大家重夫の世情考察

中国政治事情

はじめに

第3部 汚職、権力闘争で失脚した人々 – 後編 –

2014年 2月、金道銘・山西省人大常務委副主任(副部級)摘発される。

      2月、翼 文林・海南省副省長(副部級)、周永康の元秘書。元総理李鵬の長女への利益供与が浮上。
2014年7月29日 周永康(1942ー)(胡錦濤政権で党内第9位の中央政治局常務委員(注32)で、江沢民の妻の姉妹の娘賈曉燁と結婚(注33))を拘束。
12月5日、共産党中央は、周永康に重大な規律違反があったとして、党籍を剥奪、身柄を司法機関に送ることことにした。湯燦との関係については、福島香織前掲書参照。(注34) 周永康とその一族の摘発された汚職額は、145億ドル(約1兆4500円)といわれる。(注35

2014年 徐才厚(前、軍事委員会副主任)(注36)も失脚した。
徐才厚は、1943年生まれ、奉天省出身。 徐才厚は、第16集団軍政治部主任、1992年「解放軍報」社社長兼任。1997年、党中央委員会委員。
2014年6月末、党籍剥奪。徐は、人民解放軍上將、前中国共産党軍事委員会(中央軍委)副主席(注37)。徐才厚と湯燦(タンツアン)(中国共産党高官の公共情婦、師団級軍属歌手)との関係について福島香織前掲書参照。(注38)。
徐才厚は、2015年3月15日膀胱癌のため「病亡」した。71歳。

2014年6月 全国政治協商会議副主席の蘇栄氏が、解任された。(2015年2月参照)。
人事濫用によって金儲けの疑い。 令 政策・山西省政治協商会議副主席(副部級)、取調を受ける。令政策は、令計画の実兄。

     8月、任潤厚・山西省副省長(副部級)、摘発される。

     8月、何家成・国家行政学院副院長(正部級)摘発される。

2014年9月 国務院国有資産監督管理委員会(国資委)主任(大臣級)の蒋潔敏が解任、逮捕される(中国石油天然ガス集団から周永康によって引き上げられた)。蒋潔敏は、1955年生まれ、山東省出身。中国石油天然気集団(CNPC)会長から2013年3月、国資委主任に任命された。

2014年9月 習近平指導部発足から22カ月。自殺者、全体で1252人。行方不明者、6448人。海外逃亡者、8341人、総計 1万6041人(相馬勝「習近平の『反日』作戦」(小学館・2015年)90頁。)

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【中国政治事情 記事一覧】

○中国研究の必要性

本書を刊行するに至った動機をのべる。
2010年4月、久留米大学法学部特任教授を辞任し、時間の余裕を得て、本を乱読した。
現代中国の政治事情を知ることが必要と知った。

〇ウルトラマンの話

ウルトラマンやゴジラというキャラクターを創造した円谷英二(1901ー1970)は株式会社円谷プロダクションを作った。円谷英二の長男円谷一(1931-1973)の次男円谷英明(1959-)は、6代目社長である。
この人が社長を辞めた後、2008年、円谷プロの株式は、パチンコ機器メーカーフイールズ株式会社が51%、玩具メーカーバンダイが49%をもち、もう円谷一族は、円谷プロから追放され、不在の状況になった。
6代目社長円谷英明氏が、5年後の2013年、出版したのが「ウルトラマンが泣いているー円谷プロの失敗」(講談社新書)である。
私は、円谷プロの株式が、株式会社テイー・ワイ・オー(TYO)に買い占められた箇所や、3代目円谷皐(のぼる、1935-1995)が、1976年、タイ人ソンポートに9800万円(700万バーツ)と引き替えに、ウルトラマン初期作品の「日本以外の国・地域の独占的利用権を譲渡する契約」を結んだ話を興味深く読んだ。
もうひとつ、「ウルトラマンが泣いている」157頁の、英明氏が、中国で苦労された体験にも引っかかった。
「2003年、『ウルトラマンテイガ』の放送番組としてのライセンスを取得したのですが、やはりバイオレンス系のリストに入れられたため、そのままでは放送にかけることはできません。そこで、中国共産党の有力政治家にはたらきかけ、政府の担当部署にロビー活動をしてリストから削除してもらいました。…」

