大家重夫の世情考察

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速読本舗事件

書籍の要約文を掲載するウエブサイトは、許されるか。

東京地裁平成13年12月3日判決(平成13年(ワ)第22067号、判時1768号116頁)

 平成8年頃、Y(有限会社コメットハンター、本社福井市)は、インターネット・プロバイダAとサーバースペース提供に関する契約を締結し、Yのホームページを開設、そこに、ビジネス書の要約文を紹介するサイト「速読本舗」を置いた。
 Yは、毎月4冊のビジネス書を選び、その要約文を作成し、会費を支払った個人、法人の会員にメールサービスによって、書籍要約文を送信した。また、毎月、一冊の書籍要約文をホームページ上に無料で公開し、新規にこのサービスに加入する会員を募集した。
 Yは、要約した書籍の著者には、全く無断で、報酬も支払わず、連絡もしなかった。

 江口克彦、竹村健一、田原総一朗ら9名の著名な評論家、文化人、経営者である書籍の著者X1~X9らが、原告となって、Yに対し、複製権、翻案権、公衆送信権、送信可能化権及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するものとして、その差止めと損害賠償を請求して訴えた。 X1らは、インターネット・プロバイダAへも著作権侵害で訴えた。

[東京地裁判決]
被告Yは、答弁書、準備書面を提出せず、口頭弁論期日にも出頭しなかった。民事29部飯村敏明裁判長は、Yが請求原因事実を認め、自白(民事訴訟法159条、179条)したものとみなし、原告の請求をすべて認容したものとした。

[判決主文]

  1. 被告は別紙書籍要約文を自動公衆送信又は自動公衆送信可能化してはならない。
  2. 被告は、被告の開設するウエブサイトから別紙各書籍要約文を削除せよ。
  3. 被告は、各原告に対し、それぞれ金110万円(うち10万円は弁護士費用)及びこれに対する平成13年10月28日から各支払済みまで年5分の金員を支払え。

 なお、Xらは、Aの行為も著作権侵害であると主張、Aに対し差止及び損害賠償を求めたが、XA間で、裁判上の和解が成立した(和解条項は判時1768号118頁に掲載。)

被告は、著者、出版社の承諾をとり行うか、被告が読み、褒めるなり、批判するなりして、文章を前後に書き、「引用」の形式で、試みる方法があった。

[参考文献]
山本順一・「速読本舗事件」「サイバー法判例解説」(商事法務・2003年)26頁。

「モータ」ウエブ特許権侵害事件

発明の名称を「モータ」とする日本国特許権をもつ日本企業は、被告の韓国企業がその侵害をした物件の譲渡の申出をしているとし、その差止請求及び損害賠償請求を行ったが、被告企業は、そのウエブサイトで被告物件の譲渡の申出をしたと認められず、日本に国際裁判管轄がないとして、1審では、訴えが却下されたが、2審で原判決が取り消され、大阪地裁に差し戻された事例である。

知財高裁平成22年9月15日判決(平成22年(ネ)第10001号、第10002号、第10003号)
大阪地裁平成21年11月26日判決(平成20年(ワ)第9732号、判時2081号131頁)

原告X(日本電産株式会社)は、「モータ」という名称の特許権を有している。
被告Y(三星株式会社)は、サムスングループに所属する韓国法人で、日本に主たる事務所又は営業所を持たない(2008年当時、売上高4兆2845億ウオン、従業員24000名)。

Xは、被告Y(三星電機株式会社)のY物件は、X発明の技術的的範囲に属するもの、即ち特許権を侵害しているとし、

  1. Yは、特許法100条1項に基づく被告物件の譲渡の申出の差止め、および
  2. 不法行為に基づく損害賠償金300万円及び遅延損害金の支払を求めて、訴えた。

すなわち、Xは、Yが日本国内で閲覧可能なウエブサイトで、被告Y物件を紹介するとともに、被告物件の販売の申出を行っている、と主張した。
Yは、日本に於けるY物件の譲渡の申出又はそのおそれにつき証明がされていない、とし、日本に国際裁判管轄がないと主張した。

