大家重夫の世情考察

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住宅ローン金利比較表事件

被告である(財)住宅金融普及協会のホームページ中の「住宅ローン商品 金利情報」が、原告ウエブサイトの「図表」あるいは「編集著作物」、「データベースの著作物」の著作権侵害であると主張し、被告の当該ウエブページの閉鎖と706万4000円の損害賠償を求めたが、請求を棄却された事例である。

東京地裁平成22年12月21日判決(平成22年(ワ)第12322号)

原告は、平成20年4月から「銀行商品コム」という名称のウエブサイトに住宅ローン金利の比較表を掲載し、ここに図表部分がある(これを「本件図表」という)。図表の金利情報は、随時更新されている。
被告は、(財)住宅金融協会で、平成20年頃から、「住まいのポータルサイト」という名のウエブサイトを運営し、ここに「住宅ローン商品 金利情報」を掲載している。金利情報は随時更新されている。

原告は、

  1. 本件図表は、「図表の著作物」(著作権法10条1項6号)である。
  2. 本件図表は、「編集著作物」(同法12条1項)である。
  3. 本件図表は、「データベース」の著作物である、

と主張し、被告により、複製権及び公衆送信権が侵害されたとして、706万4000円(バナー広告料収入相当額の損害570万円、有料会員会員料金相当額4月分136万4000円)の損害賠償と当該ウエブページの閉鎖を求めた。

被告は、本件図表の著作物性を争い、また、被告は独自に被告図表を作成し、原告の本件図表に依拠していない、59箇所の相違点がある、本件図表は「一般的にありふれたもの」と主張した。東京地裁民事第46部大鷹一郎裁判長は、「本件図表が『図形の著作物』『編集著作物』又は『データベースの著作物』であることを認めることはできない。」として原告の請求を棄却した。

原告には、訴訟代理人がついていない。

「Shibuya Girls Collection」事件

原告主張のShibuya Girls Collectionの商標権侵害及び不正競争防止法違反による損害賠償責任を認め、被告標章の使用差止、Webサイトその他からの抹消と1100万円の支払を裁判所に出頭しなかった被告が命ぜられた事例である。

東京地裁平成24年4月25日判決(平成23年(ワ)第35691号)

原告は、(株)T-Garden。
被告は、アジムット株式会社ことX。

原告は、ファッションショーの企画・運営又は開催、ファッション情報の提供を指定役務とする「Shibuya Girls Collection」の商標権を有している。欧文字を赤色で横書きし、各文字を白色で縁取りし、その外側を黒色線で縁取りし、「i」の黒点及び「o」の内側の円が星形に図案化されている。
被告は、Webページに、「SHIBUMO GIRLS COLLECTION」「シブモガールズコレクション」等の標章を使用した。

原告は、被告行為は、

  1. 商標法37条1号の商標法違反、
  2. 不正競争防止法2条1項1号の「不正行為」であり、商標法36条及び不正競争防止法3条に基づき、
  3. 被告各標章の使用の差し止め、及び、
  4. Webページその他営業物件からの被告各標章の抹消を求め、
  5. 商標権侵害の不法行為責任(民法709条、710条)または不正競争防止法4条に基づき、

1100万円の支払いを求めた。

被告は、呼び出しを受けながら口頭弁論期日に出頭せず、答弁書、準備書面等を提出しなかった。訴訟代理人はいない。

東京地裁地裁民事29部大須賀滋裁判長は、原告の請求通り、

  1. 被告の営業上の施設又は活動に被告標章を使用することの禁止、
  2. 被告標章を、別紙Webページ目録記載のインターネット上のWebサイトその他の営業表示物件から抹消せよ。
  3. 被告は、原告へ1100万円及び平成24年3月8日から支払済みまで年5分の金員を支払え

との判決を下した。

原告は、被告から、実際に、1100万円の支払を受けたであろうか。

「PLUS」発信者情報事件

被告のレンタルサーバーに記録されたウエブページによって、商標権侵害及び不正競争防止法の営業上の利益を侵害された原告が、プロバイダ責任制限法に基づき、被告が保有する発信者情報の開示を求め、認容された事件である。

東京地裁平成24年6月28日判決(平成23年(ワ)第37057号)

原告は、オフイス家具、オフイスインテリア用品、文具、事務用品等の製造、販売等を行う株式会社で、「プラス株式会社」という。
被告は、インターネットを利用した情報提供、ドメイン取得サービス、レンタルサーバーの提供等を行う株式会社paperboy&co.で、インターネット上で不特定多数の者に対する送信をすることを目的とするレンタルサーバーを保有している。

平成23年8月迄に、被告のレンタルサーバーに、「+人材派遣プラスPLUS」「人材派遣プラス+」および「Plus」なる標章が記載されたウエブページの情報が記録された。

原告は、このウエブページの記録は、

  1. 原告の商標権侵害である。
  2. 不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為である。
  3. 不正競争防止法2条1項2号の不正競争行為である、

