大家重夫の世情考察

クリニック情報事件

原告である医師は、被告が運営するウエブページ掲載のクリニックについての情報が誤っており、原告の人格権および業務遂行権(財産権)を侵害しているとして、不正競争防止法2条1項14号(不実記載)であるとして、ウエブページの表示の抹消、損害賠償200万円を求めたが、原告の請求がすべて棄却された事例である。

東京地裁平成25年3月6日判決(平成22年(ワ)第13704号)

原告は、Aクリニックという名称の診療所を開設する医師である。
被告((株)チューン)は、ホームページの作成等を主な業務とする株式会社で、(株)メデイラインから委託を受けて、インターネット上のアドレスにおいて、「Aクリニック」の名前を標榜するウエブサイトを開設している。

平成17年12月、本件クリニックが管理者原告で開設された。
メデイラインが本件クリニックの開設に当たり、経費等を負担、原告が医療知識等を提供する契約が締結された。
被告は、原告の了解を得たメデイアラインから、本件クリニックのホームページ制作及び開設の委託を受けて、これを運営している。
平成18年9月27日、原告とメデイアライン、被告らと協力関係が破綻し、原告は、メデイアラインの関与なしに、本件クリニックを運営した。
被告代表者は、平成19年9月11日設立の医療法人社団スペクトラムの理事に就任した。この団体は、Aクリニックから1キロ離れた場所に、「Bクリニック」を開設した。

原告は、

  1. 被告に対し、本件ウエブサイトの運営が原告に対する不法行為である、
  2. 被告による本件ウエブサイトの運営が不正競争防止法2条1項14号の「不正競争」にあたる

と主張した。

東京地裁民事40部東海林裁判長は、本件クリニックの事業主体は、原告ではなく、訴外の「組合契約または組合類似の契約」に基づく「組合」であるとして、被告が、この組合から委託を受けて、クリニックのウエブサイトを運営していることは、原告の権利を侵害するものではない、不正競争についても、原告被告間に競業関係はない、とし、原告の主張をしりぞけ、原告の請求をすべて棄却した。

原告は、本件クリニックを運営しているつもりだったが、判決は、訴外の「組合」であったと、認定した。原告は、まったく、自力で運営していると思っていたのだろうか。経費を負担していたメデイアラインが脱退した後、「組合」が負担したようだが、原告は知らなかったのだろうか。

ページトップへ

中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出のイメージ

シリア難民とインドシナ難民 - インドシナ難民受入事業の思い出 【2,800円+税】

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社のイメージ

ウルトラマンと著作権 - 海外利用権・円谷プロ・ソムポート・ユーエム社 【4,500円+税】

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例のイメージ

インターネット判例要約集 - 附・日本著作権法の概要と最近の判例 【2,800円+税】