[大阪地裁]
民事21部田中俊次裁判長は、次のように判断した。

  1. 国際裁判管轄の判断基準について。
     日本の裁判所に提起された訴訟の被告が、外国に本店を有する外国法人の場合、当該法人が進んで服する場合のほかは、日本の裁判権が及ばないのが原則である。例外として、当事者間の公平や裁判の適正・迅速の理念により条理にしたがって日本の国際裁判管轄を肯定しうる。(最高裁昭和56年10月16日判決)。
    そして、日本の民訴法の裁判籍のいずれかが日本国内にあるときは、原則として被告を日本国の裁判籍に服させるのが相当だが、日本で裁判を行うことが当事者間の公平、裁判の適正・迅速の理念を期するという理念に反する特段の事情があると認められる場合には、日本の国際裁判管轄を否定すべきである(最高裁平成9年11月11日判決)。
  2. 民訴法5条9号の不法行為地の裁判籍の規定に依拠して、日本の国際裁判管轄を肯定するためには、原則として、Yが日本においてした行為によりXの法益について損害が生じたことの客観的事情が証明されることを要し、かつそれで足りる(最高裁平成13年6月8日判決(ウルトラマン事件判決))。日本において損害が発生したことが証明されるのみでは足りず、不法行為の基礎となる客観的事実としてXが主張する事実、すなわち、本件においては、日本国特許権である本件特許権の侵害事実としての、日本におけるY物件の譲渡の申出の事実が証明される必要がある。
  3. Yのウエブサイトの表示、営業部長の陳述書、日本語で「経営顧問」と標記されたYの経営顧問の名刺、送達の経緯等を考慮しても、Yが日本において、Y物件の譲渡の申出を行った事実を認めることはできない。不法行為に基づく日本の国際裁判管轄を否定した。
  4. 特許権侵害差止請求の国際裁判管轄について、日本における譲渡の申出の事実が証明されなくても、そのおそれを具体的に基礎づける事実(抽象的なおそれでは足りず、具体的であること)が証明された場合、条理により、日本の国際裁判管轄を肯定する余地もあるが、本件では、Y物件の譲渡の申出をする具体的なおそれがあると推認することはできないとし、特許権侵害の差止請求についても日本の国際裁判管轄を否定し、

    [判決主文]

    1. 本件訴えを却下する。
    2. 訴訟費用は原告の負担とする。

1審原告日本電産株式会社が控訴した。

[知財高裁]
第2部中野哲弘裁判長は、「主文 1,原判決を取り消す。2,本件を大阪  地裁に差し戻す。」と判決した。理由は、以下の通り。

  1. 「特許権に基づく差止請求は」「民訴法5条9号にいう『不法行為に関する訴え』に含まれる」(最高裁平成16年4月8日判決)。不法行為地は、加害行為地と結果発生地の双方が含まれる。「Yによる『譲渡の申出行為』について、申出の発信行為又はその受領という結果の発生が客観的事実関係として日本国内においてなされたか否かにより、日本の国際裁判管轄の有無が決せられる」とした。
  2. 「Yが、英語表記のウエブサイトを開設し、製品として被告物件の1つを掲載」「『Sales Inquiry』(販売問合せ)として『Japan』(日本)を掲げ、『Sales Headquarter』(販売本部)として、日本の拠点(東京都港区)の住所、電話、Fax番号が記載されていること、日本語表記のウエブサイトにおいても、『Slim ODD Motor』を紹介するウエブページが存在し、同ページの『購買に関するお問合わせ』の項目を選択すると、『Slim ODD Motor』の販売に係る問合せフォームを作成することが可能であること…(以下省略)」「などを総合的に評価すれば、Xが不法行為と主張する被告物件の譲渡の申出行為について、Yによる申出の発信行為又はその受領という結果が、我が国において生じたものと認めるのが相当である。」「我が国における当該サイトの閲覧者は、英語表記のウエブサイトにより、少なくとも被告物件の1つについての製品の仕様内容を認識し、日本所在の販売本部の住所等を知りうるだけでなく、日本語表記のウエブサイトにおいても、『Slim ODD Motor』の製品紹介を見て、『購買に関するお問合わせ』の項目を選択し、『Slim ODD Motor』の販売に係る問合せフォームを作成することが可能なのであるから、これらのウエブサイトの開設自体がYによる『譲渡の申出行為』と解する余地がある。」
インターネット上の知的財産権侵害について、その国際裁判管轄が問題とされた事例である。1審は、裁判管轄権はないとし、2審は認めた。
特許法2条3項の「譲渡の申出」は、平成6年改正で追加された。「申出」には、発明に係る物を譲渡のために展示する行為は含まれる。1審で、原告は、インターネット上で、「譲渡の申出」があったと主張したが、認められなかった。2審は、ウエブサイトの態様等を理由に不法行為地に基づく、日本の国際裁判管轄を認め、大阪地裁に差し戻した。
最高裁平成13年6月8日判決(ウルトラマン事件判決)については、上松盛明・大家重夫「ウルトラマンと著作権」(青山社・2015年2月)に判決文が掲載されている。