〇ヤオハンの話

 青木直人「中国に喰い潰される日本」(PHP研究所・2007年)と言う本を読んだ。
これによれば、ヤオハンは、当時の李鵬首相に、ヤオハンインターナショナル取締役であった橋本恕元中国大使との「古い友人」関係から、便宜を図って貰ったが、ヤオハンは、地元感情を背景にした上海税関当局からは、様々な嫌がらせをうけ、相当な額の賄賂が要求された。
青木は言う。「これこそが日本企業を襲う最大のリスク、中国のなかでも役人のタカリ体質」「人脈を築く上で賄賂や寄付は避けられない。中国ビジネスで『勝ち組』と言われる日本企業は何らかの形で中国当局による『タカリ』を受けている」(106頁)。
「郷に入れば郷に従う」というがある。中国には、日本人ビジネスマンが約10万人はいると思うが、「郷に入れば郷に従う」といいきかせ、働いていると思う。
 どうやら、中国では、「汚職は文化」なのである。

〇日本の不正競争防止法18条

日本の不正競争防止法第18条は(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)を規定している。 1項「何人も、外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせ若しくはさせないこと、又はその地位を利用して他の外国公務員等にその職務に関する行為をさせ若しくはさせないようにあっせんをさせることを目的として、金銭その他の利益を供与し、又はその申込み若しくは約束をしてはならない。」
第2項は、「外国公務員等」の範囲を述べている。
 この18条1項を素直に読むと、例えば、中国の中央政府あるいは地方の省の役人に、何事か陳情し、その際か、別の機会に金銭や物を贈与すれば、日本に帰国した折、公訴が提起され、「5年以下の懲役又は500万円以下の罰金又は併科」される。

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中国へ進出の日本の会社の法務担当者は、この条文を知っており、知っていて、どのような指導をしているのだろうか。
この条文は、「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」(平成11年条約第2号)を実施するため、平成10年改正(平成10年法律第111号)により新設された。
日本には、夏、御世話になった関係者に「中元」を、年末、「歳暮」を贈る「風習」がある。西洋諸国には、そういう習慣はない。
中国で、ベトナムで、フイリピンで、インドネシアで、「中元」「歳暮」の習慣はあるかどうか知らないが、こういう「中元」「歳暮」の範囲であれば、条約違反、不正競争防止法18条違反にならない、といった法解釈をし、周知させるべきである。
青木直人「人脈で読む中国の真実」(実業之日本社・2002年)、同「田中角栄と毛沢東」(講談社・2002年)など、ODAや中国への日本の援助を調査されている青木直人の存在は、貴重である。
富坂聰「中国官僚覆面座談会ーお人好し日本人フォーエバー」(小学館・2008年)を読むと、「外交部は灰色収入(非正規の収入)を得る手段がない」、「おいしい官庁は税務、公安、人事」、「課長補佐だと月給はざっと4000元(約6万円)」とある。日本語の上手な駐日大使だった王毅外相は、苦虫をかみつぶしたような表情をしているが、理由なしとしないのである。
近藤大介「対中戦略ー無益な戦争を回避するために」(講談社・2013年)187頁にこういう一節がある。「地方都市の市役所の文化課長に就任した主人公が、前任者からの業務引き継ぎの際に、そっと耳打ちされるシーンがあった。『1回あたりお前の年収にあたる3万元までは黙って受け取れ。3万元から5万元までは自分で考えて判断しろ。5万元以上には手を出すな』」。
石平、宮崎正弘も中国に情報源をもつようで、その文章には、いつも新しい発見がある。
汚職から少しそれるが、この分野では、福島香織、有本香、河添恵子、そして遠藤誉教授など女性の活躍がめざましい。
福島香織「権力闘争がわかれば中国がわかるー反日も反腐敗も権力者の策謀」(さくら舎・2015年)には、習近平の「習一族はもともと強い女を好む家系」、姉の斉橋橋は、「北京の大不動産企業社長の鄧家貴と結婚しているが、むしろ習一族の家長というステイタスで知られている」とあり、パナマ文書に出てきたのだった。習近平の弟、習遠平に近づき、遂に習遠平夫人に納まった張瀾瀾の話は、小説のように面白い。

