大家重夫の世情考察

タグ「ソースコード」が付けられている判例

「大道芸研究会」事件

大道芸研究会の元会員のXは、ウエブサイトの画面およびソースコードを作成し、管理し、大道芸研究会の情報を発信したが、ウエブサイト画面とそのソースコードは、Xの著作物であるとし、会員の被告Yが作成し、自己の管理するウエブサイトに掲載した行為は、Xの著作物の同一性保持権侵害あるいは一般不法行為に当たると主張したが、Xの請求が棄却された事例である。

東京地裁平成24年12月27日判決(平成22年(ワ)第47569号)

原告Xは、昭和60年に大道芸研究会の会員になり、平成22年3月末、退会した。
被告Yは、大道芸研究会会員である。

Xは、会員であった平成12年頃、「大道芸研究会」という本件ウエブサイトを開設し、「画面」及びその「ソースコード」(HTML)を作成し、Xは、X個人の著作した著作物としていた。
被告Yは、平成22年2月1日、本件ウエブサイトのソ-スコードを取り込み、新たな情報を追加するなどして、「大道芸研究会」と題する被告ウエブサイトを開設し、管理した。

原告Xは、被告Yが、別紙被告画面目録1ないし7記載の各画面(被告画面)を作成し、自己の管理するウエブサイトに掲載した行為は、

  1. Xの有する同一性保持権侵害行為である、
  2. 仮にそうでないとしても、被告Yの一連の行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する一般不法行為である

とし、Yに対し、損害賠償160万円を求めて訴えた。

東京地裁民事第46部大鷹一郎裁判長は、次のように判断し、原告Xの請求をいずれも棄却した。

  1. 原告Xは、各画面は、画面構成(デザイン・レイアウト)において、Xの思想感情を創作的に表現した著作物と主張したが、画面構成のうち、創作性があると挙げている点は、いずれもありふれた表現である、Xの各画面には原告主張の表現上の創作性が認められない、とし、各画面が全体として著作物に該当するとの原告の主張は理由がないとした。
  2. Xのソースコードの著作物性について、「本件ソースコードは、原告がフロントページエクスプレスを使用して本件画面っを作成するに伴ってそのソフトウエアの機能により自動的に生成されたHTMLソースコードであって、原告自らが本件ソースコードそれ自体を記述したものではないことからすると、本件ソースコードの具体的記述に原告の思想又は感情が創作的に表現され、その個性が現れているものとは認められない。」とした。
  3. 一般不法行為に当たるか、について、北朝鮮映画事件(最高裁平成23年12月8日判決)を引用し、著作権法の著作物に該当しないものの利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の独占的な利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り不法行為を構成しない、とし、Xの請求を否定した。
大道芸研究会の内紛がなければ、原告は会に留まっていたであろう。原告は、研究会のウエブサイトに愛着があった。

スマートフォン事件

KDDIのスマートフォン「REGZA Phone IS04」は、特許権を侵害していないという判例である。

東京地裁平成27年2月27日判決(平成26年(ワ)第65号)

原告(株式会社コアアプリ)は、名称を「入力支援コンピュータプログラム、入力支援コンピュータシステム」とする特許権について、これをもつ特許権者である。
被告(KDDI株式会社)は、移動通信及び固定通信を業とする法人である。

原告は、被告に対して、「

  1. 「REGZA Phone IS04」を生産、譲渡、輸入、輸出し、又は譲渡の申出をしてはならない。
  2. 被告は、その占有に係る前記記載の製品、及び前記記載の製品に搭載されたソフトウエアのソースコードとバイナリイメージを廃棄せよ。また被告は、前記記載の製品に搭載されたソフトウエアのソースコードとバイナリイメージの製造設備を除去せよ。
  3. 被告は、原告に対し、252万円及びこれに対する平成23年10月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

」という請求の訴訟を提起した。

被告が販売するスマートフォン「REGZA Phone IS04」、またはこれにインストールされている「ホーム」と呼ばれているソフトウエア(本件ホームアプリ)が、原告の特許権をとった発明の技術的範囲内に属し、特許権を侵害している、というのである。
東京地裁民事29部の嶋末和秀裁判長は、「本件ホームアプリは、少なくとも構成要件Eを充足せず」、「本件発明1,3の技術的範囲に属しない。」「本件ホームアプリが、構成要件Eを充足しない以上、これをインストールした被告製品は、構成要件H、Iのうち」、「本特許の特許請求の範囲の請求項1,3を引用する態様を充足しているとはいえず、本件発明4,5のうちの上記態様の技術的範囲に属しない。」として、原告の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、「

  1. 原告の請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。

」との判決を下した。

バイナリイメージには、どういう訳語がいいのだろうか。バイナリ(Binary)は、数値の表し方の1つで、0と1からなる2進法のことをいう。アプリは、Applicationの省略で、ワープロ・ソフト、表計算ソフトなど作業の目的に応じて使うソフトウエア、プログラムを指す。これに対し、OS、ドライバー、ファームウエアなどコンピュータの制御に使われるソフトウエアをシステム・ソフトウエアという。
ページトップへ

中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出のイメージ

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出 【2,800円+税】

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社のイメージ

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社 【4,500円+税】

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例のイメージ

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例 【2,800円+税】