[参考文献]
1審判決につき、道垣内正人・Law &Technology 50号80頁(2011年1月)。2審判決につき、横溝大「特許権被疑侵害製品のウエブサイトへの掲載と国際裁判管轄」ジュリスト1417号(2011年3月1日号)172頁。

住宅ローン金利比較表事件

被告である(財)住宅金融普及協会のホームページ中の「住宅ローン商品 金利情報」が、原告ウエブサイトの「図表」あるいは「編集著作物」、「データベースの著作物」の著作権侵害であると主張し、被告の当該ウエブページの閉鎖と706万4000円の損害賠償を求めたが、請求を棄却された事例である。

東京地裁平成22年12月21日判決(平成22年(ワ)第12322号)

原告は、平成20年4月から「銀行商品コム」という名称のウエブサイトに住宅ローン金利の比較表を掲載し、ここに図表部分がある(これを「本件図表」という)。図表の金利情報は、随時更新されている。
被告は、(財)住宅金融協会で、平成20年頃から、「住まいのポータルサイト」という名のウエブサイトを運営し、ここに「住宅ローン商品 金利情報」を掲載している。金利情報は随時更新されている。

原告は、

  1. 本件図表は、「図表の著作物」(著作権法10条1項6号)である。
  2. 本件図表は、「編集著作物」(同法12条1項)である。
  3. 本件図表は、「データベース」の著作物である、

と主張し、被告により、複製権及び公衆送信権が侵害されたとして、706万4000円(バナー広告料収入相当額の損害570万円、有料会員会員料金相当額4月分136万4000円)の損害賠償と当該ウエブページの閉鎖を求めた。

被告は、本件図表の著作物性を争い、また、被告は独自に被告図表を作成し、原告の本件図表に依拠していない、59箇所の相違点がある、本件図表は「一般的にありふれたもの」と主張した。東京地裁民事第46部大鷹一郎裁判長は、「本件図表が『図形の著作物』『編集著作物』又は『データベースの著作物』であることを認めることはできない。」として原告の請求を棄却した。

原告には、訴訟代理人がついていない。

公明党都議肖像写真事件

公明党都会議員のホームページから、肖像写真の電子データヲダウンロードして、ビラやブログ等に写真を掲載た行為に対して、著作権侵害および著作者人格権侵害が認められ、ビラの頒布禁止、廃棄、送信可能化等の差止と損害賠償78万5000円の損害賠償が認められた事例である。

東京地裁平成23年2月9日判決(平成21年(ワ)第25767号、反訴平成21年(ワ)第36771号)

原告Xは、職業カメラマンで、公明党都議の肖像写真(本件写真)を撮影した者である。
被告Yは、「A調査会」ないし「A1調査会」の名称で、政治活動を行っている者である。

被告Yは、公明党都議Bのウエブサイトから本件写真の電子データをダウンロードし、これを利用して、別紙写真(カラーからモノクロ、縦横の比率を変更)を作成し、

  1. ビラに掲載し、通行人に頒布し、
  2. 自ら管理するインターネット上のウエブサイトにアップロードし、自己のブログに掲載し、
  3. また別紙写真を街宣車の車体上部に設置された看板に掲載した。