〇豊富な中国文献

 日本の書店には、現代中国を論じたり、状況を説明する書籍、雑誌が多く、少し待てば、新古書店で、廉価で入手できる。本書は、市販されている中国研究者たちの文章を拾い読みし、事実、意見などを「編集」したものである。私は、中国政治の門外漢で、読むべき書籍、論文を見落としているかもしれない。何冊か読んで見ると、初めて知る事実、怪しいが本当かも知れないという事実が多い。

〇参照した文献の著作者たち

 中国研究者は多い。思いつくまま挙げる。宮崎正弘(評論家)、石平(四川省出身)、遠藤誉(帰国子女・東京福祉大学)、黄文雄(台湾出身)、富坂聰(拓殖大学)、福島香織(産経OB)、有本香、河添恵子、橘玲(作家)、青樹明子(作家)、副島隆彦(評論家)、中澤克二(日経)、近藤大介(講談社)、矢板明夫(産経、残留孤児二世)、加藤隆則(読売OB)、相馬勝(産経OB)、峯村健司(朝日)、加藤嘉一(国際コラムニスト)、青木直人(ジャーナリスト)、丹羽宇一郎(伊藤忠・元・駐中国大使)髙口康太(ジャーナリスト)長谷川慶太郎(評論家)、三橋貴明(評論家)、津上俊哉(通産省OB)、日下公人(評論家)、朱建栄(東洋学園大学)、柯隆(富士通総研)、楊中美(大学講師)、楊海英(静岡大学)、陳破空、沈才彬(三井物産)、加藤徹(明大)、興梠一郎(神田外大)、相沢幸悦(埼玉学園大学)、小林史憲(テレビ東京)、宮脇淳子(大学講師)、岡田英弘(東京外語大)、故鳥居民、故清水美和、故中嶋嶺雄…

 本書は、(株)インタークロス社長桃井正典氏との雑談の中から生まれ、桃井社長の御世話になって出来上がった書物である。桃井正典氏およびインタークロスの吉澤忠氏ほか多くの方々に感謝する。

2016年5月31日
株式会社インタークロス IT企業法務研究所 客員研究員 大家 重夫

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中国政官データ[2016年5月版]

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)のご紹介

著者:大家 重夫(Shigeo Ohie)の写真

2013年 フランス ランスにて

プロフィール

1934(昭和9)年生まれ
久留米大学名誉教授・国際日本語普及
協会理事
LAIT(IT知財法務研究所)
客員研究員

京都大学法学部卒
1960年文部省(現・文部科学省)
1970年文化庁著作権課長補佐
1988年私立久留米大学法学部教授。
1995年久留米大学法学部長
2005年久留米大学特任教授・名誉教授
2011年日本ユニ著作権センターより
「著作権貢献賞」を受賞

主な著書に

  • 肖像権(1979年・新日本法規)
  • 改訂版ニッポン著作権物語(1999年・青山社)
  • タイプフェイスの法的保護と著作権(2000年・成文堂)
  • 唱歌『コヒノボリ』『チューリップ』と著作権(2004年・全音楽譜出版社)
  • 肖像権 改訂新版(2011年・太田出版)
  • 美術作家の著作権 その現状と展望
    (福王子一彦と共著・2014年・里文出版)
  • ウルトラマンと著作権
    (上松盛明氏と共編・2014年・青山社)
  • インターネット判例要約集(2015年・青山社)

などがある。

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