と主張し、発信者情報の情報開示を求めた。

東京地裁民事47部高野輝久裁判長は、2)の主張を採り、原告の「PLUS」の表示(商品等表示)は、需要者の間に広く認識されていたと認め、被告が、ウエブページ上でその営業を表示するものとして、本件各標章を使用する行為は、不正競争防止法2条1項1号に該当し、原告の営業と混同を生じさせるもので、原告の営業上の利益が侵害された、とし、原告が、損害賠償請求権を行使するため、発信者情報が必要で、その開示を受けるべき正当な理由がある、とし、被告は原告へ、「別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ」と命じた。

この事件では、原告は、被告へ開示を求めなくても、人材派遣会社の住所代表者等を把握できたのではないだろうか。

クリニック情報事件

原告である医師は、被告が運営するウエブページ掲載のクリニックについての情報が誤っており、原告の人格権および業務遂行権(財産権)を侵害しているとして、不正競争防止法2条1項14号(不実記載)であるとして、ウエブページの表示の抹消、損害賠償200万円を求めたが、原告の請求がすべて棄却された事例である。

東京地裁平成25年3月6日判決(平成22年(ワ)第13704号)

原告は、Aクリニックという名称の診療所を開設する医師である。
被告((株)チューン)は、ホームページの作成等を主な業務とする株式会社で、(株)メデイラインから委託を受けて、インターネット上のアドレスにおいて、「Aクリニック」の名前を標榜するウエブサイトを開設している。

平成17年12月、本件クリニックが管理者原告で開設された。
メデイラインが本件クリニックの開設に当たり、経費等を負担、原告が医療知識等を提供する契約が締結された。
被告は、原告の了解を得たメデイアラインから、本件クリニックのホームページ制作及び開設の委託を受けて、これを運営している。
平成18年9月27日、原告とメデイアライン、被告らと協力関係が破綻し、原告は、メデイアラインの関与なしに、本件クリニックを運営した。
被告代表者は、平成19年9月11日設立の医療法人社団スペクトラムの理事に就任した。この団体は、Aクリニックから1キロ離れた場所に、「Bクリニック」を開設した。

原告は、

  1. 被告に対し、本件ウエブサイトの運営が原告に対する不法行為である、
  2. 被告による本件ウエブサイトの運営が不正競争防止法2条1項14号の「不正競争」にあたる

と主張した。

東京地裁民事40部東海林裁判長は、本件クリニックの事業主体は、原告ではなく、訴外の「組合契約または組合類似の契約」に基づく「組合」であるとして、被告が、この組合から委託を受けて、クリニックのウエブサイトを運営していることは、原告の権利を侵害するものではない、不正競争についても、原告被告間に競業関係はない、とし、原告の主張をしりぞけ、原告の請求をすべて棄却した。

原告は、本件クリニックを運営しているつもりだったが、判決は、訴外の「組合」であったと、認定した。原告は、まったく、自力で運営していると思っていたのだろうか。経費を負担していたメデイアラインが脱退した後、「組合」が負担したようだが、原告は知らなかったのだろうか。

家庭用脱毛器事件

インターネット上に公開されているウエブページにおいて、家庭用脱毛器を販売している原告の商品ケノンに類似の「ケノン.asia」を使う者がおり、原告商品は高価だが、訴外他社商品の方に比べると劣る等の品質誤認させるような記載をし、不正競争防止法違反行為で原告の権利を侵害されているとして、原告がその発信者情報の開示を求め、認容された事例である。

東京地裁平成26年12月18日判決(平成26年(ワ)第18199号)

原告((株)エムロック)は、インターネットの「ケノン公式ショップ」等において、家庭用脱毛器に「ケノン」との特定商品表示を付して、これを販売している。
被告は、ウエブページが蔵置されたレンタルサーバーを保有、管理している「さくらインターネット株式会社」である。

原告は、ネット上のウエブページにおいて、権利を侵害されたとして、不正競争防止法2条1項12号又は同項13号の不正競争を行った者に対する損害賠償請求を行うため、被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、被告のサイトのウエブページが蔵置されたサーバー領域利用者である契約者の住所氏名等の発信者情報の開示を求めた。

東京地裁民事第47部高野輝久裁判長は、次のように判断し、被告が開示関係役務者であるとし、被告へ、別紙発信者情報目録記載の各情報の開示を命じた。

  1. サイトの契約者は、不正の利益を得る目的で、原告の特定商品表示である「ケノン」と類似の「ケノン .asia」とのドメインを使用するもので、これは、不正競争防止法2条1項12号の不正競争に該当する。
  2. サイトにおいて、訴外他社の商品は、「78ジュールの出力は業界ナンバー1」「業界1の髙出力」であるとし、「みんなの評価」の見出しのもとで、訴外他社の総合評価を
  3. 7ポイント、原告商品を3.3ポイントなどと表示したことは、不正競争防止法2条1項13号に該当する。

これらの侵害情報の流通によって、原告の権利が侵害されたことは明らかであるとした。

家庭用脱毛器を販売する業者間の競争が激しいこと、商品の性質上、インターネットにおいて広告することが有効であることが窺える。この事件の原告代理人は、「ネット検索が怖い」(ポプラ新書・2015年5月)の著者、神田知宏氏である。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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