この被告行為を知った原告は、著作権(複製権、譲渡権、公衆送信権)侵害、著作者人格権(同一性保持権)侵害であるとして、著作権法112条に基づき、

  1. 本件写真掲載のビラ頒布の差止と廃棄、
  2. 写真をインターネット上のウエブサイトで送信可能化することの差止め、

を求め、不法行為による損害賠償請求権に基づき、損害賠償金400万円(著作権(財産権)侵害200万円、著作者人格権侵害による精神的損害150万円、弁護士費用50万円)及び遅延金の支払を求めた。

東京地裁民事40部の岡本岳裁判長は、損害賠償金78万5000円(財産権侵害58万5000円、著作者人格権侵害10万円、弁護士費用10万円)とし、これ以外の原告の請求をすべて認容した。

裁判所は、写真の著作物性について、「職業写真家である原告の思想、感情が創作的に表現された著作権法上の著作物であることは明白である。」としている。被告は、訴訟代理人をつけず争い、「引用」であると主張したが認められなかった。
被告は、原告による刑事告訴及び本訴提起が不法行為であるとして不法行為による損害賠償請求権に基づき、刑事告訴による慰謝料100万円及び本訴提起による逸失利益500万円の合計600万円の内金100万円の支払いを求める反訴を提起したが、棄却された。

「新聞販売黒書」事件

フリージャーナリストがインターネット上において掲載した記事が、読売新聞社から名誉毀損で訴えられ、1審、2審は、名誉毀損による不法行為請求が棄却されたが、最高裁では、名誉毀損とされ、東京高裁も名誉毀損とし、ウエブサイトにより名誉毀損された被害者の損害額が、名誉毀損の内容、表現の方法と態様等により算定された事例である。

東京高裁平成24年8月29日判決(判時2189号63頁)
最高裁平成24年3月23日判決(判タ1369号121頁)
東京高裁平成22年4月27日判決(平成21年(ネ)第5834号)
さいたま地裁平成21年10月16日判決(平成20年(ワ)第613号)

 フリージャーナリストYは、「新聞販売黒書」と題するインターネット上のウエブサイトに「X1新聞西部本社は、○日、○県○市にある○○文化センター前のA所長に対して、明日○日から新聞の商取引を中止すると通告した。現地の関係者からの情報によると、○日の午後4時ごろ、西部本社のX2法務室長、X3担当の3名が事前の連絡なしに同店を訪問し、A所長に取引の中止を伝えたという。その上で明日の朝刊に折り込む予定になっていたチラシ類を持ち去った。これは窃盗に該当し、刑事告訴の対象になる」という記事を掲載した。Xらは、記事の第2文により名誉を毀損されたとして、Yに対し、不法行為にによる損害賠償請求をした。

1審のさいたま地裁は、名誉毀損による不法行為を否定した。

2審の東京高裁も、最高裁昭和31年7月20日(民集10巻8号1059頁)を引用し、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すべきであるとし、第1文は、事実の摘示で、第2文は、被告の法的見解の表明で、直ちに原告社員らが「窃盗」に該当する行為を行ったものと理解する可能性は乏しいとし、本件記載部分によって原告等の社会的評価が低下したということを否定して、原告等の請求を棄却した。

最高裁第二小法廷(古田佑紀裁判長、竹内行夫、須藤正彦、千葉勝美)は、「インターネット上のウエブサイトに掲載された記事が、それ自体として一般の閲覧者がおよそ信用性を有しないと認識し、評価するようなものではなく、会社の業務の一環として取引先を訪問した従業員が取引先の所持していた物をその了解なく持ち去った旨の事実を摘示するものと理解されるのが通常であるなど判示の事情の下では、その記事を掲載した行為は、上記の会社及び従業員の名誉を毀損するものとして不法行為を構成する。」(要旨)とし、東京高裁へ差し戻した。

