MPEG(動画や音声を圧縮・伸張する規格)によって策定された音声圧縮規格の1つである。

原告X(有限会社システム・ケイジェイ)は、パソコン周辺機器の開発、輸入、販売等を目的とする会社で、平成11年7月、(社)日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)へ、ドメイン名「mp3.co.jp」を登録した。
被告Y(エムピー3・ドット・コム・インコーポレイテッド)は、アメリカ合衆国において設立され、「mp3.com」の営業表示及び標章を用い、MP3形式によって圧縮処理した音声データをインターネットを通じて、配信するサービスを行う会社で、世界的に著名である。Yは、平成13年3月5日、日本知的財産仲裁センターに対し、Xを相手方に、原告ドメイン名を被告へ移転登録するよう紛争処理の申立をした。仲裁センター紛争処理パネルは、平成13年5月29日、原告ドメイン名を被告へ移転すべき旨の裁定をした。
原告Xは,Yを相手方として、「ドメイン名『MP3。CO.JP』について、不正競争防止法3条1項に基づく使用差止請求権を有しないことを確認する。」旨の訴訟を提起した。裁判では、Xの行為は、不正競争防止法2条1項12号(「不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品表示」「と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為」)に当たるか、であった。Yは、Xがドメイン名を全く利用していないこと、Yの顧客吸引力等を利用する意図があること、Xのサイトが不正確な情報を掲示し、Yの名誉を毀損していると主張した。

東京地裁民事29部飯村敏明裁判長は、Xに「不正の利益を得る目的」も「他人に損害を加える目的」もなかったとし、不正競争防止法2条1項12号所定の不正競争行為にあたらないとして、原告の請求どうり、被告は、原告に対し、ドメイン名『MP3。CO.JP』について、不正競争防止法3条1項に基づく使用差止請求権を有しないことを確認する。」とした。

ドメイン名が原則として、先着順であること、登録に際し、実質的な内容にはいった審査はないため、そのドメイン名を取得した者よりも、そのドメイン名がもっと相応しい企業等は多いと思われる。平成13年の改正不正競争防止法が対応し、これを適用した判例である。2001-1,2001-5参照。

[参考文献]松尾和子・佐藤恵太「ドメインネーム紛争」弘文堂・2001年。

センチュリー21事件

「CENTURY21」の名称で、フランチャイズチェーンを営む原告が、「CENTURY21。CO.JP」のドメイン登録をした被告に対し、フランチャイズ契約違反、不正競争防止法違反に基づき、被告ドメインの使用差止、登録抹消および損害賠償を求め、また被告に対し、被告の法人格は権利濫用で、A社と同視すべきで、原告がA社に有する未払いの債権5532万9175円の支払を求めた事件で、原告の請求を認容した事件である。

東京地裁平成25年7月10日判決(平成24年(ワ)第7616号)

原告Xは、「CENTURY21」の名前で、不動産業者むけのフランチャイズチェーン事業本部であり、加盟店に対する営業支援等を主とする会社である。
被告Yは、原告のフランチャイジーであった不動産業者である。

原告Xと被告Yは、平成23年6月21日、フランチャイズ契約を結んだ。
原告Xのフランチャイジーであった訴外A社(横浜不動産)は、遅くとも平成10年頃、「CENTURY21.CO.JP」(本件ドメイン)を登録し、平成23年6月21日、これをAは、被告Yへ譲渡した。

Xは、Yに対し、

  1. フランチャイズ契約又は不正競争防止法2条1項12号、3条、4条に基づき、本件ドメインの使用差止、登録抹消及び損害賠償を求めた。
  2. 被告Yは、形式上は、A社と別法人だが、法人格の濫用であり、A社と同一視されるべきで、XはA社への債権5532万9175円を有しており、その支払いを求めた。

東京地裁民事29部大須賀滋裁判長は、原告Xの請求をほぼ全部認容した。

「判決主文」

  1. 被告は、建物の賃貸の媒介、建物の売買の媒介、土地の賃貸の媒介、土地の売買の媒介の各役務の提供に関し、「CENTURY21」を含むドメインを使用してはならない。
  2. 被告は、別紙ドメイン名目録のドメインの登録を抹消せよ。
  3. 被告は、原告に対し、平成23年12月28日から別紙ドメイン名目録記載のドメインの登録抹消済みに至るまで、月5万円の割合による金員を支払え。
  4. 被告は、原告に対し、5162万2641円及びこれに対する平成23年3月31日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
  5. 被告は、原告に対し、370万6534円及びこれに対する平成24年3月31日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
  6. 訴訟費用は被告の負担とする。
  7. この判決は、第2項を除き、仮に執行することができる。
判決文において、多くの場合、遅延利息は「年5分」であるが、この事件、商人同士であり、「年6分」である。日本でも、まだこういう不動産業者が存在し、外国の大手の企業を騙す者がいることに驚く。

家庭用脱毛器事件

インターネット上に公開されているウエブページにおいて、家庭用脱毛器を販売している原告の商品ケノンに類似の「ケノン.asia」を使う者がおり、原告商品は高価だが、訴外他社商品の方に比べると劣る等の品質誤認させるような記載をし、不正競争防止法違反行為で原告の権利を侵害されているとして、原告がその発信者情報の開示を求め、認容された事例である。

東京地裁平成26年12月18日判決(平成26年(ワ)第18199号)

原告((株)エムロック)は、インターネットの「ケノン公式ショップ」等において、家庭用脱毛器に「ケノン」との特定商品表示を付して、これを販売している。
被告は、ウエブページが蔵置されたレンタルサーバーを保有、管理している「さくらインターネット株式会社」である。

原告は、ネット上のウエブページにおいて、権利を侵害されたとして、不正競争防止法2条1項12号又は同項13号の不正競争を行った者に対する損害賠償請求を行うため、被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告のサイトのウエブページが蔵置されたサーバー領域利用者である契約者の住所氏名等の発信者情報の開示を求めた。

東京地裁民事第47部高野輝久裁判長は、次のように判断し、被告が開示関係役務者であるとし、被告へ、別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を命じた。

  1. サイトの契約者は、不正の利益を得る目的で、原告の特定商品表示である「ケノン」と類似の「ケノン .asia」とのドメインを使用するもので、これは、不正競争防止法2条1項12号の不正競争に該当する。
  2. サイトにおいて、訴外他社の商品は、「78ジュールの出力は業界ナンバー1」「業界1の髙出力」であるとし、「みんなの評価」の見出しのもとで、訴外他社の総合評価を
  3. 7ポイント、原告商品を3.3ポイントなどと表示したことは、不正競争防止法2条1項13号に該当する。

これらの侵害情報の流通によって、原告の権利が侵害されたことは明らかであるとした。

家庭用脱毛器を販売する業者間の競争が激しいこと、商品の性質上、インターネットにおいて広告することが有効であることが窺える。この事件の原告代理人は、「ネット検索が怖い」(ポプラ新書・2015年5月)の著者、神田知宏氏である。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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