大家重夫の世情考察

色切り替えパッチ事件

氏名不詳者がアップロードしたファイルに含まれるプログラムとされる制作物は、原告創作に係るプログラムとされる制作物(パッチ)の複製又は翻案であるとし、プロバイダ責任制限法により、特定電気通信役務提供者へ発信者情報の開示を求め、開示が認められた事例である。

東京地裁平成26年11月26日判決(平成26年(ワ)第7280号)

パッチとは、オペレーテイングシステムやアプリケーションプログラムの不具合などを修正するためのファイルをいう。
原告は、本件パッチを制作した者である。
被告(ビッグロープ株式会社)は、インターネット等のネットワークを利用した情報通信サービス、情報提供サービスその他情報サービスの提供を業とする株式会社で、プロバイダ責任制限法の「特定電気通信役務者」である。

別紙ウエブページのURLにより表示されるウエブページに、氏名不詳の者がアップロードしたプログラムとされる制作物があり、これは、原告の制作物(本件パッチ)の複製物ないし翻案物であり、この発信者の行為は、原告の複製権又は翻案権及び公衆送信権の侵害であるから、発信者に対し、損害賠償請求権を行使するため、原告は、被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づいて、発信者情報の開示を求めて訴えた。
原告は、本件パッチは、平成7年(株)バンダイ発売の家庭用ゲーム機「スーパーファミコン」用のゲーム「SDガンダム GNETXT」に関して原告がそのバグ等を改善するために作成したプログラムであり、本件色替えパッチに創作性がある、プログラムの著作物と主張した。
被告は、原告のは「バンダイプログラムを改変するためのデータ列」で、「原告の困難かつ多大な努力と、それらの創意工夫は、原告の個性による創作・創造というよりは、専らバンダイプログラム自体の原状に規定・拘束された、ある種の必然的な制作作業というべきもの」で、「著作物における、制作者の個性の表現ともいわれる創作性とはおよそ異なる」と主張した。

東京地裁民事29部嶋末和秀裁判長は、次のように判断した。

  1. 本件パッチは、著作権法2条1項10号の2の「プログラム」に該当する。
  2. 本件パッチの中、少なくとも本件色替えパッチは、「プログラムの著作物」である。
  3. 発信者プログラムのうち、少なくとも本件色替えパッチに対応する部分は、本件パッチの複製物である。
  4. 本件発信者の行為は、原告の複製権及び公衆送信権を侵害するものである。
  5. 原告は、本件発信者に対し、損害賠償請求権の行使のため本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。

[判決主文]

  1. 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
  2. 訴訟費用は被告の負担とする。
このあと、「色替えパッチのプログラム著作物」について、著作権侵害あるいは翻案権侵害の訴訟が行われるのであろうか。

ページトップへ

中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出のイメージ

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出 【2,800円+税】

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社のイメージ

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社 【4,500円+税】

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例のイメージ

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例 【2,800円+税】