東京高裁平成24年8月29日判決は、1,本件記事の内容は、X2らがチラシ類を持ち去った行為が窃盗に該当し、刑事告訴の対象になる旨の虚偽の事実を摘示し、X2らの名誉を毀損するもので、Xらの損害につき慰藉料の請求を認めるのが相当であるとした。
また、X2らの行為がX1会社が窃盗を行わせるような会社と誤信されるから、X1会社も無形損害として賠償請求ができるとした。損害額について、名誉毀損の内容、表現の方法と態様、流布された範囲と態様、流布されるに至った経緯、加害者の属性、被害者の属性、被害者の被った不利益の内容・程度、名誉回復の可能性などの事情を考慮して算定することが相当であるとした。訴権の濫用に当たるとみるべき事情は見い出せないとした。
加藤新太郎裁判長は、控訴人会社X1への賠償額40万円、控訴人X2、X3、X4に対し、それぞれ20万円、弁護士費用X1につき、4万円、控訴人X2らにつきそれぞれ、2万円、合計110万円の支払をYに命じた。

ウエブサイトの記事を1審、2審が名誉毀損にならない、と判決したのに、3審の最高裁が名誉毀損になると判断し、東京高裁へ差し戻した、というのが注意を引く。

「大道芸研究会」事件

大道芸研究会の元会員のXは、ウエブサイトの画面およびソースコードを作成し、管理し、大道芸研究会の情報を発信したが、ウエブサイト画面とそのソースコードは、Xの著作物であるとし、会員の被告Yが作成し、自己の管理するウエブサイトに掲載した行為は、Xの著作物の同一性保持権侵害あるいは一般不法行為に当たると主張したが、Xの請求が棄却された事例である。

東京地裁平成24年12月27日判決(平成22年(ワ)第47569号)

原告Xは、昭和60年に大道芸研究会の会員になり、平成22年3月末、退会した。
被告Yは、大道芸研究会会員である。

Xは、会員であった平成12年頃、「大道芸研究会」という本件ウエブサイトを開設し、「画面」及びその「ソースコード」(HTML)を作成し、Xは、X個人の著作した著作物としていた。
被告Yは、平成22年2月1日、本件ウエブサイトのソ-スコードを取り込み、新たな情報を追加するなどして、「大道芸研究会」と題する被告ウエブサイトを開設し、管理した。

原告Xは、被告Yが、別紙被告画面目録1ないし7記載の各画面(被告画面)を作成し、自己の管理するウエブサイトに掲載した行為は、

  1. Xの有する同一性保持権侵害行為である、
  2. 仮にそうでないとしても、被告Yの一連の行為は、原告の法的保護に値する利益を侵害する一般不法行為である

とし、Yに対し、損害賠償160万円を求めて訴えた。

東京地裁民事第46部大鷹一郎裁判長は、次のように判断し、原告Xの請求をいずれも棄却した。

  1. 原告Xは、各画面は、画面構成(デザイン・レイアウト)において、Xの思想感情を創作的に表現した著作物と主張したが、画面構成のうち、創作性があると挙げている点は、いずれもありふれた表現である、Xの各画面には原告主張の表現上の創作性が認められない、とし、各画面が全体として著作物に該当するとの原告の主張は理由がないとした。
  2. Xのソースコードの著作物性について、「本件ソースコードは、原告がフロントページエクスプレスを使用して本件画面っを作成するに伴ってそのソフトウエアの機能により自動的に生成されたHTMLソースコードであって、原告自らが本件ソースコードそれ自体を記述したものではないことからすると、本件ソースコードの具体的記述に原告の思想又は感情が創作的に表現され、その個性が現れているものとは認められない。」とした。
  3. 一般不法行為に当たるか、について、北朝鮮映画事件(最高裁平成23年12月8日判決)を引用し、著作権法の著作物に該当しないものの利用行為は、同法が規律の対象とする著作物の独占的な利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り不法行為を構成しない、とし、Xの請求を否定した。
大道芸研究会の内紛がなければ、原告は会に留まっていたであろう。原告は、研究会のウエブサイトに愛着があった。

