大家重夫の世情考察

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2ちゃんねる名誉毀損事件

インターネットのウエブサイトにおける書き込みが名誉毀損の不法行為に当たるとして、書込みの発信者に慰謝料100万円、弁護士費用10万円、書込みの発信者の調査費用63万円、合計173万円の損害賠償が認められた事例である。

東京地裁平成24年1月31日判決(平成23年(ワ)第5572号、判時2154号80頁)

原告Xは、システムエンジニアを行う個人事業主である。
被告Y1,は、電気通信機器の販売、工事および保守等を行う株式会社である。被告Y2は、被告Y!の従業員である。

Xは、Y1会社との間で、包括的な業務委託契約を締結し、それに基づいて、株式会社戊田(以下、戊田社)において、システム担当として働いている。
不特定多数の者が閲覧可能な「2ちゃんねる」と題するウエブサイト内の「戊田社総合スレッド」というスレッドにおいて、Xの実名、風貌等に言及、「女子トイレに入るのを見た」、Xらしい人物が、盗撮をしたとうかがわせる「会社の女子トイレの盗撮映像がネットにながれているがいいんか」などと書かれていた。Xは、戊田社の役員から、書き込みの事実を指摘され、来期は、契約がないかも知れないと、言われた。Xは、書き込みの主体を特定するため、弁護士に依頼し、調査費用63万円をかけて、Y1会社の従業員Y2が、書き込みの犯人であると突き止めた。

Xは,Y1,Y2に対し連帯し、名誉毀損の不法行為として慰謝料400万円、弁護士費用100万円、調査費用63万円の合計503万円の損害賠償を請求した。
東京地裁杉本宏之裁判官は、Y2が、Y1の職務執行中でなく、休暇中に、Y2の携帯電話ドコモの「F904i」から投稿されたと認定し、次の判決を下した。

[主文]

  1. 被告Y2は、Xに対し、173万円(慰謝料100万円、弁護士費用10万円、書き込み発信者の調査費用63万円)及びおれに対する平成22年6月25日から支払済みまで年5分の割合の金員を支払え。
  2. 原告のその余の請求を棄却する。
  3. 訴訟費用(省略)。
  4. 1項に限り、仮に執行することができる。
本件書き込みは、携帯電話からなされている。Y2は、Xへ恨みがあったのであろうか。Y2は、分からないと思っていたのであろうか。民法710条により、Y1会社にも責任があると、Xは主張したが、就業時間外であるとし、使用者責任が否定されている。Y1会社とXは、どういう関係だったか知りたい。

iモードID事件

インターネット上の電子掲示板で名誉を毀損された者が接続サービス会社に対し発信者情報の開示請求と損害賠償請求をおこなったが、損害賠償請求は棄却された事例である。

金沢地裁平成24年3月27日判決(平成22年(ワ)第559号、判時2152号62頁)

原告Xは、インターネット上の電子掲示板における氏名不詳の発信者によるスレッドの立ち上げ及び投稿により名誉を毀損され又はプライバシー権を侵害されたとして、プロバイダーであるY会社(エヌ・テイ・テイ・ドコモ)に対して、プロバイダ責任制限法4条1項所定の発信者情報開示請求権に基づき、本件発信者が使用した電気通信回線に係る識別番号(iモードIDほか)によって特定される電話番号の契約者の氏名又は名称及び住所の開示を求めるとともに、Y会社が本件IDに係る契約者の情報を保存しなかったために精神的苦痛を被ったとして慰謝料50万円と遅延損害金の支払いを求めて訴えた。
Xは、投稿の中で浮気・不倫をしたなど誹謗中傷されていた。

金沢地裁は、「被告は、原告に対し、別紙アクセスログ記録7記載の投稿に使用された電気通信回線に係る識別番号(iモードID:05E0…)によって特定される契約者の氏名又は名称及び住所を開示せよ。)」として、発信者情報の開示は認めた。
しかし、損害賠償請求については、Y会社が、iモードIDによって特定される契約者の氏名住所等が「発信者情報」に該当する旨の司法判断がなく、その認識がなく、認識が容易であったとまでいえない、として、Y会社に故意又は重大な過失はないとした。

Xは、浮気、不倫をしていると書かれ、傷ついたと思うが、金沢地裁は、NTTドコモに故意過失なく、慰謝料なしでいいと考えた。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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