被告が、インターネットの掲示板への書き込みをした者の著作権を侵害したことは、認められたが2審で賠償額が減額された事例である。
Y1(株式会社森拓之事務所)は、情報産業に関連する事業を営む会社で、「ホテル・ジャンキーズ」というホームページを設置、管理し、掲示板を設置し、書込みをさせていた。
Y2は、ホテルに関する執筆活動をしているジャーナリストで、Y1の取締役である。
Y3(株式会社光文社)は、図書、雑誌の出版を業とする株式会社で、Y1,Y2が執筆した書籍を出版、販売、頒布し、その宣伝広告をしている。
原告X1から原告X11までの11人は、Y1のホームページに文章を書き込んだ。被告らは、原告の文章を複製したとし、この行為は、著作権侵害であるとして、書籍の出版の中止を求め、また被告らに、X1らは、13万円から40万円までの損害賠償請求をした。
[東京地裁]
民事29部飯村敏明裁判長は、原告の書込みに著作物性を認め、被告らが複製権侵害をしたとした。被告Y3の過失を認定し、次の判決を下した。
[東京高裁]
Yらは、控訴し、インターネットの特質を主張し、インターネットの書込みの著作物性の基準は、厳密な基準にすべし、と主張した。
民事第6部山下和明裁判長は、「創作性の高いものについては、少々表現に改変を加えても複製行為と評価すべき場合がある」「創作性の低いものについては、複製行為と評価できるのはいわゆるデッドコピーについてのみ」で、「少し表現が変えられれば、もはや複製行為とは評価できない場合がある」というように、「著作物性の判断に当たっては、これを広く認めた上で、表現者以外の者の行為に対する評価において、表現内容に応じて著作権法上の保護を受け得るか否かを判断する手法をとることが、できうる限り恣意を廃し、判断の客観性を保つという観点から妥当」とする。
原判決では、各記述について、一部分が省略された形で転載されているため、転載された部分毎に分けてそれぞれについて著作物性の判断をし、一部分についてその著作物性を否定したが、「著作物性の有無の判断は、まず、これらそれぞれの記述全体について行われるべきである」とし、全体として一個の転載行為がなされた、「原告各記述部分は、それ自体としてみても、原判決が著作物性を否定した部分を含め、いずれも、程度の差はあれ記述者の個性が発揮されていると評価することができるから、著作物性を認めるのが相当である。この点において、当裁判所は、原判決と判断を異にする。」とし、判決した
[判決主文]
[参考文献]
光野文子・時の法令1678号48頁。
上野達弘・別冊ジュリスト179号「メイデイア判例百選」238頁(2005年)。