ニコニコ動画事件

ニコニコプレミアム会員Xが、自分が大阪市内のマクドナルド店に入店する様子や警察官と対応する様子を撮影し、動画にし、動画共有サイト「ニコニコ動画」にアップロードし、サイトへアクセスする者が視聴できるにしたところ、「ロケットニュース24」というウエブサイトが掲載し、記事を書込み、会員を誹謗中傷する書込みをし、この動画を視聴できるようにし、この記事の末尾に「参照元 ニコニコ動画」とした。Xは、ウエブサイト運営者を訴えたが、Xが敗訴した事件である。

大阪地裁平成25年6月20日判決(平成23年(ワ)第15245号、判時2218号112頁)

原告Xは、平成23年6月当時、株式会社ニワンゴが提供するインターネット上の動画共有などのサービスのニコニコプレミアム会員として、「ニコニコ生放送」による動画のライブストリーミング配信等を行っていた。
 被告Yは、情報提供サービスなどを目的とし、「ロケットニュース24」というウエブサイトを運営している株式会社ソシオコーポレ-ションである。

原告Xは、Xが著作者である動画を、被告Yが被告運営の「ロケットニュース24」に無断で掲載し、これに原告を誹謗中傷する記事を掲載し、コメント欄に読者をして原告を誹謗中傷するコメント欄の書込をさせ、これを削除しなかったことがXの名誉を毀損するとともに、Xの著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権、氏名表示権)を侵害するものであるとして、被告に対し、名誉権に基づき、本件ウエブサイトに掲載された本件記事及び本件コメント欄記載の削除を求めると共に、著作権及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく名誉回復措置として別紙1記載の謝罪文を、名誉毀損の不法行為に基づく名誉回復措置として別紙2記載の謝罪文を本件ウエブサイトに掲載するよう求めた。
 併せて、主位的に著作権及び著作者人格権の不法行為に基づく損害賠償の一部として30万円と遅延損害金並びに名誉毀損の不法行為に基づく損害賠償の一部として30万円及び遅延損害金を請求し、予備的に被告の上記行為は、原告の肖像権を侵害するとし、被告に対し、肖像権侵害の不法行為に基づく損害賠償の一部として10万円及び遅延損害金荒美に名誉毀損の不法行為に基づく損害賠償の1部として50万円及び遅延損害金を請求した。

大阪地裁第21民事部谷有恒裁判長は、次のように判断し、原告の請求を棄却した。

  1. 本件動画は映画の著作物で、著作者は原告である。
  2. 被告は、本件動画へのリンクを貼ったにとどまり、被告Yが本件動画を自動公衆送信による不法行為をしたり、送信可能化による不法行為も認められない。公衆送信権侵害の幇助による不法行為は成立しない。
  3. 著作者人格権(公表権、氏名表示権)侵害について。
    原告Xは、被告Yによる本件動画のリンクに先立ち、生放送をライブストリーミング配信しており、公表権侵害は成立しない。本件記事自体に原告Xの実名、変名の表示はなく、氏名表示権侵害の前提を欠き、ウエブサイト上の表示が原告の氏名表示権侵害になると認められない。
  4. 本件動画及び本件記事の名誉毀損該当性、違法性阻却事由の有無について。
    本件記事及び本件動画の本件ウエブサイトへの掲載が原告の名誉を毀損するとの主張は、違法性阻却事由があり、また、記事中の「非常識な行動」は、人身攻撃に及んでなく意見や論評の域を逸脱してない。被告が、本件ウエブサイトに本件記事を掲載し、併せて本件動画へのリンクを貼ったことに違法性はない。
  5. 本件コメント欄記載の削除義務の有無について。
    被告は、平成23年6月27日に原告から抗議を受け直ちに本件動画へのリンクを削除し、原告の社会的評価が低下することの防止するための対応を適時とっている。被告は、本件コメント欄記載を削除すべき義務を負う状況になく、削除義務を負うものでない。
  6. 肖像権侵害の有無について。
    被告が本件ウエブサイト上で、本件動画へリンクを貼ったことが原告Xの肖像権を違法に侵害したとはいえない、第三者による肖像権侵害につき、故意又は過失があったともいえず、不法行為が成立するとは認められない。
大阪地裁判決を支持する。

カード情報流出事件

ウエブサイトによる商品の受注システムを利用し、インテリア商材を販売している会社が、顧客のクレジットカード情報が流出したとして、システムの設計をし、保守等の委託契約をしたネットショップ運営業者へ、債務不履行であるとして、約1億円の損害賠償を求めたが、2262万3697円の損害賠償が命ぜられた事例である。

東京地裁平成26年1月23日判決(平成23年(ワ)第32060号、判時2221号71頁)

原告は、インテリア商材の卸小売、通信販売等を行う株式会社である。
被告は、情報処理システムの規格、保守受託及び顧客へのサポート業務、ホームページの制作、業務システムの開発、ネットショップの運営等を行う株式会社である。

原告と被告の間で、ウエブサイトにおける商品の受注システムの設計、製作、保守等の基本契約、個別契約を結び、システムの完成後、平成21年4月、原告会社は、システムの稼働を開始した。
平成23年4月、顧客のクレジットカード情報の不正使用やサーバーへの外部からの不正アクセスが確認され、個人情報の流出が疑われる事態になった。
原告は、原因調査、顧客対応等を余儀なくされたため、受託業者である被告に対して、債務不履行責任を問い、1億0913万5528円の損害賠償を求めた。

東京地裁民事44部脇博人裁判長は、両者間に、当時の技術水準に沿ったセキュリテイ対策を施したプログラムを提供することが黙示的に合意されていた、被告は、顧客の個人情報を本件データベースに保存する設定になっていたから個人情報の漏洩を防ぐため必要なセキュリテイ対策を施したプログラムを提供すべき債務を負っていた、被告は、SQL(Structured Query Language)(データベースの管理プログラムを制御するための言語) インジェクション対策としてのバインド機構の使用やエスケープ処理を施したプログラムを提供すべき債務を履行しなかった、として、被告の債務不履行を肯定した。原告のその他主張の債務不履行は否定した。原告の過失を3割とし、損害賠償として3231万9568円を認め、Xの過失相殺をして、2262万3697円及び平成23年10月15日から支払済みまでの年6分の金員の支払を命じた。

こういう事件は、今後、増加するであろう。

「モーゲージプランナー」団体ドメイン事件

モーゲージプランナーの養成、認証を行う原告法人(日本モーゲージプランナーズ協会)が、被告日本資産証券化センター及び被告日本住宅ローン診断士協会が使用するドメイン名の使用差止等を求めたが、原告の請求がすべて棄却された事例である。

東京地裁平成26年5月23日判決(平成24年(ワ)第19272号)

原告X(特定非営利活動法人日本モーゲージプランナーズ協会)は、平成20年8月21日に設立されたモーゲージプランナーの養成、認証等を行う特定非営利活動法人である。
被告Y1(特定非営利活動法人日本資産証券化センター)は、平成15年12月19日に設立された住宅ローン、不動産、知的財産等資産の証券化に関する調査研究、啓蒙普及活動を行う特定非営利活動法人である。
被告Y2(一般社団法人日本住宅ローン診断士協会)は、平成24年5月18日に設立され、住宅ローン相談に際し、斡旋業務などを行う住宅ローン診断士やモーゲージプランナーを要請・認証・登録すること等を目的等に掲げる一般社団法人である。

原告、被告がいうモーゲージプランナー(Mortgage Planner)とは、アメリカ合衆国のモーゲージブローカー(Mortgage Brokers)(住宅ローン利用の消費者保護のため有益な助言、提案をする)を日本へ導入しようとする点で一致しているが、原告は、モーゲージプランナーの行う業務に住宅ローンの斡旋業務を含まず、被告らは斡旋業務を含むとしている。
Y1は、平成18年12月8日、(社)日本ネットワークインフォメーションセンターから「本件ドメイン名」を取得した。
平成20年8月21日、Xが設立された。Xは、Y1から本件ドメイン名の貸与を受け、「www.(略)」を広告用のウエブサイトのアドレスに用いるなどして使用した。
平成24年5月18日、Y2が設立された。
平成24年5月28日、Y1は、Xに対し、本件ドメイン名の返還を要求した。
Xは、平成24年5月31日、Xは、本件ドメイン名を使用できなくなった。
Y2は、平成24年6月3日以降、本件ドメイン名を使用し、「http://www.略」のアドレスにY2広告用ホームページを掲載、顧客問合せ用のメールアドレスとして、「info@略」を使用している。

Xは、

  1. 被告らは、「略」のドメイン名を使用してはならない。
  2. Y2は、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター平成18年12月8日受付の登録ドメイン名「略」の抹消登録手続きをせよ。
  3. Y2は、「住宅ローン診断士補(MPフェロー)検定試験」を実施してはならずかつ、その講座を開講する告知をしてはならない。

等を請求する訴訟を提起した。

東京地裁民事第40部東海林保裁判長は、原告Xの請求は、いずれも理由がないとして、原告の請求をいずれも棄却した。

この要約では省略したが、Xの現在の代表者理事B氏とY1の監事Aとの意見の相違、対立がこの事件の根底にある。

小動物用サプリメント事件

原告が著作権や独占的利用権を有する著作物を、被告らが無断でウエブサイトに掲載したとして、ウエブサイトへの表示等の差止と削除、損害賠償を求めたが、被告らに対し、契約期間中、自由に使用することを許諾していたとして、原告の請求が棄却された事例である。

東京地裁平成26年8月28日判決(平成25年(ワ)第2695号)

 原告X(プラセンタ製薬(株))は、小動物用のサプリメントを製造する会社である。
被告Y1は、Xとの間に、平成23年10月18日、「小動物用プラセンタサプリメントの販売協定書」を結び、Y1の代表取締役であるY2は、Xに対し、Y1が本件契約に基づき負担する一切の債務について連帯して保証する旨、約束した。

Xは、Y1へ、「動物病院でのプラセンタ療法」というパンフレット、「プラセンタとは…?」と題するポスターのデータ、「人生におけるプラセンタのはたらき」と題するポスターのデータなどを無償で交付した。
Y1は、平成23年12月初旬頃から、Y1のホームページやY1が管理するウエブサイトに、Xから提供された記載内容に依拠し、これとほぼ同内容の記載を掲載した。

Xは、平成25年、Yらに次のことを請求する訴訟を提起した。

  1. Y1Y2は、連帯して、300万円を支払え。
  2. 被告らは、別紙目録記載の「被告著述」の内容をインターネットのウエブサイトに表示し、又は、紙媒体として印刷、頒布してはならない。
  3. 被告らは、別紙目録記載の「被告著述」欄記載の内容をインターネットのウエブサイトから削除し、これを記載した紙媒体を廃棄せよ。

東京地裁民事47部高野輝久裁判長は、次のように判断して、原告Xの請求を棄却した。

  • 「原告と被告会社の間で」
  • 「被告会社が本件各物件を複製したりホームページに掲載したりするなどして自由に利用することを当然の前提にしている」
  • 「原告は、本件契約を締結するに当たり、被告会社に対し、本件契約期間中、本件各物件等を複製したりホームページに掲載したりなどして自由に利用することを許諾していたものと認められる。」
  • 「本件各物件が著作物であり、これについて原告が著作権又は独占的利用権を有しているとしても」
  • 「被告らが本件各物件と同内容のものを被告サイトに掲載して公衆送信し、これらを複製して被告チラシ1及び2,被告ポスター及び被告パンフレット1及び2等に利用することが原告の著作権等(公衆送信権、複製権又は独占利用権)を侵害すると認められない。」
  • 「原告の請求は、その余につき判断するまでもなく、全て理由がない。」
プラセンタは、胎盤の意で、美容や健康維持を目的に胎盤に含まれる成分の一部を皮下や筋肉に注射することをプラセンタ療法というようである。
原告と被告の間で、どういう「契約」をしたか、原告は、了解していなかった。
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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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